麦の秋 (夏の季語:時候)

     麦秋(ばくしゅう) 麦秋(むぎあき)

麦の秋
21夏の季語・時候・麦の秋(ウェブ).jpg
        デジカメ写真


季語の意味・季語の解説
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 小麦・大麦などの麦類は初夏を中心とする季節(5月〜7月)に収穫期を迎え、畑いっぱいに穂が実る。
 そのため、この時期を麦の秋と呼ぶようになった。

 小麦や大麦の原産地である地中海東岸は夏に著しく乾燥するため、夏に作物が育ちにくい。
 ゆえに、麦の仲間は、米のように夏に育つのではなく、秋に種をまかれたあと、冬の間に育って、初夏に実を結ぶのである。

 辺りの草木がみずみずしい緑色となっている初夏に、麦畑だけが黄金色になっているのを見ると、なにか神々しさのようなものを感じる。 


季語随想
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 私は学生時代と教員時代の一時期を仙台で過ごした。
 そのため、自分のもとを訪れてくれた家族、友人、知人を、何度も仙台名物の牛たんを食わす店に連れて行ったことがある。

 そこで、牛たん焼きにはつき物の麦飯が出されると、意外なものが出てきたと、たいていの人が驚いたものだ。
 しかし、その驚き方には二種類あった。

 一つは若い人の驚き方。
 彼らは「麦って粉にせず、こんな風に炊いて食べたりもするんだ」とか、「麦飯かあ。ずいぶんヘルシーなものを出すね」というような反応を示した。

 もう一つは年配の人の驚き方。
 彼らは、「この時代に麦飯と再会するとはなあ」とか、「昔、米が食えない頃は、毎日毎日麦飯を食っていたなあ」というような言葉を口にした。

 そう、現代日本で麦と言えば、粉にしてパン、ケーキ、クッキー、パスタ、ラーメンなどに加工する、飽食の時代を象徴する食材なのだが、一昔前までは、米の不足を補うために、米と異なる時期に収穫される、生きるための糧だったのだ。

 麦が生き死ににかかわる貴重な食い物だった江戸時代、麦の秋という季語を使った俳句には、生死、飢え、貧しさなどを意識して詠んだものが多かったようだ。

 芭蕉に俳諧を学んだ僧侶である浪化上人、与謝蕪村、蕪村と親しかった三宅嘯山(しょうざん)、小林一茶の俳句を紹介する。

  疱瘡する児も見えけり麦の秋 (浪化)
      疱瘡=いもい;天然痘のこと。 児=ちご
     
  病人の駕も過ぎけり麦の秋 (蕪村)
      駕=かご

  麦秋や一揆起こした村ぞこれ (嘯山)

  麦秋や子を負ひながらいわし売り (一茶)


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 上の季語随想でも述べたとおり、麦の秋という季語を使った江戸時代の俳句には、生死、飢え、貧しさなどを意識したものが多く見られました。

 当時の麦は、米の不足を補う貴重な糧(かて)であったためです。

 しかし、現代に生きる私は、若葉が光り、風が薫る初夏に金色の麦畑を見ると、美しさや豊かさを最初に意識しないではいられません。

 ですから私は、麦の秋という季語を用いるときは、麦畑の美しさや豊かさを土台にした、明るく大らかな俳句を詠むことにしています。

  麦秋やジョッキのミルク試飲せる (凡茶)

  遠くともわかるはにかみ麦の秋 (凡茶)



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posted by 凡茶 at 05:37 | Comment(3) | 夏の季語(時候) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
部活で俳句を作っています!課題で麦の秋があったので、非常に参考になりました。ありがとうございました☆彡
Posted by 未来 at 2011年04月30日 11:59
未来さんへ。
俳句の部活とは楽しそうですね!
瑞々しい句をたくさん作ってください。
Posted by 凡茶 at 2011年05月01日 04:41
素敵なお話を読ませて頂きました。麦秋を検索したのは、昨日5月12日伊万里の地で、雨の直前、収穫を迎えていたもち麦畑を見た帰りでした。紫色の穂は、特徴的な麦秋の景色です。農家さんにお聞きした麦秋という言葉は、40ウン年も生きてきましたが、初めて聞く言葉でした。偶然にも貴方のページを読ませていただき、あらためて、自宅の周囲の金色の麦畑を眺め直しました。うちの住所は、金立町といいます。周囲は、一面、二条大麦、六条小麦の金色一面です。望む金立山は、濃い緑の中に、新緑のコントラストです。豊かな気持ちになりました。ありがとう御座います。
Posted by 川上達也 at 2015年05月12日 22:24