梅 (春の季語:植物)

17春の季語・植物・梅(凛とした梅の枝).jpg
梅の花
むめ   花の兄
白梅   紅梅(こうばい)
野梅   老梅
梅が香
梅林(ばいりん・うめばやし)
梅園   梅月夜
盆梅   梅ふふむ


関連季語; 梅見(春季)  早梅・冬の梅(冬季)

● 季語の意味・季語の解説

 俳句で梅と言えば、梅の実ではなく、梅の花をさす。
 古くは「むめ」と表記した。

 梅は早春にほかの花にさきがけて咲くため、「花の兄」とも呼ばれる。
 まだまだ寒い中、先日まで蕾のままだった梅が、ぽつぽつと咲きはじめているのに気がつくと、なんだかいじらしくなる。

  梅一輪一輪ほどの暖かさ (服部嵐雪)

 梅には、白梅紅梅、薄紅色など、様々な色のものがある。

 梅林梅園を歩くと、そんな色とりどりの梅が満開だったり、五分咲きだったりして心が弾む。

  児をつれて小さい橋ある梅林 (尾崎放哉)

 なお、紅梅については、独立した季語として扱っている歳時記が多い。

  紅梅や児の文書く縁の先 (三宅嘯山)
      児=ちご。

 梅は可憐な見た目もさることながら、古くからその馥郁たる香りも好んで読まれてきた。

  むめが香にのつと日の出る山路かな (松尾芭蕉)

  痩骨に梅が香うつる朝かな (高桑闌更) 

 梅月夜という副題も、気品のある梅の香りを俳句に漂わせる。

  初めての日本髪解く梅月夜 (凡茶)

 そのほか、副題としては、盆梅梅ふふむあたりを使いこなせるようになりたい。
 盆梅は盆栽に仕立てた梅、梅ふふむは、梅の花が蕾(つぼみ)のままの状態であることを指す。

 なお、関連する季語である梅見(春季)、早梅・冬の梅(冬季)については、別のページで紹介しているので、よろしかったら、そちらも訪れていただきたい。

     「梅見」のページ
     「早梅・冬の梅」のページ

● 季語随想  

いじらしさと凛

17春の季語・植物・梅(幹に咲く梅).jpg
 「季語めぐり」(当サイト)を書きはじめ、改めて梅という花の人気の高さを実感しました。
 毎日、この「梅」のページに訪れてくださる読者の数が、群を抜いて多いのです。

 万葉の昔から日本人に愛されて止まない梅の魅力とは一体何なのでしょう。
 梅の魅力を端的に表現するとすれば、どのような言葉がふさわしいのでしょう。

 私は「いじらしさ」という言葉が、梅の魅力を表現するのにふさわしいと考えています。

 まだ冷たい早春の風に香りを漂わせ、控えめに、しかし、気高く咲いている梅の花を表現するのに、「かわいらしい」という言葉では、軽すぎるような気がします。

 しかし、「憐憫」というと、またそれも違うような気がします。

 やはり、「いじらしさ」という言葉が、梅の花にはよくあてはまるようです。

 また、梅には「凛」という言葉もよく似合うと思います。

 凛…
 攻撃的な強さではなく、荒々しい強さでもない、芯をピンと張って己を律する強さ…

 そんな強さを、早春の梅の花には感じるのです。

 中村草田男に次のような俳句があります。

  勇気こそ地の塩なれや梅真白 (中村草田男)

 「地の塩」は新約聖書のマタイ伝に出てくる言葉で、「人間の社会(=地)を腐敗から守るもの(=塩)」という意味に私は解釈しています。

 この俳句を、昭和19年に、学徒出陣する教え子に贈った餞(はなむけ)の句であると知って鑑賞すると、草田男もまた、梅のもつ「いじらしさ」と「凛」に、様々な思いを託してこの俳句を生み出したのではないかと、そう思えてならないのです。


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 上の季語随想にも書いたのですが、私は、梅という季語には、「いじらしさ」と「凛」を感じます。
 なお、ここでは「凛」を、“芯をピンと張って己を律する強さ・気高さ”のいう風に捉えてください。

 以下に、いじらしさを感じる俳句、凛を感じる俳句を、それぞれいくつか挙げてみたいと思います。
 名句の味わい方は人によりまちまちなので、私の紹介の仕方に異論を持つ方もおられるでしょうが、ご容赦ください。

< 梅の花にいじらしさを感じる俳句 >

  梅一輪一輪ほどの暖かさ (服部嵐雪)

  灰捨てて白梅うるむ垣根かな (野沢凡兆)

  野の梅や折らんとすれば牛の声 (内藤鳴雪)

< 梅の姿・香りに凛を感じる俳句 >

  梅が香や針穴すかす明り先 (小林一茶)

  梅かをり女ひとりの鏡冴ゆ (桂信子)

  梅咲いて庭中に青鮫が来ている (金子兜太)

< 夜の梅の艶 >

 ところで、夜の梅の俳句を詠むと、ほんのりといい艶がでることがあります。
 チャレンジしてみましょう。

 ただし、あくまで「ほんのり」であることが肝心です。
 俳句は塩梅が大切ですから。

  うすずみを含みしごとく夜の梅 (橋本鶏二)

  初めての日本髪解く梅月夜 (凡茶)

17春の季語・植物・梅月夜【イラスト】.jpg
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  ●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
  ●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)

 また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。 

  ●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
  ●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)

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posted by 凡茶 at 04:03 | Comment(0) | 春の季語(植物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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