春近し・春隣 (冬の季語:時候)

     春隣(はるとなり) 春遠からず 春遠からじ

41冬の季語・時候・春近し=春隣.jpg
        デジカメ写真


● 季語の意味・季語の解説

 冬の終わりに、すぐそこまで来ている春を感じて用いる季語。

 「春待つ」という季語が、まだ少し遠くにある春を待ちわびる主観的な季語であるのに対し、「春近し」は間近に迫っている春を五感で捉えている。

  春近し雪にて拭ふ靴の泥 (沢木欣一)

 「春隣」ともなると、もうすぐそこに立春が来ているといったニュアンスが強まる。
 春を肌で感じることができ、心が弾む。

  車窓より瀬戸の島山春隣 (星野立子) 
 

● 季語随想

 「情けは人の為ならず」ってことわざの意味、ちゃんとわかってる?

 「親切ってのは、巡り巡っていつか自分に返って来るから、誰にでも親切にすることが、結局は自分のためになるもんだ」って意味だよ。

 わしらの世代はね、このことわざを聞くと、何か胸にジーンと響いてくるものがあるんだよ。

 でも、最近は、このことわざを誤解して用いる人が増えてきたんだってね。

 「人に親切にすることは、結局その人のためにはならないから、親切になんてしない方がいいよ」

 そんな意味で、このことわざを用いる人が多くなってきたんだってね。

 この誤用が増えてきた背景に、単なる国語力の低下以外のものがあることは間違いなかろう。

 日本の社会全体の価値観の変化が、このことわざを人々に誤用させているのは明らかだ。

 近年、わしは、そんな世の中の変化に、怒りを覚えるようになっていた。

 「情けは人の為ならず」ってことわざが正しい意味で使われる日本を、もう一度取り戻したくて、いろんなことを方々(ほうぼう)で書いてきた。

 ただね、最近、ふと気付いたことがあるんです…。

 怒りにまかせてものを書いている時、自分の顔がずいぶん怖い顔になっていることに。

 怒りの生み出した言葉は、同じ怒りを持つ者の心には、しばしば強く響くことがある。

 でも、そうでない人にとっては、とげとげしくて、どうにも近寄りがたいものなんだよね。

 今、2012年の春を目前にして、光の濃くなってきた窓の外の空を見て、もっと笑顔でものを書いていこうかなあ、そんな風に思うようになりました。

 書いているわしも、読んで下さる皆様も、ついつい顔がほころぶような、そんな文章を増やしていこうかなと。

 怒りのにじんだ言葉で、人の気持ちを引き付けようなんてさ、わざと敵を設定して、その敵を叩くことで支持者の共感を得ようとする、近頃の政治屋さんと同じだもの…

 ああ… いかん、いかん!
 また、怖い顔になって、政治への不満など書きはじめていた。

 もうすぐ春だ。
 今年の春は、ゆるく、やわらかく、のんびりと、ほがらかにものを書いて過ごしましょう。

  水色の字の決意貼る春隣 (凡茶)


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 春近し・春隣という季語の用い方について、むずかしく考える必要はありません。

 「ああ、春が近づいたなあ…」と感じた瞬間の景、事物をそのまま俳句に詠めばよいのです。

 ただし、「春近し」が冬の終わりに春の気配を感じ始めた時に用いるとよいのに対し、「春隣」は間近に迫った春の息づかいを、より生々しく感じている時に用いるのが適しているように思えます。

 その辺の使い分けを楽しめるようになると、俳句がますます面白くなるのではないでしょうか。

■ 「春近し」で詠んだ俳句

  雷木の減りつつもまた春近し (望月宋屋)
      雷木=すりこぎ。

  湖に春の近さの帆ありけり (松根東洋城)

  春近しそばかすの司書眼鏡替ふ (凡茶)

■ 「春隣」で詠んだ俳句

  叱られて目をつぶる猫春隣 (久保田万太郎)

  井戸水に杉の香まじる春隣 (福田甲子雄)

  踊子の入れ替はる闇春隣 (凡茶)

  薬屋に長話せり春隣 (凡茶)

 なお、「春遠からず」「春遠からじ」は、春の近づきを確信しながらも、「春近し」「春隣」より、少しだけ春が遠くにある印象を受けます。

■ 「春遠からず」「春遠からじ」で詠んだ俳句

  白き巨船きたれり春も遠からず (大野林火)
      巨船=ここでは「ふね」と読む。

  自転車で鮒来しよ春遠からじ (秋元不死男)



≪おすすめ・俳句の本≫

カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版
==============================
■ 写真・絵の豊富な大歳時記です!


 『カラー版 新日本大歳時記』は、かつて春・夏・秋・冬・新年の全5巻に分けて発売され、大ベストセラーとなった歳時記です。

 “愛蔵版”は、その内容が一冊にまとめられたもので、購入しやすい値段となりました。

 この歳時記は、季語の詳しい解説や古今の名句に加え、写真や絵も豊富に掲載されていて、俳句の勉強になるのはもちろんのこと、鑑賞していて飽きない芸術性の高い一冊でもあります。

 私は、愛蔵版が出る前の全5巻を持っているのですが、この歳時記のおかげで俳人としてスキルアップし、かつ、日本の風土と文化の素晴らしさを再確認することができました。
 この歳時記は、私の俳句生活におけるかけがえのないパートナーであり、大切な財産でもあります。


俳句がうまくなる100の発想法 ひらのこぼ著
==============================
■ 似たような俳句ばかり作るようになってきたと感じたら、読むべき本です。


 この本の目次に並ぶタイトルから、ほんの一部を引っ張り出して並べてみます。

 「裏返してみる」「動物の顔を詠む」「ドラマを仕立てる」「天気予報をする」「強引に断定する」「名づけてしまう」…

 どうですか?
 目次の一部を眺めただけで、ハッと気付かされたような気になりませんでしたか?

 長い間俳句をやっているいと、「若い頃にも似たような俳句を作ったなあ…」と頻繁に感じるようになります。

 私もずっとそのような状態から抜け出せないでいましたが、この本と出合うことで、それまでの自分とは違った視点で、新鮮な俳句が詠めるようになってきたと感じています。

 俳句作者として10年ほど若返ることができたような、そんな気持ちになっています。

追記:
 著者のひらのこぼ氏は、他にも興味深い本をいくつか書いておられるので、以下に紹介しておきます。

俳句がどんどん湧いてくる100の発想法

俳句発想法 100の季語

俳句名人になりきり100の発想法





季語めぐり 〜俳句歳時記〜 トップページへ

posted by 凡茶 at 14:04 | Comment(1) | 冬の季語(時候) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最近きずかれた事で考えさせられました。
俳句はたしなんでいませんがブログで自分の気持ちをぶつけてもぶつけられた方はたまりませんよね。
でも 同じ気持ちを持つ人にだけ伝わるのもいいかな?
なんて・・・・。
偶然開いた文字にコメント書きたくなりました。
Posted by 凡子 at 2013年01月31日 15:36