秋深し (秋の季語:時候)

     秋深む  深秋(しんしゅう)
     秋更く(あきふく)
     秋闌(あきたけなわ) 秋闌く(あきたく)

31秋の季語・時候・秋深し.JPG
        デジカメ写真


● 季語の意味・季語の解説

 台風が過ぎ、秋雨も上がり、秋も半ばを過ぎる頃になると、空は澄み渡り、野山は赤や黄に彩られる。

 多くの農作物が収穫期を迎えて食卓も華やぎ、まさに秋闌(あきたけなわ)となる。

 しかし、この季節は、地に注ぐ光が弱まり、冬に向かって万物が寂れていく季節でもある。折にふれ、淋しさ、もの悲しさで胸が満たされる。

 秋深しは、美しい秋、実りの秋の中で徐々に生々しさを増す、寂寥感、喪失感、孤独感、虚無感のようなものを表現する時に用いる季語である。

  疲れては睡り覚めては秋深し (岡本眸)


● 自句自解

 次は筆者の若い頃の句であるが、あまり良い評価は得られまいと思いつつ発表した作品である。

  追ふ蝶も追はるる蝶も秋深き (凡茶)

 この俳句、「秋深き」という強い季語があるから、「蝶」は春の季語としては働かない。

 しかし、読者には、秋と春の季語が混在する季違いの句として低く評価されてしまうかもしれないと心配した。

 また、句末を「秋深し」と終止形にして言い切らず、「秋深き」と連体形にして余情を持たせようとしたことも、かえって技巧が過ぎると思われるのではないかと憂惧した。

 考えすぎであった。

 この句、多くの先輩方から高い評価を頂いた。

 中には、この句には「すさまじさ」があると、筆者自身が曖昧にしかわかっていなかった句の取り所を、端的に言い表して下さった方もいた。

 嬉しかったと同時に、鑑賞者としての俳句仲間の力量(当時の私など及びもつかない先輩達の力量)を思い知らされ、それを信頼していなかった己の生意気さを随分と恥じたものだ。


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 秋深しという季語は、寂寥感、喪失感、孤独感、虚無感といった気分をもともと含んでいます。

 ゆえに、これを用いる時には、俳句の中に感情を表わす言葉を入れる必要はありません。

 俳句作者の心に、寂しさ、もの悲しさ、切なさ等の感情を抱かせた景観・状況・事物をそのまま詠めば良いのです。

  秋深きはるかに下は山田かな (荻人)

  彼一語我一語秋深みかも (高浜虚子)

  秋深し日暮れの畑の唐辛子 (永井龍男)  

  秋深し石に還りし石仏 (福田蓼汀)
      還りし=かえりし

 次は松尾芭蕉の名句です。 

  秋深き隣は何をする人ぞ (松尾芭蕉)

 近頃は「隣は何をする人ぞ」というこの句の中七・座五だけを取り上げて、近所づきあいが希薄化した現代社会を言い表したいような時に用いたりします。

 しかし、秋深しという語の醸す情趣をきちんと理解してこの句を読めば、芭蕉が隣人の気配を感じながら、淋しさ、心細さ、虚しさ、さらには人恋しさで胸を満たしていたことが痛いほどに伝わってきます。



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 さて、俳句には、読者の心に響く美しい形というものがいくつか存在します。

 例えば、次の名句は、いずれも中七の後ろを「けり」で切り、座五に名詞を据える形をしています。

  ●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
  ●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)

 また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。 

  ●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
  ●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)

 筆者(凡茶)も、名句の鑑賞を通じて、このような美しい俳句の形を使いこなせるようになることで、次のような自信作を詠むことができました。

  ●糸取りの祖母逝きにけり雪解雨(凡茶)
  ●露の玉工場ドスンと始まりぬ(凡茶)

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posted by 凡茶 at 19:50 | Comment(0) | 秋の季語(時候) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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