
パソコン絵画
季語の意味・季語の解説
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小指の先ほどの大きさしかない小さな二枚貝。
貝殻を見ると、色も、形も、桜の花びらに似ているので、この名がある。
その可憐な美しさから、古くから詩歌に詠まれてきた。
貝細工の材としても愛されている。
季語随想
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学生時代、私は、あるひとの誕生日に、何か贈り物をしたいと考えました。
ただ、当時の私には、そのひとのために、気の利いたものを買ってあげるお金などありません。
そこで私は、自転車に乗って浜辺へ出かけ、最も美しいと思う桜貝を拾いました。
そして、その桜貝を贈ることにしました。
翌日、桜貝を受け取ると、その人は、私が思っていた以上に喜んでくれました。
大きな眼が潤んでいたことを、今でも覚えています。
……あれから長い年月が過ぎました。
私は今、海から遠く隔たった場所に暮らしています。
ですが、旅の途中で砂浜を歩く機会などに恵まれると、当時の感情が鮮やかによみがえってきます。
夕空に恵まれし旅桜貝 (凡茶)
季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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桜貝の貝殻が砂浜に落ちているのを見かけると、かわいらしく、かつ、いじらしく思えてきます。
そして、それを拾って持ち帰り、大切に思っている人に見せたくなることもあります。
桜貝を見つけたときのそのような感情が、そのまま鑑賞する側に伝わるように俳句を作りたいものです。
芭蕉の弟子の江左尚白の句と、私の俳句をご覧ください。
酒を売る嫁に見せばや桜貝 (尚白)
星砂に浅く刺さりし桜貝 (凡茶)
桜貝納めて贈るオルゴール (凡茶)
また、次の句は江戸時代のものですが、あえて大きく勇壮なものと対比することで、桜貝の可憐さを強調した佳句だと思います。
鯨寄る磯も春なり桜貝 (成之)
≪おすすめ・俳句の本≫
新版20週俳句入門 藤田湘子著
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■ どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになる本です
昭和63年に出された旧版『20週俳句入門』があまりにも優れた俳句の指導書であったため、平成22年に改めて出版されたのが、この『新版20週俳句入門』です。
この本は、
〔型・その1〕 季語(名詞)や/中七/名詞
〔型・その2〕 上五/〜や/季語(名詞)
〔型・その3〕 上五/中七/季語(名詞)かな
〔型・その4〕 季語/中七/動詞+けり
の4つの型を、俳句を上達させる基本の型として、徹底的に読者に指導してくれます。
これらをしっかり身につけると、どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになるでしょう。
王道の俳句を目指す人も、型にとらわれない斬新な俳句を目指す人も、一度は読んでおきたい名著です。
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