土筆(つくし) (春の季語:植物)

     つくしんぼ つくづくし ツクシ 筆の花 土筆野
     土筆摘み(つくしつみ) 土筆和(つくしあえ)

土筆(つくし)
17春の季語・植物・つくし.jpg
        デジカメ写真


季語の意味・季語の解説
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 土筆(つくし)は、杉菜(スギナ)が繁殖するための胞子を撒く、胞子茎と呼ばれるものだ。
 河川の土手、田の畔、野原などの日のあたる所に生える。

 子供向けの本で、土筆と杉菜の根っこが土の中で繋がっていると知り、実際に自分で土を掘ってそれを確かめられた時、とてもうれしかったことを覚えている。

 土から出たての先の硬いつくしは、湯がいてアクを取った後、おひたし、胡麻和え、からし和え、卵とじ等にして食べると美味しい。

 ただ、茎の節々についている袴(はかま:実は土筆の葉である)を、調理する前に1本1本取り除かなくてはならないので、ゆったりとした時間を楽しめない人へのお薦めの食材とはならない。

 硬かった先っぽがほころび、隙間のできた土筆は胞子を撒く。
 そして、役目を終えたとばかりにすぐに枯れ始める。

 そういう土筆は食材としての格は落ちるが、あはれを纏った句材となる。  

 土筆には、つくしんぼ、つくづくし、あるいはその形状から筆の花等の異称があるが、古句では「つくづくし」と詠まれることが多かった。

先っぽのほころびた土筆
17春の季語・植物・土筆.jpg
        デジカメ写真


季語随想
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■ 杉菜のチンチン ■

 子どもたちにとって、土筆は春の野の人気者であった。
 土筆は子どもたちの心をひきつける、実にユーモラスな形をしている。

 ある日、土筆と杉菜が土地の中で繋がっていることを知った私が、おふざけで土筆を「杉菜のチンチン」と例えたことがあった。
 それ以来、近所の子どもたちはみな、土筆を「杉菜のチンチン」と呼ぶようになってしまった。

 土筆は、杉菜が子孫を増やすための胞子をばらまくための茎なので、ある意味この例えは当たっている。
 でも、土筆や杉菜にオスとメスの区別は無いのだが…
 
 さて、子どもたちが「杉菜のチンチン狩り」の冒険旅行に出かけたのは、仲間の一人(あるいは私だったかもしれない)が、土筆は食べることもできるという情報を、どこからか仕入れてきた時である。

 「杉菜のチンチンは食べられるのか…」
 「いったい、どんな味なのか?」

 好奇心いっぱいで、子どもたちは土筆の群生している場所を探して回った。
 そして横河川という小さな川の土手に、土筆のいっぱい生えている場所を見つけ、みんなどっさりと摘んで家に帰った。

 家では、土筆の節についているはかまは食べられないということを教わって、弟、じいちゃん、ばあちゃんと一緒に、一本一本、丁寧にはかまを取り去った。

 はかまをを取り去ってすっきりした土筆は、母ちゃんによって卵とじにされた。
 恐る恐る口にした「杉菜のチンチン」は、なんだか優しい味だった。

 不思議なものだ。
 友達と土筆を探し回っている時の幸せな感覚…
 夢中で土筆を摘んでいるときの幸せな感覚…
 土筆の味をあれこれ想像しながらはかまを取っている時の幸せな感覚を…

 もうあれから何十年も経ったのに、私の心は、未だにそうした幸せの感覚をしっかりと記憶している。

 思えば、子どもの頃は、一円もお金をかけずに、いっぱい幸せの感覚を自分の中に呼び込むことができた。

 なんだか大人になってからは、お金をかけないと、なかなか幸せの感覚を味わえなくなってしまったような気がする。


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 丸い頭の先で空をツンツンと突くようにして群れている土筆(つくし)の姿は、なんともユーモラスです。
 ですから、土筆を詠んだ俳句にも、ユーモラスな句が多いようです。

  田鼠の穴からぬつと土筆かな (小林一茶)

  アフリカの太鼓打ちたし土筆野へ (凡茶)

 また、私などは、土筆の愛らしさの奥に、ほんのちょっぴりエロスも感じます。

  戦前の恋話聞き土筆むく (凡茶)

  思ひ出し笑ひ止まらぬ土筆摘み (凡茶)

 ただ、胞子を放って先っぽがほころんでしまい、枯れかけている土筆には「あはれ」を感じます。

  つくづくしほうけては日の影ほそし (黒柳召波)

 さて、次の几董の句に登場する土筆は、先っぽの硬い若い土筆でしょうか。
 それとも、先っぽのほうけた古い土筆でしょうか。
 それによって、随分と句の印象が変わると思います。

 そんな読み手に味わい方を委ねるような曖昧さが、俳句の面白さと言えるのではないでしょうか。

  道の記に仮の栞やつくづくし (高井几董)
      栞=しおり。



≪おすすめ・俳句の本≫

俳句の宇宙 長谷川櫂著
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■ 俳句は深くて、面白いなあ… 心からそう思えた本でした!


 最も私の心をとらえたのは第四章「間について」
 この章を読み、俳句の「切れ」を「間」と捉え、その「間」をじっくり味わおうとするようになってから、既に目にしていた名句が、それまでとは違って見えてくるようになりました。

 また、第七章「宇宙について」も、面白くてあっという間に読んでしまいました。
 この章で、「造化」というものに関する著者の考え方を読んでから、芭蕉の時代の句に接する際は、その句が生み出される場としての「造化」というものを読み取ってみようと意識するようになりました。
 もちろん、私ごときが読み取ろうと思って読み取れるような浅いものではないのですが…

 とにかくこの本は、
 「自分が足を踏み入れた俳句の世界は、どこまでも深いんだなあ。そして、深みに潜れば潜るほど、新しい面白みに接することができるんだなあ… 」
 そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。



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posted by 凡茶 at 18:57 | Comment(0) | 春の季語(植物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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