糸蜻蛉(いととんぼ) (夏の季語:動物)

     灯心蜻蛉(とうしんとんぼ) とうすみ とうすみ蜻蛉

糸蜻蛉
26夏の季語・動物-糸蜻蛉.jpg
        デジカメ写真


季語の意味・季語の解説
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 糸蜻蛉(イトトンボ)は糸のように細い蜻蛉(トンボ)の総称。
 「豆娘」の字をあてることもあるが、俳句ではあまり見ない気がする。

 灯油を浸して火をともす、行灯のひも状の芯に似ているので、灯心蜻蛉(とうしんとんぼ)、とうすみ(=灯心のこと))とも呼ばれる。
 こちらの語を用いた俳句は多い。

 様々な種類があり、赤いもの、黄色のもの、瑠璃色をしたもののほか、上の写真のような地味な色のものもいる。

 俳句において蜻蛉は秋の季語とされるが、糸蜻蛉は初夏の頃から沼地などに発生するため、夏の季語とされる。

 大空をすいすい泳ぐ一般の蜻蛉とは異なり、水辺をか弱げに飛んでは、すぐにどこかに止まって休む。
 その際には、翅をたたんで立てて休むことが多い。


季語随想
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 インターネットを始めた頃、このおじさんに果たして使いこなせるものかと心配したが、慣れてくると実に面白い。

 日本中、世界中から情報を仕入れ、そして日本中、世界中に自分の創作を発信できる。
 実に便利で楽しい。

 しかし、一方で、目にしたくないものまで目にして、心を痛めてしまうこともある。

 インターネットでの発言は匿名で行われるから、憎悪、侮蔑、差別の言葉がたやすく発せられ、ネット上に無数に散らばる。
 そして、そのような言葉に接した無防備な若者が、憎悪、侮蔑、差別の感情を疑いもなく吸収し、さらにそれを拡散していく。

 こうした状況を目にすると、日本の、世界の行く末が本当に心配になる。

 子どもの頃、動きの緩慢な糸蜻蛉を捕まえた記憶のある人は多いだろう。
 そして、翅をむしるなどの酷いことを、罪悪感も無くしてしまったことのある人もいるだろう。

 しかし、そうした子どもも、やがて大人になれば、か弱げに飛ぶ糸蜻蛉を慈しむようになる。
 静かに翅を休めるか細い体を見て、安らいだ気持ちになることができる。

 そんな、精神の成熟した大人にとっては、インターネットは社会と文化をよりよく発達させる非常に便利なツールとなる。

 一方、無邪気な残虐性が残る子どもにとってはどうだろうか。
 無邪気な残虐性の残っている未成熟な若者が、実社会から隔絶されたインターネット空間で、憎しみ、蔑みの念のこもった情報に接し続けたら、どのようなことになるのだろうか。

 浮かんでは休み、休んでは浮かぶ糸蜻蛉を見ながら、そんなことを考えている。


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 つまむと壊れてしまいそうな薄い翅、華奢な体。
 捕まえようとすれば、すぐにでも捕まえられそうな、静かで弱弱しい飛び方。

 糸蜻蛉の持つそんなイメージを一語に集約するとすれば、それは「か細さ」ということになると思います。

 糸蜻蛉を季語に俳句に詠むときは、当然、そのか細さを意識することになります。

 次の二つの俳句のうち、一句目はか細さをストレートに慈しむような句に仕上げました。
 二句目は、あえて溌剌として力強いものと取り合わせることで、か細さを強調するように詠みました。

  昨日見し糸蜻蛉かも道祖神 (凡茶)

  腿太き女子アナ山へ糸蜻蛉 (凡茶)

 そして、次の句は、糸蜻蛉の静かな飛翔の背後に、緩やかな時間の流れを感じ取って呼んだものです。
 静かさを湛えた季語は、俳句の得意とする「瞬間」だけではなく、「幅のある時間」を表現するのにも適しています。

  草川の時折放す糸蜻蛉 (凡茶)



≪おすすめの本≫

にんげんだもの 相田みつを
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■ 厳選された言葉の力に触れ、たちまち目頭が熱くなりました。


 20年以上前になると思いますが、書店でなにげなくこの本を手に取り、最初の数ページを読んでみた時の感動を今も忘れていません。
 たちまち心が震え、目頭が熱くなり、その場で感涙をこぼしそうになったので、あわててレジに向かったことを覚えています。

 この本は俳句の本ではなく、書の本ですが、掲載されている数々の作品は無駄のない厳選された言葉で読み手の心を打つ短詩であり、俳句を創る上で大いに参考になります。
 まだ、読んだことのない俳句作者には、ぜひとも読んでいただきたいと思います。

 近頃のインターネットには憎悪や侮蔑の感情から生み出された言葉が氾濫しており、それが若者たちの心にどのような影響を与えているのか、今後が心配でなりません。
 私は、憎しみや蔑みの言葉ばかりに触れ心の荒んでしまった若者たちに、命のこもった本物の言葉に接してもらいたいという思いからも、相田みつをさんの本を紹介することにしました。

 以下に、『にんげんだもの』以外の本、および、『にんげんだもの』も含んだ相田みつをさんの作品集も紹介しておきます。


一生感動 一生青春

雨の日には…

しあわせはいつも

じぶんの花を

相田みつを作品集







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posted by 凡茶 at 18:04 | Comment(0) | 夏の季語(動物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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