睡蓮(すいれん) (夏の季語:植物)

     未草(ひつじぐさ) スイレン

27夏の季語・植物・睡蓮(すいれん)・俳句添え.jpg
        デジカメ写真


● 季語の意味・季語の解説

 睡蓮(スイレン)は多年生の水草である。
 切れ込みのある楕円形の葉を水面に浮かべ、その間に蓮(ハス)に似た花を咲かせる。

 花は昼のさなかに開き、夕方になると閉じて、その後は睡ったようになる。
 ゆえに睡蓮という名がつけられた。

 分布域は広く、熱帯から温帯にかけての池沼に自生する。
 また、古代エジプトの壁画から、栽培の歴史も長いことが知られている。

  ナイル河の金の睡蓮ひらきけり (石原八束)

 睡蓮の花の色は、赤、黄、紫など様々であるが、そうしたカラフルなものは全て鑑賞用の外来種であり、日本に古くから自生するものは小ぶりな白い花を咲かせる。

 睡蓮の花言葉「純潔」がまさにふさわしい可憐な白い花である。

 この日本の白い睡蓮は未の刻(午後二時)頃に開くことから、未草(ひつじぐさ)と呼ばれる。

  山の池底なしと聞く未草 (稲畑汀子)


● 自句自解

 若い頃、「京鮓や雨を喜ぶ女の子」という俳句を雑誌に発表し、高名な先生方から厳しい評価をいただいたことがある。

 「雨を喜ぶ女の子」の中七・座五は良いが、「京鮓」(きょうずし)という季語の選択が甘いという指摘だったと記憶している。

 今振り返ればたしかにその通りであり、現在の私がこの句の批評を試みれば、その先生方と同じような評価を下すことになると思う。

 ただ、当時の私は打たれ弱い青二才だったので、そこそこにプライドが傷つき、しばらくの間自分の俳句に自信を持てなくなってしまった。

 そんなことがあってからしばらく経ったある日、私は睡蓮の咲く小さな池のほとりに来ていた。

 そこで、雨に叩かれる水面をゆっくり眺めているうちに、なにか「!」と閃くものがあったような気がした。

 “「京鮓や雨を喜ぶ女の子」の「京鮓」を、「睡蓮」という季語に置き換えてみたらどうだろう…?”

 こうして得られたのが次の一句である。

  睡蓮や雨を喜ぶ女の子 (凡茶)

 後日、結社誌にこれを投句すると、幸いにも高い評価を師からいただき、私のお気に入りの一句となった。

 この出来事があって以来、俳人たちが「俳句を作った」という表現のかわりに、「俳句を得た」という表現を用いる理由がよくわかった気がする。

 昔の人たちは、天地・万物を創造・化育する「造化」という力(存在)が、人々に詩歌や句を得させると考えたようだが、「作った!」という感触よりも、「得られた!」という感触の方が大きかった作品に、佳句は多いのかもしれない。


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 睡蓮の学名「ニンフエア」は、「水辺の女神」という意味だそうです。
 なるほど、睡蓮の花には、女神と呼ばれるにふさわしい存在感があります。

 以下の俳句は、そんな睡蓮の「存在感」を詠んだ名句だと思います。

  遠く咲く睡蓮ひとつ去りがたし (成瀬櫻桃子)

  睡蓮のしばらく人を絶ちて紅し (深見けん二)

  睡蓮の花までの距離思ひをり (桶笠文)

 この睡蓮という花は雨との相性が良いようです。

 紫陽花(あじさい)も雨との相性の良い季語ですが、睡蓮を季語に詠んだ俳句は、紫陽花の句以上に、雨の一粒一粒をはっきりと読者に感じさせてくれます。

  睡蓮のすき間の水に雨の文 (富安風生)
      文=「あや」と読む。水面に広がる波紋のこと。

  睡蓮の源平咲きに日照雨かな (藤田湘子)
      源平咲き=紅白の花が咲いている状態。赤が平氏、白が源氏の旗の色。
      日照雨=そばへ(そばえ)と読む。

  睡蓮や雨を喜ぶ女の子 (凡茶)


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posted by 凡茶 at 05:28 | Comment(0) | 夏の季語(植物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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