虫 (秋の季語:動物)

     虫の声 虫の音(むしのね) 虫集く(むしすだく) 虫鳴く
     虫時雨(むししぐれ) 虫の夜 虫の闇 虫の秋 昼の虫

虫の夜
36秋の季語・動物・虫の夜.jpg
                デジカメ写真

● 季語の意味・季語の解説

 俳句において「虫」と言えば、秋に草むらで鳴く虫たちの総称である。

 リリリリと鳴く蟋蟀(こおろぎ)、リーンリ−ンと鳴く鈴虫、チンチロリンと鳴く松虫、チョンギースと鳴く螽蟖(きりぎりす)、スイッチョンと鳴く馬追(うまおい)などは、全て単独で秋の季語であるが、「虫」という季語はこれらの虫を全て含んでいる。

  其中に金鈴をふる虫一つ (高浜虚子)
      其中=そのなか。

 虫の声は、オスたちが求愛のために翅(はね)を摺り合わして鳴らすもので、「虫時雨(むししぐれ)」とは、そうした虫の声が幾種類も重なりあって、とても賑やかになっている様子をさす。
 また、「虫集く(むしすだく)」も同様の意味である。

  虫時雨銀河いよいよ撓んだり (松本たかし)
      撓んだり=たわんだり。

  虫しぐれ吾子亡き家にめざめたり (谷野予志)
      吾子=「あこ」と読む。わが子。  


● 季語随想

 虫たちが心地よい音を奏でている。
 静かな夜だ。

 ところで、世界のほとんどの文化では、虫の出す音に風情や趣を感じたりなどしないという。
 それどころか、虫が鳴いていても、それを虫の出している音だと認識できていないこともあるらしい。

 「虫の出す音」を「虫の声」と捉え、「ああ、秋も深まったなあ」などとしみじみ聞き入る日本人は、稀有な文化の中を生きているようだ。

 政治家やマスコミ、ジャーナリストによって日本の危機が叫ばれ、国民も漠然とした不安を常に抱えているが、真の日本の危機とは、日本人が虫の声を心地よい音ではなく雑音と感じるようになり、さらには騒音と感じるようになる、そんな時なのではないか。

 私たちが、書斎やふとんの中で気持ちよく虫の声を楽しめているうちは、まだまだ日本文化、いや「日本」は、たくましくここに存在している。
 
 ともあれ、今夜はたっぷりと虫時雨を浴びながら、読書とウイスキーでも楽しもうと思う。

  ニュースから離れたき夜や虫と酒 (凡茶)


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 「虫」を季語に俳句を詠む場合、私は、虫の声の背後にある「閑かさ」を味わい深く表現するように努めます。
 先人の句を鑑賞する時も、その作品に描かれた「閑かさ」を楽しみます。

 次の二句に描かれている閑かさは、ほんのり淋しさを帯びています。

  虫なくや我れと湯を呑む影法師 (前田普羅)

  虫鳴くや離れにて剪る明日の供花 (凡茶)
      離れ=はなれ。母屋から離れている家。 供花=くげ。仏さまや亡くなった人に備える花。

 次の三句は、閑かさが美しく表現されていると思います。

  虫啼くや草葉にかかる繊月夜 (三宅嘯山)
      啼く=なく。 繊月夜=ほそ月夜。

  窓の燈の草にうつるや虫の声 (正岡子規)

  虫鳴き満ち灯影々々にま団欒あり (福田蓼汀)
      団欒=「まどゐ(まどい)」と読む。

 次の二句の閑かさには、畏れのようなものを感じます。

  啼かぬもの浅間ばかりよ虫の秋 (吉川英治)

  水注いで甕の深さや虫時雨 (永井龍男)

 次の三句には、虫の声の中で閑かさを感じている人物の、心の落着きのようなものが表現されています。

  本読めば本の中より虫の声 (富安風生)

  虫時雨寡黙で通す友寝たり (凡茶)

  書きかけの譜面を虫の夜の書架へ (凡茶)
      書架=しょか。本棚のこと。



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posted by 凡茶 at 03:22 | Comment(0) | 秋の季語(動物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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