水洟(みずばな) (冬の季語:生活)

     水つ洟(みずっぱな) はなみず(洟水・鼻水)

44冬の季語・生活・水洟【イラスト】.jpg
        パソコン絵画


● 季語の意味・季語の解説

 冬は冷たく乾燥した大気から鼻・呼吸器系を守るために鼻水の分泌量が増える。
 ゆえに、水洟(みずばな)が垂れやすくなる。

 子どもの水洟は愛らしい。
 だから次のような俳句が生まれる。

  帰る母子の水洟を跼み拭く (柴田白葉女)
      跼み=「かがみ」と読む。

 一方、大人の水洟は滑稽である。
 その滑稽なものを、季語として積極的に詠んできた俳句という文芸には、今さらながら良い意味での野太さを感じる。

 なお、昔はタンパク質が欠乏していたため、いわゆる「青っ洟」(あおっぱな)を垂らしている者も多かったが、最近は減ってきた。

  水洟の水色膝に落つ故郷 (永田耕衣)


● 季語ばなし

 星々を結びあわせ、夜空いっぱいに星座を描いた昔の人たちの創造力は、やっぱりすごい…

 そんなことを思いながら、私は冬の星空を眺めていた。
 すると、脇の方でズズズと洟(はな)をすする音がする。

 見ると、少年時代の私が、青っ洟を垂らしながら、じっと夜空を見つめていた。
 もう何十年も昔のいがぐり頭の私が、星々が賑やかに瞬く南の空を見上げ、なにか夢中になって考えている。

 「坊や、寒いのに、空など眺めて、いったい何をしているんだい?」
 私は彼に尋ねてみた。

 すると、少年時代の私はこう答えた。
 「今、星たちを結びなおして、新しい星座を作っているんだ。」

 青っ洟の私は、シリウス、リゲル、カペラと言った明るい星を、もとの星座からほどいて自由にし、好きなように結びなおしては、新しい星座を生み出していた。

 なんだか彼のことが、すごく羨ましく思えた。

 「楽しそうだね、坊や。」

 「うん! おじさんもやってみなよ。」

  自己流の星座を結ぶ水つ洟 (凡茶)


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 水洟(みずばな)という季語は、実際に厳寒の中に身を置いているかような臨場感を、俳句の読者に与えます。
 凍てつく寒さの中で人々の見せる様子が、生き生きと伝わってきます。 

  夜神楽や水洟拭ふ舞の袖 (高井几董)

  朝戸出や水洟はらふ片手網 (黄婦)
      朝戸出=あさとで。朝の外出のこと。

 また、「息白し」「悴む」など、寒さへの人体の反応を表わす他の季語と比べても、水洟は特に滑稽な味わいが強いので、読者をくすりと笑わせるような俳句を作ってみたくなります。

  水洟を貧乏神に見られけり (松本たかし)

  念力もぬけて水洟たらしけり (阿波野青畝)

  鼻長きキリスト吾は水洟かむ (山口誓子)

  自己流の星座を結ぶ水つ洟 (凡茶)

 ただ、この水洟という季語の面白い所は、コミカルな俳句を作るのに適していながら、どこか寂しさのある俳句も生まれやすい点にあると思います。

  水洟や鼻の先だけ暮れ残る (芥川龍之介)

  水洟や見舞うて帰る夕まぐれ (大野林火)

  水洟や我孫子の駅にたそがれて (石田波郷)

  水洟や波濤のほかは見るものなし (杉山岳陽)


≪おすすめ・俳句の本≫

俳句がうまくなる100の発想法 ひらのこぼ著
==============================
■ 似たような俳句ばかり作るようになってきたと感じたら、読むべき本です。


 この本の目次に並ぶタイトルから、ほんの一部を引っ張り出して並べてみます。

 「裏返してみる」「動物の顔を詠む」「ドラマを仕立てる」「天気予報をする」「強引に断定する」「名づけてしまう」…

 どうですか?
 目次の一部を眺めただけで、ハッと気付かされたような気になりませんでしたか?

 長い間俳句をやっているいと、「若い頃にも似たような俳句を作ったなあ…」と頻繁に感じるようになります。

 私もずっとそのような状態から抜け出せないでいましたが、この本と出合うことで、それまでの自分とは違った視点で、新鮮な俳句が詠めるようになってきたと感じています。

 俳句作者として10年ほど若返ることができたような、そんな気持ちになっています。

追記:
 著者のひらのこぼ氏は、他にも興味深い本をいくつか書いておられるので、以下に紹介しておきます。

俳句がどんどん湧いてくる100の発想法

俳句発想法 100の季語

俳句名人になりきり100の発想法




≪おすすめの本≫

にんげんだもの 相田みつを
==============================
■ 厳選された言葉の力に触れ、たちまち目頭が熱くなりました。


 20年以上前になると思いますが、書店でなにげなくこの本を手に取り、最初の数ページを読んでみた時の感動を今も忘れていません。
 たちまち心が震え、目頭が熱くなり、その場で感涙をこぼしそうになったので、あわててレジに向かったことを覚えています。

 この本は俳句の本ではなく、書の本ですが、掲載されている数々の作品は無駄のない厳選された言葉で読み手の心を打つ短詩であり、俳句を創る上で大いに参考になります。
 まだ、読んだことのない俳句作者には、ぜひとも読んでいただきたいと思います。

 近頃のインターネットには憎悪や侮蔑の感情から生み出された言葉が氾濫しており、それが若者たちの心にどのような影響を与えているのか、今後が心配でなりません。
 私は、憎しみや蔑みの言葉ばかりに触れ心の荒んでしまった若者たちに、命のこもった本物の言葉に接してもらいたいという思いからも、相田みつをさんの本を紹介することにしました。

 以下に、『にんげんだもの』以外の本、および、『にんげんだもの』も含んだ相田みつをさんの作品集も紹介しておきます。


一生感動 一生青春

雨の日には…

しあわせはいつも

じぶんの花を

相田みつを作品集







季語めぐり 〜俳句歳時記〜 トップページへ
posted by 凡茶 at 19:17 | Comment(0) | 冬の季語(生活) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント