囀(さえずり) (春の季語:動物)


     囀り 囀る さへづり

16春の季語・動物・囀り.jpg
        デジカメ写真


季語の意味・季語の解説
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 囀り(さえずり)とは、主に繁殖期の鳥の雄(オス)が発する音楽的な鳴き声のこと。

 ライバルの雄に自分の縄張りを知らせるため、あるいは、雌(メス)の気を引くために、地鳴き(平時の鳴き声)とは異なる美しい旋律を奏でる。

 多くの鳴禽類が春に繁殖期を迎えるので、囀りも春の季語となっている。
 雲雀(ヒバリ)のピーチュルや、鶯(ウグイス)のホーホケキョ、頬白(ホオジロ)の一筆啓上仕候(イッピツケイジョウツカマツリソウロウ)などの声が囀りである。


季語随想
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 森のはずれにコンビニエンスストアを見つけた。
 コンビニのベンチにかけて缶コーヒーで温まっていると、鳥たちの囀りが聞こえてくる。
 しばし心地よく聞き入った。

 しばらくすると、カーステレオの大音響を伴って、一台の車が乗りつけた。
 美しい囀りをかき消すその耳障りな車には、若いカップルが乗っている。
 やがて運転席の青年は車窓を開け、なんのためらいもなく、吸い殻入れの中身をどっさりとコンクリートの上に捨てた。

 二十歳そこそこの青年だ。
 しかし、おそらく数百万円はする高級車に乗っている。

 親に買い与えられたものだろうか?
 それとも、商才に長けた青年なのだろうか?
 着ているスーツも高級品だ。

 日本が格差社会になっていく過程で、多くの格差容認論者が、「能力のある者に富が集中するのは当たり前だ」という言説を放った。
 その考え方には賛否両論があるだろうが、少なくとも次のようなことは言えるだろう。
 今の日本の格差社会は、モラルや思いやりの無い者にも富を享受する資格を与え、その富を拡大させることを是認している。

 私は青年にもがっかりしたが、お洒落な服を着た同乗の女性にもがっかりした。
 青年が窓から煙草の吸殻を外に撒き散らしても、注意するどころか、顔色一つ変えない。
 彼女はヘラヘラ笑いながら車を降り、コンビニの中へ入って行った。

 彼女は、いったい青年のどこに魅力を感じて付き合っているのだろう。
 財力か? それともイケメンとも言えそうな容貌か?

 最近、マスメディアが、マネーゲームの勝者や未成熟なイケメンをもてはやす傾向を強めているように思えてならない。
 そして、そうでない人物を安易に蔑むようなテレビ番組を何度も見せらている。

 そうした環境の中で育った彼女に、互いの精神を清らかに磨き合えるような恋をしなさいと言ったところで、失笑されてしまうのかもしれない。

 さて、私を最もがっかりさせたのは、この二人の若者ではない。
 若者たちが去り、コンビニの店員さんに吸殻を掃除した方が良いと教えに行くまで、青年の行為の一部始終を、見て見ぬふりしていたこの私である。

 熱血漢だった若い時分なら、「君、今捨てたゴミを拾いたまえ!」と一言注意していたはずだが、今はそういう勇気がすっかり萎んでしまった。
 もめごとには極力巻き込まれないよう、事勿れ主義で過ごしている。 
 
 青年、女性、己… 三人の愚か者を目の当たりにして、すっかり気持ちの沈んでしまった私は、人間から遠ざかりたいと、森の奥へと移動した。

 原稿の締め切りが次々と押し寄せる日々の中にやっと見つけた貴重な休日。
 鬱憤をためたままではもったいないから、気分を切り替えようと鳥たちの囀りに耳を澄ませた。
 
 森の中は、コンビニのベンチに居たときよりも、さらにたくさんの囀りが聞こえる。
 繰り返し鳴くもの、鳴き続けるもの、一度鳴いてそれきり鳴かぬもの… さまざまな鳥の声が心の中から鉛を取り除いてくれる。

