秋暑(しゅうしょ) 餞暑(せんしょ)
残暑

日陰に集まってじっとしている鳩たち。
今年(2010年)の残暑は長く厳しいから、鳩たちも堪(こた)えているはずだ。
デジカメ写真
季語の意味・季語の解説
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立秋(8月8日頃)を過ぎても、なお残る暑さのことを残暑と言う。
多くの俳句歳時記が、残暑の副題に秋暑(しゅうしょ)を挙げているが、残暑という季語と秋暑という季語の持つ印象は、少し異なっている。
残暑と聞くと、暦の上では秋になった地上に、べったりと貼りつくように居座っている「夏の暑さ」を連想する。
一方、秋暑と聞くと、どこか弱さというか、儚さのようなものを帯びた、「秋らしい暑さ」を連想する。
俳人である以上、これらの使い分けを楽しんでみたい。
なお、餞暑という副題には、やがて衰えてしまう暑さを惜しむ気持ち、過ぎゆく夏を見送る気持ちがこもる。
季語随想
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梅雨明け後の真夏が好きである。
ビールが旨くなる、西瓜が旨くなる、焼き肉が旨くなるということもあるのだが…
何よりも、半そでのシャツ一枚で遠出できることがうれしい。
その遠出の際に、ストーブやこたつの消火を確認せずに、気楽に家を出られることが、さらにうれしい。
私にとって夏とは、身軽かつ気楽になれる季節なのだ。
私にとって幸せとは、身軽かつ気楽な日々を送ることなのだ。
だから、毎年私は残暑を歓迎している。
立秋と同時に暑さが失せ、同時に夏があとかたもなく消え去ってしまうなんてことになったら、淋しいことこの上ない。
私は、残暑の時期を、神のプレゼントだと思っている。
立秋後も、もう少し身軽さと気軽さを楽しみたいと思っている私に対する、おまけの夏なのだと思っている。
………
ただ、今年(2010年)は私の行いがよかったせいか、悪かったせいか、神の与えてくれた残暑がとにかく長い。
長すぎる。
毎日のように熱中症のニュースを聞かされると、もうそろそろ秋にしてくださっても良いですよと、神にお願いしたくなる。
季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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「残暑」という季語からは、秋になったにもかかわらず、べったりと貼りつくように居座る「夏の暑さ」を連想します。
ゆえに、この季語を用いて俳句を作る場合は、「しぶとい暑さ」を感じさせるような一句にしたいと思います。
牛部屋に蚊の声闇き残暑かな (松尾芭蕉)
闇き=くらき。
かまきりの虚空をにらむ残暑かな (立花北枝)
城裏に床屋匂へる残暑かな (凡茶)
網棚に味噌忘らるる残暑かな (凡茶)
「秋暑(しゅうしょ)・秋暑し(あきあつし)」という副題は、暑さの中にある、秋らしいささやかな涼しさを感じさせる季語です。
ですから、秋暑という季語を用いて俳句を作る場合は、夏の暑さにはない「弱さ」「儚さ」を一句の隠し味にしたいと思います。
秋暑し水札鳴方の潮ひかり (加藤暁台)
水札=けり。チドリ科の鳥。 鳴方の=鳴く方の。
秋暑し午後の目覚まし鳴り止まぬ (凡茶)
「餞暑(せんしょ)」という副題には、近いうちに弱まっていくであろう暑さを惜しむ心がこめられています。
俳句歳時記を見ても、あまり例句は載っていませんが、我々が積極的に使って、頻用される季語へと育てていきましょう。
テーブルに紙縒散らかる餞暑かな (凡茶)
紙縒=こより。紙などをよって作った紐(ひも)。
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●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)
また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。
●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)
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