狗尾草・犬ころ草(えのころぐさ・ゑのころぐさ)
狗子草・犬子草(えのこぐさ・ゑのこぐさ)
紫狗尾 金狗尾 浜狗尾
ねこじゃらし(狗尾草:えのころぐさ)

デジカメ写真
季語の意味・季語の解説
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ふさふさした花穂(かすい)を猫の前で揺らしてやると、獲物と間違えて、手を出してきてかわいらしい。
そのため、ねこじゃらしの俗称がつけられている。
正しい呼称は「エノコログサ」であるが、これは、花穂が犬(狗)の尾に似ていることに由来する。
つまり、「犬っころ草」が転じてエノコログサ(狗尾草)、エノコグサ(犬子草)となった。
道端、空き地など、身の回りのどんな場所にでも生え、なじみ深い。
穂の出始めは緑色をしているが、秋も深まると色づき、ワインレッドになるもの(紫狗尾:ムラサキエノコロ)や黄金色になるもの(金狗尾:キンエノコロ)もある。
また、海岸付近に生える浜狗尾(ハマエノコロ)は、内陸のエノコログサよりも穂が短い。
この季語を旧仮名遣いの平仮名で俳句に用いる場合は、ねこじやらし、ゑのころぐさ・ゑのこぐさと表記する。
季語随想
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気が弱いよりは、気が強い方がいいな。
ただ、気の強さが他人に向くようだったら、気が弱いままでいいね。
気の強さが、他人じゃなくて、自分に向く人は立派です。
でも、そんな立派な人は、上手に自分を許してやれるようにならないと、疲れちゃうよね。
疲れてきそうになったら、路傍のねこじゃらしを一本引きぬいて、
高い高い秋の空を撫でてみよう。
疲れてきそうになったら、まるまる太ったねこじゃらしを一本引きぬいて、
高い高い秋の空をくすぐってみよう。
月曜の空撫でてみるねこじやらし (凡茶)
季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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工場や商店の跡地、過疎地の路傍などにねこじゃらし(狗尾草:えのころぐさ)が群れているのを見つけると、なんとなく寂しさを覚えます。
俳句においても、ねこじゃらしの句にはどことなく「あはれ」があります。
犬の塚狗子草など生えぬべし (正岡子規)
狗子草=えのこぐさ。
ただ、ねこじゃらしのふさふさとし花穂は、やはり「おかしみ」があります。
そのため俳句には、ねこじゃらしを親しみをこめてからかうように、あるいは可愛がるよう詠んだ作品が多く見られます。
いくつか見ていきましょう。
香にふれよ菊のあたりのゑの子ぐさ (加藤暁台)
この句の主役は、高貴な菊ではありません。
言うまでもなく卑近なゑの子ぐさ(ねこじゃらし)です。
女郎花ゑのころ草になぶらるる (野童)
この句では、ゑのころ草(ねこじゃらし)はクセのある脇役となり、主役の女郎花(おみなえし)をよく引き立てています。
よい秋や犬ころ草もころころと (小林一茶)
一茶の句は、常に小動物や草花への愛情にあふれています。
最後に現代の俳句を二句。
七草にもれて尾をふる猫じやらし (富安風生)
月曜の空撫でてみるねこじやらし (凡茶)
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さて、俳句には、読者の心に響く美しい形というものがいくつか存在します。
例えば、次の名句は、いずれも中七の後ろを「けり」で切り、座五に名詞を据える形をしています。
●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)
また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。
●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)
筆者(凡茶)も、名句の鑑賞を通じて、このような美しい俳句の形を使いこなせるようになることで、次のような自信作を詠むことができました。
●糸取りの祖母逝きにけり雪解雨(凡茶)
●露の玉工場ドスンと始まりぬ(凡茶)
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俳句がうまくなる100の発想法 ひらのこぼ著
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「裏返してみる」「動物の顔を詠む」「ドラマを仕立てる」「天気予報をする」「強引に断定する」「名づけてしまう」…
どうですか?
目次の一部を眺めただけで、ハッと気付かされたような気になりませんでしたか?
長い間俳句をやっているいと、「若い頃にも似たような俳句を作ったなあ…」と頻繁に感じるようになります。
私もずっとそのような状態から抜け出せないでいましたが、この本と出合うことで、それまでの自分とは違った視点で、新鮮な俳句が詠めるようになってきたと感じています。
俳句作者として10年ほど若返ることができたような、そんな気持ちになっています。
追記:
著者のひらのこぼ氏は、他にも興味深い本をいくつか書いておられるので、以下に紹介しておきます。
俳句がどんどん湧いてくる100の発想法
俳句発想法 100の季語
俳句名人になりきり100の発想法
季語めぐり 〜俳句歳時記〜 トップページへ
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