寒鯉 (冬の季語:動物)

     寒鯉(かんごい) 凍鯉(いてごい)

寒鯉
46冬の季語・動物・寒鯉【イラスト】.jpg
        パソコン絵画


季語の意味・季語の解説
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 寒中の鯉のこと。寒さで動きが鈍くなる分、栄養が身にたまってすこぶる美味になる。
 
 じっとして、あまり餌もとらなくなるため、釣るのには腕を要する。


季語随想
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 ずいぶん昔、友と、とある町の雪まつりを見に出かけたことがある。
 その町は鯉の名産地であったため、雪まつりを見た後、ある有名店で鯉料理を食べてみようという話になった。
 それまでの私は鯉に泥臭いイメージを抱いていたため、あまり気が進まなかったが、なにごとも経験と思い、友の計画に乗っかることにした。

 で、その店を訪れると、もう夜も遅いため、暖簾は片付けられていた。
 私は、すぐさま諦めて引き返そうとしたが、友は店の扉を臆することなく叩き、出てきた女将に、遠いところからわざわざ来たのだから、どうしても鯉料理を食わせてくれと頼み込み始めた。
 友の強引さに、同行者として顔から火の出る思いであったが、結局、我々は鯉料理を食べさせてもらえることになった。

 旨かった。

 それまで抱いていた鯉のイメージが一新された。

 まずは鯉の煮つけ。
 ほくほくした身も旨かったが、溶けてゼラチン状になった皮と鱗が絶品であった。
 コクのある内臓も珍味で忘れがたい。

鯉の煮つけ
46冬の季語・動物・寒鯉(煮つけ).JPG
        デジカメ写真

 次は鯉の煮こごり。
 口に入れるとさらっと溶け、酒がほしくなる。
 プチプチした卵も一緒に固めてあり、一つの料理で全く違う二つの食感が楽しめた。

 鯉のから揚げも旨かった。
 適度に脂がのり、身も詰まっていて、飯が何倍もいけそうだ。

 洗いが絶品だったことは言うまでもない。
 酢味噌で食うのが一般的だが、引きしまって臭みがないため、わさび醤油でも楽しめた。
 白い身にほんの少し紅が混じっていて、見た目も美しい。

 最後に鯉こく。
 鯉こくとは、鯉を入れて煮込んだ味噌汁であるが、これが甘い白みそ仕立てで、なんとも言えない。
 雪まつり見物で冷えた体が、芯から温められた。

 持つべきものは、少々強引なぐらい楽しむことに積極的な友である。
 彼が一緒でなかったら、私は寒鯉という食材の持つ真価を知らないままでいたかもしれない。

 以来、私は、人生を楽しむことに積極的であろうと、日々自分に言い聞かせている。

  しるこより寒の鯉こく甘かりき (凡茶)



季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 寒鯉という季語で俳句を作る場合、その食材としての旨さを詠むことができます。
 上の季語随想に載せた「鯉こく」の句がその例です。

 あるいは、川・池・沼の、生きている寒鯉を詠むこともできます。
 この場合、俳句を作る側も、鑑賞する側も、寒さで動きが鈍くなった鯉、あるいは、凍ったようにじっとしている鯉を思い浮かべます。

  寒鯉や水面に映る書斎の灯 (凡茶) 



≪おすすめ・俳句の本≫

俳句の宇宙 長谷川櫂著
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■ 俳句は深くて、面白いなあ… 心からそう思えた本でした!


 最も私の心をとらえたのは第四章「間について」
 この章を読み、俳句の「切れ」を「間」と捉え、その「間」をじっくり味わおうとするようになってから、既に目にしていた名句が、それまでとは違って見えてくるようになりました。

 また、第七章「宇宙について」も、面白くてあっという間に読んでしまいました。
 この章で、「造化」というものに関する著者の考え方を読んでから、芭蕉の時代の句に接する際は、その句が生み出される場としての「造化」というものを読み取ってみようと意識するようになりました。
 もちろん、私ごときが読み取ろうと思って読み取れるような浅いものではないのですが…

 とにかくこの本は、
 「自分が足を踏み入れた俳句の世界は、どこまでも深いんだなあ。そして、深みに潜れば潜るほど、新しい面白みに接することができるんだなあ… 」
 そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。



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posted by 凡茶 at 02:15 | Comment(0) | 冬の季語(動物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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