
パソコン絵画
季語の意味・季語の解説
==============================
昼の暑さの厳しい夏は、夜の涼しさが恋しい。
「夏の月」は、そんな夏の夜の涼しさを象徴するものとして俳句に詠まれる。
ゆえに、「夏の月」という季語には、「月涼し」という副題がある。
また、月の光が地上を白く照らしている様子が、夏は特に涼しげに感じられるため、これを「夏の霜」と呼ぶ。
しかし、夏は夜が明けやすく、月の明るく照っていられる時間は短い。
ゆえに「夏の月」には、「儚さ(はかなさ)」を感じる。
季語随想
==============================
「美しい生き方」にこだわるな。
「楽な生き方」をしてみよう。
ビール片手に夏の月を仰ぎながら…
縁側でそんなことを考えている。
季語の用い方・俳句の作り方のポイント
==============================
日中の暑さとは打って替わった夏の夜の涼しさ。
次の俳句では、「夏の月」が「涼しさ」の象徴として詠まれています。
参考にしましょう。
市中はものの匂ひや夏の月 (野沢凡兆)
市中=いちなか。 匂ひ=におい。
河童の恋する宿や夏の月 (与謝蕪村)
河童=かわたろ。カッパのこと。
町中を走る流れよ夏の月 (加舎白雄)
降るにあらず消ゆるにあらず夏の霜 (高桑闌更)
最後の句は、副題の「夏の霜」の例句です。
最近は、作句例が少ないようなので、「夏の霜」の句にもチャレンジしてみたいものです。
私は「月涼し」という夏の月の副題が好きで、むしろそっちを好んで用います。
月涼し笹舟町にさしかかる (凡茶)
月涼しこりりと響く香の物 (凡茶)
香の物=こうのもの。味噌漬けなどの野菜の漬物。
月涼し湾流とらへいるか去る (凡茶)
さて、次は、夏の月の「儚さ(はかなさ)」を詠んだ俳句の例です。
夏の夜は明けやすく、月も早々に褪せてしまうため、儚さを感じるのです。
蛸壺や儚き夢を夏の月 (松尾芭蕉)
蛸壺=たこつぼ。海底に仕掛けておくとタコが入りこむ。やがて引き上げられて出荷されるタコに、芭蕉は「あはれ」を感じている。
夏の月ごゆより出て赤坂や (松尾芭蕉)
ごゆ=御油。御油と赤坂はともに東海道の三河の宿。二つの宿場はとても近いため、短夜の儚さを連想させる(「ふみ」さんのコメントを参考とさせていただきました)。
遠浅に兵舟や夏の月 (与謝蕪村)
兵=つわもの。
サリーにて拭ふ涙や夏の月 (凡茶)
≪おすすめ・俳句の本≫
すらすら読める 奥の細道 立松和平著
==============================
■ 今まで読んだ『奥の細道』の現代語訳の中で最高でした!
大きな字で書かれた原文のすぐ下に現代語訳があり、とても読みやすい本です。
芭蕉の訪問地ごとに添えられた解説も、著者による興味深い見解が随所に述べられていて勉強になります。
私はこの本を読んだ後、学生時代と教師時代を過ごした東北地方へ、改めて一人旅に出かけたくなりました。
これから『奥の細道』を読んでみようと思っている方に、最もお薦めしたい一冊です。
季語めぐり 〜俳句歳時記〜 トップページへ
【夏の季語(天文)の最新記事】
芭蕉の句ですが、少々覚え間違いをしていらっしゃいますね。
夏の月御油より出でて赤坂や
御油(ごゆ)も赤坂も東海道は三河の宿。このふたつの街の間はとても近く、短夜を連想させます。
酷暑の折とはいえ、夜風は涼しくなってきました。
ゆるりと季節を楽しんでまいりましょう。
ハイボール片手に眺む夏の月
ふみ様。
コメントありがとうございました。
芭蕉の句を、「夏の月ごゆるり出でて赤坂や」と間違えて覚えた上に、気に入っておりました。
お恥ずかしい…
さっそく、ブログ記事に御指摘を反映させていただきました。
これからもお立ち寄りいただけると幸いです。
「ハイボール片手に眺む夏の月」 素敵な句ですね。