柿 (秋の季語:植物)

     渋柿 樽柿 さわし柿
     干し柿 ころ柿 吊るし柿
     甘柿 きざわし(木淡)
     こねり(木練) 熟柿(じゅくし)
     木守・木守柿 串柿 



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        パソコン絵画


● 季語の意味・季語の解説

 柿の原産地は中国と考えられているが、日本における栽培の歴史も古い。

 日本の柿栽培は有史以前に始められていたらしく、古事記や日本書紀の中に記述が見られる。
 柿は日本人の食生活・食文化に最も浸透した果物である。

 晩秋、ある程度古くからある集落を歩くと、枝もたわわに実がなっているのを、あちらこちらで見かける。

  里古りて柿の木持たぬ家もなし (松尾芭蕉)
      古りて=ふりて。古びての意味。

枝いっぱいに実る柿
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        デジカメ写真

 柿には様々な種類があるが、口の中で渋み成分のタンニンが溶け出す渋柿と、タンニンが口の中でも溶けない甘柿の2種類に大きく分けられる。

 このうち渋柿は、渋抜きをしてからでないと食べられないが、渋抜きの方法もいろいろある。
 いくつか例を挙げてみよう。

 ・樽柿は、空いた酒樽に渋柿を納め、アルコール分によって渋みを抜いたもの。
 ・さわし柿は、柿を塩水につけて温めたり、焼酎を振りかけて何日か置いて渋みを抜いたもの。
 ・干柿(干し柿)は、渋柿を天日に干して渋みを抜いたもので、ころ柿吊し柿(吊るし柿)とも言われる。

 いずれの方法も、日本人が大切に守っていきたい生活の知恵である。

 一方、甘柿は木になっているうちに熟し、枝からもいですぐに食べられるため、きざわし(木淡)、こねり(木練)などと呼ばれる。
 
 なお、熟柿(じゅくし)は、よく熟れてやわらかくなった柿で、秋季の独立した季語として扱われることが多い。

 また、収穫後に木の枝に一つだけ残された実は木守(きまもり)・木守柿(きもりがき・こもりがき)と呼ばれ、こちらは独立した冬季の季語として扱うのがふさわしい。

 最後に、串柿とは、十個の柿に串を通してから干したもので、正月に橙(だいだい)とともに鏡餅に添える。
 鏡餅を三種の神器の「鏡」、橙を「玉」、串柿を「剣」に見立てているらしい。


● 季語ばなし

 子供の頃、近所に「ふく」というおばあちゃんが住んでいました。

 ふくさんは子供が好きで、ふくさんの家の甘柿を物欲しそうに見上げている子がいると、もいで皮をむき、食べさせてくれるおばあちゃんでした。

 私たちは晩秋になると、学校帰りにわざと遠回りしてふくさんの家の前を通り、甘柿を食べさせてもらってから、野原へ三角ベースをしに出かけたものです。 

 しかし、やがてふくさんは他界し、ふくさんの家には新しい人が暮らすようになりました。
 子供たちは秋の楽しみを一つ失いました。

 でも、その頃から、秋になると、不思議な女の子が私たちの町に現れるようになりました。
 女の子は私たちより一つか二つくらい年下で、おかっぱ頭にもんぺを履き、一昔前のいでたちをしていました。

 女の子の家には甘柿の木があるらしく、現れる時は、いつも柿を入れた紙袋を持っていました。

 女の子は毎日姿を見せるわけではありません。

 貧しい子が腹をすかせているとき…
 弱虫の子が上級生にいじめられて泣いているとき…
 悪さをした子が親に家から放り出されたとき…

 そんなときだけその子の前に現れ、「遊ぼ」と一言だけ声をかけるのでした。

 女の子は、上手に二個の柿の皮をむき、私たちに一つを差し出して、もう一つは自分で美味しそうに食べました。

 柿を食べた後、おはじきなどで遊んでやると、夕烏が啼く頃には、女の子は「家へ帰る」と言って、満足そうに去って行きました。

 幼い頃、秋になると必ずやってきたこの女の子も、私たちが小学生から中学生、中学生から高校生へと成長していく中で、だんだんと姿を見せないようになりました。

 そして、大人になり、教職に就いていた私は、もうすっかり彼女のことなど忘れていました…。

 そんなある日、町中が柿すだれで飾られる干し柿の名所を訪れた私は、日当たりのよい神社の石段に男女二人の子供が並んで腰かけ、柿を食べているのを見かけました。

 女の子の方は、もんぺ姿ではありませんでしたが、幼い頃、私たちに甘柿を食べさせてくれたあの子と瓜二つでした。

 女の子の隣では、べそをかいている男の子が、袖で涙をぬぐいながら柿を食べていました。

 私はその様子をしばらく眺め、子供たちには声をかけることなく、温かい気持ちになってその場を立ち去りました。

 今思うと、その女の子と同じところに、ふくさんもほくろを持っていたような気がします。


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        デジカメ写真


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 日本人は、渋柿から樽柿、さわし柿、干し柿などを作る生活の知恵を身につけ、また、渋柿を品種改良して甘柿を生み出すなど、柿を庶民生活になくてはならない果物へと育て上げてきました。
 
 そのためか、柿を季語に詠んだ俳句には庶民の生活感あふれる句も多いようです。
 参考にしましょう。

  まさかりで柿むく杣が休みかな (水田正秀)
      杣=そま。きこりのこと。

  三千の俳句を閲し柿二つ (正岡子規)
      閲し=けみし

  よろよろと棹がのぼりて柿挟む (高浜虚子)
      棹=さお

  貸してある家も等しく柿の秋 (竹下しづの女)

  店の柿減らず老母へ買ひたるに (永田耕衣)

  柿むくやよべは茸を選りし灯に (木村蕪城)
      よべ=昨夜

  バラードをかけ柿もぎを眺めをり (凡茶)      

 また、葉の落ちた木の枝になる柿の実も、皿の上の、控え目だけれど深みのある甘さを持つ柿の実も、心にしみるような秋のかなしみを胸に抱かせます。
 
 しみじみとした一句を詠んでみましょう。

  甲斐がねの入日まばゆし柿の照 (小島大梅)
      甲斐がね=甲斐が嶺。

  柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺 (正岡子規)

  柿景色暮れ風見鶏ぎいと鳴く (凡茶)

  自転車を引き街道の柿の中 (凡茶)



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  ●月天心貧しき町を通りけり  蕪村
  ●赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり  正岡子規

 次の二句は、形容詞の終止形で中七の後ろを切り、座五に名詞を据える形をしています。

  ●五月雨をあつめて早し最上川  芭蕉
  ●鐘ひとつ売れぬ日はなし江戸の春  其角

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posted by 凡茶 at 17:13 | Comment(0) | 秋の季語(植物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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