淡雪(あわゆき) (春の季語:天文)

     牡丹雪(ぼたんゆき) 綿雪

12春の季語・天文・淡雪【イラスト】.jpg
        デジカメ写真

● 季語の意味・季語の解説

 降ってもすぐに消えてしまう春の雪を淡雪と言う。

  あはゆきのつもるつもりや砂の上 (久保田万太郎)

 ふんわりと柔らかそうな形をして降るので、「綿雪」とも言う。

 また、空中で少し融け、結晶どうしが結びついて落ちてくるさまを、花弁の大きな牡丹にたとえ、「牡丹雪」と言う。

  夜の町は紺しぼりつつ牡丹雪 (桂信子)  


● 季語随想

 ふうわりと降る淡雪のようなやわらかい言葉で、
 こわばった私の心をほぐしてくれる人。

 手のひらに降りてすっと消えゆく淡雪のような、
 さりげない手助けで私の自尊心を守ってくれる人。

 人は自分に無いものをたくさん持った人に憧れると言いますが、
 私は淡雪のようなやさしさを持った人に強くひかれるようです。


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 降ってもすぐに融けてしまう淡雪には儚さを感じますが、この季語は同時に春らしい明るさも帯びています。

  淡雪や側から青き春日山 (大島蓼太)

  淡雪の降るも茶の湯の花香かな (川上不白)

  淡雪や葭簀がこひの小料理屋 (成田蒼虬)

 また、雪は雪ですから、実際に肌に触れるとひんやりと冷たいのですが、淡雪は何か心に暖かさを運んでくれるような、そんな印象も持っています。
 このようなイメージを大切に詠んだのが次の俳句です。

  しるこ屋へ淡雪の中待ち合はせ (凡茶)

 淡雪・牡丹雪を見ていると、人はしっとりとした心で、物思いに耽りたくなるものです。
 淡雪・牡丹雪には、涙のように心を静め、涙のように心に潤いを与える力があるようです。

  しづかにこころ満ちくるを待つ牡丹雪 (大野林火)

  淡雪や船を見送る宿の傘 (凡茶)

 また、淡雪・牡丹雪という季語の持つしっとりとしたイメージは、俳句にほどよい艶を与えてくれるようです。

  淡雪やかりそめにさす女傘 (日野草城)

  牡丹雪その夜の妻のにほふかな (石田波郷)

  牡丹雪ひととき鏡はなやぎぬ (桂信子)

  淡雪や窓の外見るレオタード (凡茶)

 せつなさ、しづかさ、おそれ… 淡雪・牡丹雪という季語は、他にいろいろな趣を俳句に与えてくれます。

  淡雪嘗めて貨車の仔牛の旅つづく (加藤楸邨)

  死ぬ人の歩いてゆくや牡丹雪 (藤田湘子)


≪おすすめ・俳句の本≫

佳句が生まれる「俳句の形」 凡茶
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 さて、俳句には、読者の心に響く美しい形というものがいくつか存在します。

 例えば、次の名句は、いずれも中七の後ろを「けり」で切り、座五に名詞を据える形をしています。

  ●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
  ●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)

 また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。 

  ●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
  ●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)

 筆者(凡茶)も、名句の鑑賞を通じて、このような美しい俳句の形を使いこなせるようになることで、次のような自信作を詠むことができました。

  ●糸取りの祖母逝きにけり雪解雨(凡茶)
  ●露の玉工場ドスンと始まりぬ(凡茶)

 この本は、こうした佳句の生まれやすい美しい俳句の形を、読者の皆様に習得していただくことを目的としています。

 なお、この本は、前著『書いて覚える俳句の形 縦書き版/横書き版』(既に販売終了)を、書き込み型テキストから「純粋な読み物」に改め、気軽に楽しめる形に書き変えて上梓したものです。

 あちこち加筆・修正はしてあるものの、内容は重複する部分が多いので、すでに前著『書いて覚える俳句の形』をお持ちの方は、本著の新たな購入に際しては慎重に検討してください


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posted by 凡茶 at 02:01 | Comment(0) | 春の季語(天文) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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