暖か (春の季語:時候)

     あたたかし あたたけし ぬくし

暖か
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        フィルム写真をスキャナーにて取り込み


● 季語の意味・季語の解説

 人が事物に触れて暖かさを感じる場面は四季を通じてあるが、季語として「暖か」という語を用いる場合は、春季の語となる。

 冬の「寒し」と夏の「暑し」の間の、過ごしやすく、心の和らぐ春の陽気の温暖さのことである。

  暖かや飴の中から桃太郎 (川端茅舎)


● 季語随想

 暖かさとは、実に主観的な感覚だと思います。
 何℃から何℃までが「暖か」で、それ以上なら「暑し」、それ未満なら「寒し」などと客観的な定義を与えることはできません。
 寒くもなく暑くもない過ごしやすさ、それが暖かさなのです。

 どちらか一方に偏ることなく、調和のとれた丁度よい状態、程よい状態を指す言葉として「中庸(ちゅうよう)」という言葉があります。
 暖かさとはまさに中庸の心地よさなのです。

 今の日本では、社会が、政治が、文化が、この中庸の素晴らしさをどんどん捨てているように思えてなりません。

 勝ち組か、負け組か。
 成功か、失敗か。
 儲かるか、非効率か。
 敵か、味方か。
 右か、左か。
 新しいか、古いか。

 ものごとにリジッドな境界線を設け、「そのどちらかに行けるように頑張れ!」「どちらかに留まっているのは自己責任だ!」というような、中庸を全く認めない息苦しさが、あたりに蔓延しているように思えてなりません。

 中庸の心地よさの無い世界、暖かさの無い世界をだれしもが望んでいるとは、私は思えないのですが…


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 「暖か」という季語は、様々な事物とフレキシブルに(柔軟に)取り合わせることのできる季語です。

 中七・座五に何らかの事物を描き、「あたたかや」の形にした上五と取り合わせてみましょう。

 それだけで読者は、寒くもなく暑くもない、春の陽気の丁度よい過ごしやすさの中に事物を置いて、その俳句を味わってくれます。

 ただし、取り合わせをし易い分、中七・座五を目一杯工夫して、ありがちな俳句にならないよう、心がけましょう。

  あたゝかやでんがくあぶるとうふく寺 (斎藤徳元)

  あたたかや絵本見る児のひとりごと (福田蓼汀)

  あたたかや駒抱きかかへ巨大チェス (凡茶)

  あたたかや津軽訛りの小ちんぴら (凡茶)

  あたたかやにじませて描くピエロの絵 (凡茶)

 また、上の例句は、みな事物を取り巻く陽気の暖かさ(:環境としての暖かさ)を詠んだ俳句ですが、事物そのものに宿る暖かさを詠んだ俳句にも挑戦してみましょう。

 読み手の五感に働きかけるような佳句を詠めます。

  あたゝかな二人の吾子を分け通る (中村草田男)
      吾子=あこ。わが子のこと。

  暗中に聞こえし寝息あたたかし (加藤楸邨)



≪おすすめ・俳句の本≫

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 さて、俳句には、読者の心に響く美しい形というものがいくつか存在します。

 例えば、次の名句は、いずれも中七の後ろを「けり」で切り、座五に名詞を据える形をしています。

  ●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
  ●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)

 また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。 

  ●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
  ●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)

 筆者(凡茶)も、名句の鑑賞を通じて、このような美しい俳句の形を使いこなせるようになることで、次のような自信作を詠むことができました。

  ●糸取りの祖母逝きにけり雪解雨(凡茶)
  ●露の玉工場ドスンと始まりぬ(凡茶)

 この本は、こうした佳句の生まれやすい美しい俳句の形を、読者の皆様に習得していただくことを目的としています。

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 あちこち加筆・修正はしてあるものの、内容は重複する部分が多いので、すでに前著『書いて覚える俳句の形』をお持ちの方は、本著の新たな購入に際しては慎重に検討してください


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・語りかける季語 ゆるやかな日本
・ゆたかなる季語 こまやかな日本 宮坂静生著
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■ 日本列島を隅々まで旅すると、たくさんの知らなかった季語に出会えます!

  
 日本各地には、一般的な歳時記にはあまり載っていない、その土地の貌を映し出す季節のことばがあります。
 筆者の宮坂さんは、そうした言葉を「地貌季語」と称し、その発掘に努めてきました。

 『語りかける季語 ゆるやかな日本』では、沖縄の「立ち雲」、雪国の「木の根明く」ほか、178の地貌季語が紹介されています。

 また、『ゆたかなる季語 こまやかな日本』では、千葉県安房地方の「逆さ寒」、沖縄県の「風車祝」、長野県諏訪地方の「明けの海」ほか、172の地貌季語が紹介されています。 

 この2冊を読めば、日本列島という空間と、季節と言う時間を一度に旅することができそうですね。季語の四次元ワールドを巡ってみましょう。



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posted by 凡茶 at 18:57 | Comment(0) | 春の季語(時候) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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