夏の月 (夏の季語:天文)

     月涼し  夏の霜

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        パソコン絵画


季語の意味・季語の解説
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 昼の暑さの厳しい夏は、夜の涼しさが恋しい。

 「夏の月」は、そんな夏の夜の涼しさを象徴するものとして俳句に詠まれる。
 ゆえに、「夏の月」という季語には、「月涼し」という副題がある。

 また、月の光が地上を白く照らしている様子が、夏は特に涼しげに感じられるため、これを「夏の霜」と呼ぶ。

 しかし、夏は夜が明けやすく、月の明るく照っていられる時間は短い。
 ゆえに「夏の月」には、「儚さ(はかなさ)」を感じる。

  
季語随想
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 「美しい生き方」にこだわるな。
 「楽な生き方」をしてみよう。

 ビール片手に夏の月を仰ぎながら…

 縁側でそんなことを考えている。


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 日中の暑さとは打って替わった夏の夜の涼しさ。
 次の俳句では、「夏の月」が「涼しさ」の象徴として詠まれています。
 参考にしましょう。

  市中はものの匂ひや夏の月 (野沢凡兆)
      市中=いちなか。 匂ひ=におい。

  河童の恋する宿や夏の月 (与謝蕪村)
      河童=かわたろ。カッパのこと。

  町中を走る流れよ夏の月 (加舎白雄)

  降るにあらず消ゆるにあらず夏の霜 (高桑闌更)

 最後の句は、副題の「夏の霜」の例句です。
 最近は、作句例が少ないようなので、「夏の霜」の句にもチャレンジしてみたいものです。

 私は「月涼し」という夏の月の副題が好きで、むしろそっちを好んで用います。

  月涼し笹舟町にさしかかる (凡茶)

  月涼しこりりと響く香の物 (凡茶)
      香の物=こうのもの。味噌漬けなどの野菜の漬物。

  月涼し湾流とらへいるか去る (凡茶)

 さて、次は、夏の月の「儚さ(はかなさ)」を詠んだ俳句の例です。
 夏の夜は明けやすく、月も早々に褪せてしまうため、儚さを感じるのです。

  蛸壺や儚き夢を夏の月 (松尾芭蕉)
      蛸壺=たこつぼ。海底に仕掛けておくとタコが入りこむ。やがて引き上げられて出荷されるタコに、芭蕉は「あはれ」を感じている。

  夏の月ごゆより出て赤坂や (松尾芭蕉)
      ごゆ=御油。御油と赤坂はともに東海道の三河の宿。二つの宿場はとても近いため、短夜の儚さを連想させる(「ふみ」さんのコメントを参考とさせていただきました)。

   遠浅に兵舟や夏の月 (与謝蕪村)
      兵=つわもの。

  サリーにて拭ふ涙や夏の月 (凡茶)



≪おすすめ・俳句の本≫

すらすら読める 奥の細道  立松和平著
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■ 今まで読んだ『奥の細道』の現代語訳の中で最高でした!

 大きな字で書かれた原文のすぐ下に現代語訳があり、とても読みやすい本です。

 芭蕉の訪問地ごとに添えられた解説も、著者による興味深い見解が随所に述べられていて勉強になります。

 私はこの本を読んだ後、学生時代と教師時代を過ごした東北地方へ、改めて一人旅に出かけたくなりました。

 これから『奥の細道』を読んでみようと思っている方に、最もお薦めしたい一冊です。



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posted by 凡茶 at 18:11 | Comment(2) | 夏の季語(天文) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「月涼し」を検索していてこちらに立ち寄りました。

 芭蕉の句ですが、少々覚え間違いをしていらっしゃいますね。

 夏の月御油より出でて赤坂や

 御油(ごゆ)も赤坂も東海道は三河の宿。このふたつの街の間はとても近く、短夜を連想させます。

 酷暑の折とはいえ、夜風は涼しくなってきました。
 ゆるりと季節を楽しんでまいりましょう。

 ハイボール片手に眺む夏の月
Posted by ふみ at 2010年08月23日 23:23

 ふみ様。
 コメントありがとうございました。

 芭蕉の句を、「夏の月ごゆるり出でて赤坂や」と間違えて覚えた上に、気に入っておりました。
 お恥ずかしい…

 さっそく、ブログ記事に御指摘を反映させていただきました。

 これからもお立ち寄りいただけると幸いです。

 「ハイボール片手に眺む夏の月」 素敵な句ですね。
Posted by 凡茶 at 2010年08月24日 11:40