
デジカメ写真
● 季語の意味・季語の解説
降ってもすぐに消えてしまう春の雪を淡雪と言う。
あはゆきのつもるつもりや砂の上 (久保田万太郎)
ふんわりと柔らかそうな形をして降るので、「綿雪」とも言う。
また、空中で少し融け、結晶どうしが結びついて落ちてくるさまを、花弁の大きな牡丹にたとえ、「牡丹雪」と言う。
夜の町は紺しぼりつつ牡丹雪 (桂信子)
● 季語随想
ふうわりと降る淡雪のようなやわらかい言葉で、
こわばった私の心をほぐしてくれる人。
手のひらに降りてすっと消えゆく淡雪のような、
さりげない手助けで私の自尊心を守ってくれる人。
人は自分に無いものをたくさん持った人に憧れると言いますが、
私は淡雪のようなやさしさを持った人に強くひかれるようです。
● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方
降ってもすぐに融けてしまう淡雪には儚さを感じますが、この季語は同時に春らしい明るさも帯びています。
淡雪や側から青き春日山 (大島蓼太)
淡雪の降るも茶の湯の花香かな (川上不白)
淡雪や葭簀がこひの小料理屋 (成田蒼虬)
また、雪は雪ですから、実際に肌に触れるとひんやりと冷たいのですが、淡雪は何か心に暖かさを運んでくれるような、そんな印象も持っています。
このようなイメージを大切に詠んだのが次の俳句です。
しるこ屋へ淡雪の中待ち合はせ (凡茶)
淡雪・牡丹雪を見ていると、人はしっとりとした心で、物思いに耽りたくなるものです。
淡雪・牡丹雪には、涙のように心を静め、涙のように心に潤いを与える力があるようです。
しづかにこころ満ちくるを待つ牡丹雪 (大野林火)
淡雪や船を見送る宿の傘 (凡茶)
また、淡雪・牡丹雪という季語の持つしっとりとしたイメージは、俳句にほどよい艶を与えてくれるようです。
淡雪やかりそめにさす女傘 (日野草城)
牡丹雪その夜の妻のにほふかな (石田波郷)
牡丹雪ひととき鏡はなやぎぬ (桂信子)
淡雪や窓の外見るレオタード (凡茶)
せつなさ、しづかさ、おそれ… 淡雪・牡丹雪という季語は、他にいろいろな趣を俳句に与えてくれます。
淡雪嘗めて貨車の仔牛の旅つづく (加藤楸邨)
死ぬ人の歩いてゆくや牡丹雪 (藤田湘子)
≪おすすめ・俳句の本≫
佳句が生まれる「俳句の形」 凡茶
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さて、俳句には、読者の心に響く美しい形というものがいくつか存在します。
例えば、次の名句は、いずれも中七の後ろを「けり」で切り、座五に名詞を据える形をしています。
●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)
また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。
●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)
筆者(凡茶)も、名句の鑑賞を通じて、このような美しい俳句の形を使いこなせるようになることで、次のような自信作を詠むことができました。
●糸取りの祖母逝きにけり雪解雨(凡茶)
●露の玉工場ドスンと始まりぬ(凡茶)
この本は、こうした佳句の生まれやすい美しい俳句の形を、読者の皆様に習得していただくことを目的としています。
なお、この本は、前著『書いて覚える俳句の形 縦書き版/横書き版』(既に販売終了)を、書き込み型テキストから「純粋な読み物」に改め、気軽に楽しめる形に書き変えて上梓したものです。
あちこち加筆・修正はしてあるものの、内容は重複する部分が多いので、すでに前著『書いて覚える俳句の形』をお持ちの方は、本著の新たな購入に際しては慎重に検討してください。
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