薄(すすき) (秋の季語:植物)

     芒(すすき) 花薄・花芒(はなすすき)
     薄野・芒野(すすきの) 薄原・芒原(すすきはら) 
     尾花(おばな)

薄(すすき)
37秋の季語・植物・芒(ウェブ).jpg
        デジカメ写真


● 季語の意味・季語の解説

 「すすき」は「」とも「」とも書く。どちらの漢字を用いるか、あるいは平仮名を用いるか、楽しみながら悩みたい。

  をりとりてはらりとおもきすすきかな (飯田蛇笏)

  花薄風のもつれは風が解く (福田蓼汀)

  貌が棲む芒の中の捨て鏡 (中村苑子)
      貌=かお。 棲む=すむ。
  
 花穂は始め褐色で横に開くが、やがて白色となってすぼみ、風に吹かれると動物の尾のように見えるようになる。
 ゆえに、薄は尾花(おばな)とも呼ばれる。

 野、山、道端など、至る所に生え、昔から人々の暮らしとも関わりが深い。
 
 例えば、月見においては、団子や里芋とともに薄が供えられる。
 なぜ薄が月に供えられるかには諸説あるようだが、うっかり触れると手を切ってしまうような鋭い葉を持つため、魔除けとして用いられているとも言われる。

  古郷や近よる人を切る芒 (小林一茶)

 月見に用いた薄を軒に吊るすと、向こう一年間、病気をしないとの言い伝えもある。

 また、薄は萱葺き(かやぶき)屋根の資材とされた。

 なお、萱(かや)とは、屋根を葺く(ふく)のに用いられる草の総称であり、薄のほか、菅(すげ)、茅(ちがや)なども含まれる。


● 季語随想

 夏の薄は刃(やいば)だ。
 若い夏の薄は、触れると手を切ってしまいそうな青く鋭い葉を伸ばす。

 やがて薄は柔らかい穂をいただく。

 薄の穂はどこかに哀愁を秘めている。
 しかし、見るものをほっとさせる優しさがある。

 鋭く凛々しい葉は、風になびく穂を、下で黙って支えている。

 やがて薄は、萱葺き(かやぶき)の屋根となる。
 屋根となって、雨や風から小さな幸せをひたすら守る。

 薄の一生は、男が男になっていくのに似ている。

 刃を強さだと思っている青二才が、本物の強い男になっていくのに似ている。


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 薄野(すすきの)、薄原(すすきはら)に出ると、まずはその美しさに目を奪われます。

 薄の穂が輝く広々とした空間を表現してみましょう。

  山は暮れて野は黄昏の薄かな (与謝蕪村)

  眼の限り臥しゆく風の薄かな (吉分大魯)
      臥しゆく=ふしゆく。

  この道の富士となり行く芒かな (河東碧梧桐)
 
 風に揺られる薄の穂をしばらく眺めていると、なんだか徐々に静かな気持ちになってきて、いつしか淋しさも忍び寄ります。
 次の筆者の二句には、そんな気分がこもりました。
 
  立ち枯れの鳶薄野を見渡せり (凡茶)
      鳶=トビ。

  薄野を去る一本の薄かな (凡茶)

 薄を詠んだ名句には、花穂の柔らかさが生々しく伝わってくる句も多いようです。

  をりとりてはらりとおもきすすきかな (飯田蛇笏)

  健やかな五体を没し芒折る (阿部みどり女)

 こういう句は、視覚だけでなく、触角でも読者を楽しませてくれます。  



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佳句が生まれる「俳句の形」 凡茶
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 さて、俳句には、読者の心に響く美しい形というものがいくつか存在します。

 例えば、次の名句は、いずれも中七の後ろを「けり」で切り、座五に名詞を据える形をしています。

  ●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
  ●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)

 また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。 

  ●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
  ●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)

 筆者(凡茶)も、名句の鑑賞を通じて、このような美しい俳句の形を使いこなせるようになることで、次のような自信作を詠むことができました。

  ●糸取りの祖母逝きにけり雪解雨(凡茶)
  ●露の玉工場ドスンと始まりぬ(凡茶)

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posted by 凡茶 at 04:02 | Comment(0) | 秋の季語(植物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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