公魚(わかさぎ)

フィルム写真をスキャナーにて取り込み
季語の意味・季語の解説
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公魚(わかさぎ)は、透き通るようなプラチナ色にほんのり桜色のさす、美しい淡水魚。
体調は10cm前後である。
湖などに生息し、一年中獲れるが、2月頃産卵のために流入河川を遡上するため、春の季語に分類される。
湖面が結氷する厳冬期には、氷に穴を開けて釣り糸を垂らす「穴釣り」の対象となり、こちらは冬の季語に分類される。
キュウリウオ科に属するということは、分類学上は鮎にとても近い魚ということになる。
そのためか、淡水魚でありながら鮒や鯉のような泥臭さが無く、やわらかくてほくほくした身は、煮ても揚げても美味い。
なお、「公魚」の字は、かつて霞ヶ浦のわかさぎが、公方(くぼう:将軍のこと)に献上されたことに由来するらしい。
季語随想
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私は生来の面倒くさがりやであるので、自分から積極的に釣りに出かけるようなことはしない。
釣り具を揃え、餌を用意し、鑑札を買って、早朝に家を出るということが、なんとも億劫なのだ。
しかし、友人に誘われ、導かれるままに釣りに出かけたことはしばしばある。
自分で計画を立てず、一日の行動をまるまる人任せにするというのは、意外と楽しいものである。
私はそういう旅や遊びが性に合っている。
海釣りも、ヤマメ釣りも、蟹釣りも友人の導きで体験させてもらった。
さて、そんな人任せの釣り体験の先駆けになったのが、中学生の頃、近くの湖で楽しんだ公魚(わかさぎ)釣りである。
私は、縫い針の穴に糸を通したり、スケート靴の紐を結んだりすることすらできない不器用な子供であったから、案の定、他の子より、釣れる公魚の数は少なかった。
皆が何十匹も公魚を釣る中、私は一日かけて数匹しか釣ることができなかったと記憶している。
それだけに、たまに釣れたときの喜びは今でも忘れることができない。
釣り糸の先で身をくねらせる姿が湖の放つ光を得て美しく、そしてあの小さな体が意外に重たかったことを覚えている。
わかさぎや鉤にまばゆく且つ重く (凡茶)
鉤=はり。釣り針のこと。
振り返ると、このような体験の一つ一つが、今現在、さまざまな創作をする上で、ずいぶんと役にたっている。
体験は創作の種であるとつくづく思う。
かつての私のような、どちらかと言えば閉じこもりがちな少年少女は、そのような己の性分を自覚しつつも、「将来のためにいろんな体験をしておこうかな」と、胸の内でつぶやく癖だけはつけておいた方が良いかもしれない。
季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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公魚(わかさぎ)という季語については、俳句を作る人も、俳句を鑑賞する人も、白金(プラチナ)のように美しい、その柔らかそうな姿を思い浮かべる必要があります。
季語随想にも載せた次の俳句は、一尾の公魚に焦点をしぼって詠んだものです。
わかさぎや鉤にまばゆく且つ重く (凡茶)
鉤=はり。釣り針のこと。
次の俳句は、公魚の群れて泳ぐ姿を詠みました。
湯めぐりへわかさぎのぼる川伝ひ (凡茶)
参考にしてみてください。
≪おすすめ・俳句の本≫
すらすら読める 奥の細道 立松和平著
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■ 今まで読んだ『奥の細道』の現代語訳の中で最高でした!
大きな字で書かれた原文のすぐ下に現代語訳があり、とても読みやすい本です。
芭蕉の訪問地ごとに添えられた解説も、著者による興味深い見解が随所に述べられていて勉強になります。
私はこの本を読んだ後、学生時代と教師時代を過ごした東北地方へ、改めて一人旅に出かけたくなりました。
これから『奥の細道』を読んでみようと思っている方に、最もお薦めしたい一冊です。
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