春の虹 (春の季語:天文)

     はるのにじ 初虹

ヴェネツィアで描いた春の虹
12春の季語・天文・春の虹.jpg
        絵画をスキャナーにて取り込み


● 季語の意味・季語の解説

 春の空に架かる虹を春の虹と言う。
 単に虹と言えば夏の季語であるが、春の虹は夏の虹よりも淡く、儚く消える。

  うすかりし春の虹なり消えにけり (五十嵐播水)

 春の虹のうち、その年に初めて見た虹を、特に初虹と言う。

  初虹や雨にぬれたる畑のもの (浅岡秋甫)


● 季語随想

 私は希望という言葉が好きですが、春の虹は希望の象徴であるように思えてなりません。

 ときに人は、希望を抱かなくなることで、日々の暮らしを楽にすることができます。

 しかし、やはり希望こそが、死ぬまで人が成長し続けていくための原動力になると私は考えます。

 思いがけず春の虹を見つけ、自分の体の中で涸れはじめていた希望を、少しずつ取り戻しているところです。

 春の虹を詠んだ拙句を二つ。

  物売りの子らの指差す春の虹 (凡茶)

  船頭のはにかみて指す春の虹 (凡茶)


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 春の思いがけない時期に虹を見つけると、重く沈んだ心は軽やかになり、せわしく落ち着かなかった心は安らかになります。
 春の虹を見つけた喜びを俳句に込めてみましょう。

  武蔵野の森より森へ春の虹 (鈴木花蓑)

  野の虹と春田の虹と空に合ふ (水原秋櫻子)

  春の虹牛はしめりし鼻をあぐ (上野燎)

 また、淡く滲んだ春の虹には、夏の虹にはないあでやかさがあるため、俳人は優艶な趣のある俳句を読みたくなります。
 私たちも積極的に作ってみましょう。

  春の虹うつれりくらき水の上 (柴田白葉女)

  吐息とどく近さに春の虹立てり (岸本マチ子)

  春の虹人悼むにも身を飾り (林十九楼)
      悼む=いたむ。

  倭の血引くヴェニスの売り子春の虹 (凡茶)

 ただ、やはり春の虹は儚く消えてしまうため、淋しい趣のある俳句も多いようです。

  ことばもて子に距てらる春の虹 (柴田白葉女)

  遺跡みな滅びの証し春の虹 (權守勝一)



≪おすすめ・俳句の本≫

佳句が生まれる「俳句の形」 凡茶
==============================
■ 当サイトの筆者が執筆したKindle本(電子書籍)です!

 この本は、当サイトの筆者である凡茶が書いたKindle(キンドル)本です。Kindle本については、下で説明します。

 さて、俳句には、読者の心に響く美しい形というものがいくつか存在します。

 例えば、次の名句は、いずれも中七の後ろを「けり」で切り、座五に名詞を据える形をしています。

  ●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
  ●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)

 また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。 

  ●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
  ●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)

 筆者(凡茶)も、名句の鑑賞を通じて、このような美しい俳句の形を使いこなせるようになることで、次のような自信作を詠むことができました。

  ●糸取りの祖母逝きにけり雪解雨(凡茶)
  ●露の玉工場ドスンと始まりぬ(凡茶)

 この本は、こうした佳句の生まれやすい美しい俳句の形を、読者の皆様に習得していただくことを目的としています。

 左上の画像(Amazonへのリンク)をクリックすると、本著の詳しい内容紹介や目次を見られるページが開くので、気軽に訪れてみて下さい。

 なお、この本は、前著『書いて覚える俳句の形 縦書き版/横書き版』(既に販売終了)を、書き込み型テキストから「純粋な読み物」に改め、気軽に楽しめる電子書籍の形に書き変えて上梓したものです。

 あちこち加筆・修正はしてあるものの、内容は重複する部分が多いので、すでに前著『書いて覚える俳句の形』をお持ちの方は、本著の新たな購入に際しては慎重に検討してください


●Kindle本について

 Kindle(キンドル)本とは、Amazonで購入できる電子書籍のことです。

 パソコン・スマホ・タブレットなどに無料でダウンロードできるKindleアプリを使って読むことができます。

 あるいは、紙のように読めて目に優しく、使い勝手も良い、Kindle専用の電子書籍リーダーで、快適に読むことも出来ます。

  

   




新版20週俳句入門 藤田湘子著
==============================
■ どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになる本です

 昭和63年に出された旧版『20週俳句入門』があまりにも優れた俳句の指導書であったため、平成22年に改めて出版されたのが、この『新版20週俳句入門』です。

 この本は、
   〔型・その1〕 季語(名詞)や/中七/名詞
   〔型・その2〕 上五/〜や/季語(名詞)
   〔型・その3〕 上五/中七/季語(名詞)かな
   〔型・その4〕 季語/中七/動詞+けり

 の4つの型を、俳句を上達させる基本の型として、徹底的に読者に指導してくれます。

 これらをしっかり身につけると、どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになるでしょう。

 王道の俳句を目指す人も、型にとらわれない斬新な俳句を目指す人も、一度は読んでおきたい名著です。





季語めぐり 〜俳句歳時記〜 トップページへ


posted by 凡茶 at 16:45 | Comment(0) | 春の季語(天文) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント