豊の秋(とよのあき) 出来秋(できあき)
収穫間近の稲

デジカメ写真
季語の意味・季語の解説
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冷害、干ばつ、暴風雨などに遭わず、五穀、とくに米が豊作だった年を豊年という。
秋の季語。
昔の人たちにとって、穀物の作況は命を左右する一大事であった。
ゆえに、豊作の喜びは、今とは比べ物にならない大きなものであった。
現在は、栽培技術の進歩や品種改良などによって凶作が減ったこと、仮に凶作でも食料の輸入で生死にかかわる事態には陥らなくなったことから、一般国民の豊作を喜ぶ心、そして、百姓に感謝する心は薄らいできていると言われる。
季語随想
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1970年から2004年まで、米余り状態となった日本では減反(げんたん)が行われた。
もし、こんな事実を知らされたら、豊作を願い、凶作を恐れて日々を過ごしてきた我々の祖先は、さぞ驚くであろう。
そして、食料自給率の低さが懸念されているにもかかわらず、現代の日本人が、米食を離れ、輸入小麦から作った加工食品や輸入肉類を好んで食べる傾向を強めていると知ったら、我々の祖先はさぞ悲しむことだろう。
ある資料によると、1960年頃、日本人は摂取カロリーの約5割を米に頼っていた。
しかし、2007年現在、日本人の摂取するカロリーに占める米の割合は23%に過ぎないという。
日本人の米離れの要因は、食生活の欧風化、小麦から作るラーメンやハンバーガーなどの外食産業の成長、ダイエットブーム、米を炊く時間の節約まで強いる忙しさなど、様々あると思われる。
私は、日本人の米離れがこのまま進み、やがて米の国内生産量が激減して、輸入食料に頼り切った食生活になることを強く懸念している。
もし、日本の米農業が廃れた後、食料供給国と日本が政治的にもめて、日本の食料輸入がストップしてしまったらと考えるとぞっとする。
中国からレアアースの輸入をとめられて、日本のハイテク産業は大変な危機に陥ったが、食料で同様のことが起こったら、経済の危機どころではない。
国民全体の命の危機である。
日本人が米をたくさん食べ、そのために日本人が米をたくさん作る。
そんな国創りに今から全力で取り組んでいく必要があるのではないだろうか。
そのためには、米生産だけではなく、米消費を増やすための知恵を真剣に振り絞る必要がある。
どうしたら日本人が再び米を食べるようになるか?
ありとあらゆる食材が氾濫する現代日本において、そんなことを考える時が来ているような気がする。
豊年を祈り、そして豊年を喜び、感謝する…
私は、そんな日本を取り戻せるよう、俳人としてやれることをやっていきたい。
季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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輸入食料の氾濫する現代日本では、豊年を心の底から喜ぶ人の数は、少なくなっているのかもしれません。
しかし、「豊年」を季語に俳句を詠む場合は、やはり「喜び」に満ちた作品を作りたいと思います。
私は、人々だけではなく、土、山、風、空… あらゆるものが豊年の喜びを分かち合ってくれていると信じた上で、目に映る景色を詠むように心がけています。
以下の俳句においては、星たちも、空を舞う鳶(トビ)も、地上の豊年を一緒に喜んでいます。
豊年の星見て待てる始発かな (凡茶)
ややを負ふ子に豊年の鳶の笛 (凡茶)
やや=赤ちゃん。 負ふ=おんぶすること。
なお、「豊年」という季語は、それだけで金色の稲穂がなびく田園を連想させますので、稲穂の似合う景色を描くことを心がけたいと思います。
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