俳句をやらない人でも知っている15の名句 +1

001俳句イラスト【古池や蛙飛こむ水のおと】.jpg
 俳句をやらない友人たちとの酒の席であったにもかかわらず、なぜか俳句の話で場が盛り上がってしまったことがあります。

 この時、知ってる俳句を銘々に挙げていくと言うゲームが始まり、私は、その俳句が正しいかどうか判断する審査員に祭り上げられました。

 ただ、俳句に全く興味の無い彼らがどんな俳句を挙げるか、たいへん興味深かったので、内心わくわくしながら、その場の成り行きを見守ることにしました。

 その結果、誰もがすぐに思い浮かぶ俳句、あるいは、誰かに言われると、「知ってる、知ってる」となる俳句が存在することがわかってきました。

 そこで私は、この日以降、俳句をやらない人に、知っている俳句はないかと尋ねてみるようになりました。

 そして、誰もがすぐに思い浮かぶ俳句5句、誰かに言われると「知ってる、知ってる」となる俳句10句、計15句を自分なりに拾い上げることができました。

 大人数にアンケートをとって、その結果を集計したわけではありませんから、私の選に異論をお持ちになる読者も多いことでしょうが、興味があったら、遊びに付き合う程度の気持ちでご覧になっていただけると幸いです。

 なお、15の俳句は、知っている人が多そうな順に、番号をつけて並べてあります(あくまで、私の感覚です)。
 

【 誰もがすぐに思い浮かぶ俳句 】

@ 古池や蛙飛こむ水のおと (松尾芭蕉)

 この俳句の知名度が圧倒的でした。日本人の宝とも言える一句ですね。

A 閑さや岩にしみ入蝉の声 (松尾芭蕉)

 知名度の高い俳句なのですが、「閑さ」を「しづけさ」として覚えてる知人が結構いました。正しくは「しづかさ」です。

B 柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺 (正岡子規)

 古都の秋の風情を詠んだ俳句ですが、ほんのり寂しさもにじんでいて、好きな句です。

C 目には青葉山ほとゝぎすはつ松魚 (山口素堂)

 初夏に初鰹が食卓にのぼれば、必ずと言っていいほど口をついて出る俳句です。
 と言うより、この俳句が初鰹の人気を不動のものにしたとも考えられます。

D 痩蛙まけるな一茶是に有 (小林一茶)

 「是に有」は「これにあり」と読みますが、「ここにあり」として覚えている人も多いようです。
 それにしても、誰もがすぐに思い浮かぶ俳句5句のうち、2句が蛙の俳句というのも面白いですね。


【 誰かに言われると「知ってる、知ってる」となる俳句 】

E 菜の花や月は東に日は西に (与謝蕪村)

 宇宙的なスケールを感じさせる名句中の名句です。
 私は毎年のように菜の花畑に出かけ、この俳句を超える一句をひねり出そうと頑張るのですが、相手が悪すぎます。

F 降る雪や明治は遠くなりにけり (中村草田男)

 明治100年の頃、すなわち昭和の中頃に至る所で引用されて、国民の心に焼きつきました。
 実際に明治の時代を知っている人たちは、昭和の時代にどのような感慨を持って、この俳句を口にしたのでしょうか…

G 夏草や兵共がゆめの跡 (松尾芭蕉)

 人間が自らの築き上げたものを滅ぼしてしまったら自然に帰るだけ… 私は『おくのほそ道』の俳句の中では、この句が一番好きです。

H 我と来て遊べや親のない雀 (小林一茶)

 一茶の句は現代人の感情にもストレートに響きます。
 同じ一茶の「雀の子そこのけそこのけ御馬が通る」も、割合多くの人が知っていました。

I 目出度さもちう位也おらが春 (小林一茶)

 「ちう位」は「中くらい」と読みます。念のため…
 いったいどれほどの日本人が、新年にこの俳句を口にしてきたことでしょう。

J 梅一輪一輪ほどの暖かさ (服部嵐雪)

 まだ寒い頃に、梅が健気に咲いているのを見ると、本当に愛おしくなりますよね。

K 是がまあつひの栖か雪五尺 (小林一茶)

 長年にわたり継母と遺産を争った一茶の境涯を知っていると、胸に迫る俳句です。
 ただ、多くの人は、努力して手に入れたマイホームについて語る時に、「これがまあ、ついの住み家か…」の部分だけを皮肉っぽく用いるようです。

L 雪の朝二の字二の字の下駄のあと (田捨女)

 今の歳時記にはあまり載っていないのですが、年配の方など、多くの知人がこの俳句を聞いたことがありました。

M 朝顔に釣瓶とられてもらひ水 (加賀千代女)

 この俳句については、理屈っぽさがあるということで、駄句と評価する記述もあちこちで見かけます。
 ゆえに、有名な俳句ではありますが、名句かと言われれば、意見の分かれるところでしょう。
 ただ、私は、女性らしい優しさが感じられ、嫌いではありません。
 作者の千代女は相当な美人であったと伝え聞きます。

N 春の海終日のたりのたりかな (与謝蕪村)

 団塊ジュニアくらいの知人たちが、特に多くこの俳句を知っていました。
 どうやら、彼らが学生だった頃の教科書に載っていたようです。
 ただ、いくつも俳句が載っていた中で、この句がとくに彼らの頭に焼きついたのは、「ひねもすのたりのたりかな」の部分の調べが、とても聞き心地が良いからだと思われます。

 さて、俳句をやらない人でも知っている名句を15句見てきましたが、いずれも平明でリズムが良く、心にすんなり浸みて来る俳句だと思います。

 そして、皆が表現したいと思っている(でもなかなか上手く表現できない)真実を、端的に示してくれている感じがします。

 これらの俳句は、これからも多くの日本人によって、後世に伝えられていくことでしょう。

【 おまけ 】

 ところで、もう一句、多くの人が知っている俳句だとして、挙げてくれたものがあります。
 それは次の一句です。

+1 松島やああ松島や松島や

 実はこの句、狂歌師の田原坊という人が作った「松嶋やさてまつしまや松嶋や」の「さて」が「ああ」に置き換わり、あたかも芭蕉が詠んだ句のように後世の人々に伝わってしまったものらしいのです。

 松島の絶景に圧倒され、ついに俳句を作れなかったという『おくのほそ道』のエピソードが、いつの間にか、「絶景を前に、芭蕉は感動のあまり、“松島やああ松島や松島や”と詠むよりほかなかった」という内容に、すげ替えられてしまったのでしょう。

 俳句をやらない多くの知人が、芭蕉の残した一句であると信じて疑わず、この句を挙げてくれました(笑)。


≪おすすめ 俳句の本・電子辞書≫

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posted by 凡茶 at 14:20 | Comment(3) | 特別記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
GruB Gott!
夏草や兵が夢の跡  勇敢な軍将そしてあとに続く兵士たちの時代を問わず日本ならず、戦いの力の限りの様が目に浮かぶ気持ちでした。私なりに映画のスクリーンの様で、子供のころから今なお、雄姿に憧れる、乙女心をかきたてます。数十年経っても、タイムスリップ出来る世界が作られるこのような句は、媚薬、以外の何物でもなく、この句に接せられた幸せを感じます
Posted by hananezumi at 2014年07月23日 23:58
とても面白い記事でした
Posted by   at 2014年08月03日 16:16
遅まきながら俳句を始めようと思う私に、気軽にどんどん作りなさい、のお言葉が背中を押してくれるような気がしました。
Posted by こずえ at 2015年01月23日 15:48