 こわばった表情が、やわらかく緩んでいくのがわかった。

 鳥たちの囀りを聞いていてふと思った。
 吸殻を捨てた青年も、たまにはカーステレオをかけずにドライブをして、あの攻撃的な音響から解放されてみたらいいのにと。

 そして、車を止めた先で自分が鳥たちの声に包まれているのに気づき、そこから優しさみたいなものを感じ取ってくれればいいのにと。

 一瞬でも鳥たちの声に癒されれば、自分を生かしてくれている地球に対し、あのような思いやりのない行為は出来なくなるのではないか。

 一方、私は、傍若無人な若者をその場で一喝できるほどの熱さと勇気はもう失った。
 しかし、囀りに包まれているうちに、少し前向きな発想をできるようになった。

 鳥たちの囀りを聞いて、優しく清らかに笑うことのできる、そんな若者を育む努力は、こんな私でも、まだしていけるのではないかと。

 ホットコーヒーでも飲みながら、この囀りの中で、もうしばらく己のなすべきことを考えてみたいと思った。
 一旦さっき逃げ出してきたコンビニに戻り、缶コーヒーを買って、再び森の中へ戻った。

 森とコンビニを往復する途中でも、鳥たちは惜しげなく私のために囀ってくれた。


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 私の親友に、中学校で国語の先生をしていた人がいます。
 ある日、彼は、「教科書に載っている俳句の中で、どの句が一番好きですか。」と、生徒達に質問してみました。
 すると、次の一句に生徒の人気が集中したそうです。

  囀をこぼさじと抱く大樹かな (星野立子)

 生徒たちは、この俳句を読んで、心の弾むような感じを覚えたのでしょう。
 そう、春の訪れを告げる鳥の囀り(さえずり)は、冬の間は縮こまっていた人々の心を、一気に弾ませます。

 ですから、囀りの中で見たものは、普段はなんとも思わないようなものであっても、俳人の心にささやかな喜びを芽生えさせます。

  囀るや蔵も障子も木々の影 (松木淡々)

  囀りや母校まだある古き地図 (凡茶)

 また、春到来の象徴とも言うべき鳥の囀りは、俳句に託して希望を表現するのにぴったりの季語と言えるでしょう。

  囀りやノートに育つ未来都市 (凡茶)


この鳥の名前、ご存知ですか?
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 今回、この「囀り」の記事を書くにあたり、使えそうな写真を探していたら、古いSDカードから次のようなものを見つけました。

16春の季語・動物・囀り(鳥@).jpg
        デジカメ写真

16春の季語・動物・囀り(鳥A).jpg
        デジカメ写真


 以前に、長野県の霧ヶ峰高原で撮影した鳥の写真なのですが、その名前がわかりません。
 模様などからして、雲雀(ひばり)かなとは思っているのですが…

 もし、この鳥の名前がおわかりの方がいましたら、コメント等で教えていただけると幸いです。(凡茶)



≪おすすめ・俳句の本≫

俳人にお薦めの国語大辞典
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 俳句を続けていると、一家に一冊は大きな国語辞典を置きたくなるもの。ここでは、私も愛用しているお薦めの国語大辞典を紹介します。

@ 言泉―国語大辞典
■ 旧仮名遣いの俳人に便利な一冊!
 単語を調べると、「旧仮名遣い」や、「文語の場合の活用」などが添えられており、とても便利です。
 例えば、「おわる(終わる)」の語には、「をはる」という旧仮名遣いが添えられています。また、≪自ラ五(四)≫という表現で、この動詞が口語ではラ行五段活用、文語ではラ行四段活用の自動詞であることを示してくれています。

A 講談社カラー版日本語大辞典(第二版)
■ 豊富なカラー写真が役に立ちます!
 

 季語の写真はカラーの大歳時記で見られますが、無季の物(雑の詞)の写真は見られません。
 無季の物(雑の詞)の写真を参考にしたい時に、役立つ一冊です。
 


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posted by 凡茶 at 06:23 | Comment(0) | 春の季語(動物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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