鰯雲 (秋の季語:天文)

     いわし雲 鱗雲 鯖雲

鰯雲
32秋の季語・天文-鰯雲.jpg
        デジカメ写真


● 季語の意味・季語の解説

 秋の空には、小さな無数の雲が疎ら(まばら)に、そして薄く広がっていることが多い。

 これを鰯雲(いわし雲)、鱗雲(うろこ雲)、鯖雲(さば雲)などという。

 その様子が、鰯の群れにも、魚のうろこのようにも、鯖の体の斑紋にも見えるため、そんな風に呼ばれる。

 気象用語では巻積雲と呼ぶ。


● 季語随想

 気持ちのすぐれないときは、河原の土手に寝転んで、鰯雲でも眺めよう。

 遠い大陸に暮らすある遊牧民は、旅の途で気の合う人と出会ったら、しばらくテントを並べて一緒に暮らすという。

 そして、しばらく一緒に暮らすうちに、なんとなくストレスがたまってきたら、衝突が起きる前に、どちらともなく、別の場所へと旅立っていくという。

 日本やアメリカで立派とされる生き方が、すべての文化で立派であるとは限らない。

 たまには、世間様のことなど気にも止めず、のんびり鰯雲でも眺めよう。

  答案の紙飛行機や鰯雲 (凡茶)


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 秋の空一面に広がる鰯雲は、見上げていると広々とした気分になります。

  鰯雲個々一切事地上にあり (中村草田男)

 広大な空間を目一杯使った俳句を作ってみましょう。

  やまびこをつれていく尾根いわし雲 (飯田蛇笏)

  飛行雲時経て鱗雲と化す (山口誓子)

  半天の紺半天のいわし雲 (相馬遷子)

 地上の小さな存在と対比させることで、鰯雲の広がる天空の大きさを強調するのも良いと思います。

  椅子にゐて王者のこころ鰯雲 (石原舟月)

  竹とんぼ競ふ双子や鱗雲 (凡茶)

 逆に、鰯雲と対比させることによって、人間という存在の小ささを強調するのも面白いと思います。

  鰯雲人に告ぐべきことならず (加藤楸邨)

  いわし雲人はどこでも土平す (西東三鬼)
      平す=「ならす」と読む。

  鰯雲胸そらしてもうすき身ぞ (木村蕪城)

  使ふあてなきマッチの火鰯雲 (凡茶)

 鰯雲は背後の空の青さがうかがえるほど薄い雲であるため、寂しさのある俳句を詠むのに適した季語であると言えます。


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 さて、俳句には、読者の心に響く美しい形というものがいくつか存在します。

 例えば、次の名句は、いずれも中七の後ろを「けり」で切り、座五に名詞を据える形をしています。

  ●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
  ●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)

 また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。 

  ●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
  ●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)

 筆者(凡茶)も、名句の鑑賞を通じて、このような美しい俳句の形を使いこなせるようになることで、次のような自信作を詠むことができました。

  ●糸取りの祖母逝きにけり雪解雨(凡茶)
  ●露の玉工場ドスンと始まりぬ(凡茶)

 この本は、こうした佳句の生まれやすい美しい俳句の形を、読者の皆様に習得していただくことを目的としています。

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posted by 凡茶 at 02:08 | Comment(1) | 秋の季語(天文) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして、俳句歴5年ほどのおばさんです。ネットで季語辞典などもお気に入りに入れていますが、凡茶さんのブログをたまたま見つけて読ませて頂きました。季語についての作句のポイントを読みまして大変勉強になり、とてもよいコメントであり、気づかされること大で助かりました。もつといっぱい教えてください。楽しみにしています。
Posted by てるりんこ at 2012年08月24日 15:40
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