蕗の薹(ふきのとう) (春の季語:植物)

     ふきのたう 蕗の芽 蕗の花
     蕗の姑 蕗のじい

蕗の薹(ふきのとう)
17春の季語・植物・蕗の薹(ふきのとう)【イラスト】.jpg
        パソコン絵画


季語の意味・季語の解説
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 早春、野山や人里など、至る所に顔を出す蕗(ふき)の花茎。

 雪間(雪が融けて、土がのぞいたところ)にちょこんと生えているのを見つけると、嬉しくて胸がきゅんとなる。

 小さな愛らしい花を咲かせるが、美味しく味わえるのは花が開く前。
 蕗味噌にしたり、てんぷらにしたり、焼いたりして食べる。
 春を告げるほろ苦い味がする。

 暖かくなるころには茎が伸び、30〜50センチ程度になるが、そうなったものを、蕗の姑とか、蕗のじいなどと呼ぶ。


季語随想
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 子供の頃、ふきのとうを摘むことは、春の楽しみの一つでした。
 弟と一緒にいっぱい摘んで家に帰ると、母さんはじめ、家族の皆が喜んでくれました。

 父さんも爺さんも蕗味噌やふきのとうのてんぷらがあると酒が進むらしく、上機嫌になっていたのをよく覚えています。
 どちらかというと偏食だった婆さんも、蕗味噌は喜んで食べたという記憶があります。

 で、私はというと、摘むのは楽しかったのですが、ふきのとうを口に入れるのは、あまり得意ではありませんでした。
 あの大人が良い良いと誉める苦味が、子供の舌には難解だったのです。
 私は大人たちがふきのとうを味わっているのを見ながら、自分は卵かけご飯を食べていました。

 中学生、高校生ともなると、学業や部活動で忙しくなり、春になってもふきのとうのことなど忘れていましたが、大学に進んで心にゆとりができると、私は、友人らとふきのとうを摘みに出かけるようになりました。
 
 摘み取ったふきのとうをてんぷらにし、何年かぶりに味わってみると、実におつな味でした。
 昔は苦手だったあの苦さを、春を告げる鮮烈な香りとして舌が理解できるようになっていたのです。

 子供の頃その味を理解し得なかったふきのとうが、大人となった今では、春の訪れとともに垂涎の品となるのです。
 大人になって人生の愉しみを受け入れるキャパシティーが結構広がったということでしょう。

 大人になって思うことは、子供の頃想像した以上に、大人の世界というものは素晴らしいものだということです。

 大人は子供におもねることなく、堂々と大人が楽しいと思える世界を子供にも体験させるべきなのではないでしょうか。

 はじめは難解で理解できない子供たちですが、より高度な世界の楽しみ方を、少しずつでも、ちゃんと学んでいくことでしょう。 


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 まだまだ寒さの厳しい雪解けの頃、けなげに土から顔を出している蕗の薹(ふきのとう)は、強い生命力を感じさせるとともに、慈しむ思いを見る者に抱かせます。

 下の六句にも、蕗の薹を慈しむ心がしっかりと込められています。
 鑑賞し、参考にしてみてください。

 はじめの二句は江戸時代のもの、後の四句は私の俳句です。

  古井戸や蕗の花散る水の隈 (仙化)

  莟とは汝も知らずよ蕗の薹 (蕪村)
      莟=つぼみ。 汝=なれ。

  ふきのたう洋鐘の鳴る丘に摘む (凡茶)
      洋鐘=ようしょう。西洋式の鐘。

  笹舟を放す母子やふきのたう (凡茶)

  蕗の薹隠田村の柴で焼く (凡茶)

  蕗の薹土偶出で来し村に摘む (凡茶) 


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・語りかける季語 ゆるやかな日本
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posted by 凡茶 at 06:19 | Comment(0) | 春の季語(植物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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