春の季語<天文> 〜目次ページ〜

朧月(おぼろ月)
12春の季語・天文・朧月(おぼろづき)【イラスト】.jpg
        パソコン絵画

春は水蒸気が多いため、夜には月も星も灯も、ぼんやり滲んで見える。このような朦朧とした状態を朧(おぼろ)という。朧、朧月とも、春の季語。


掲載季語(50音順)

<あ行の季語>
淡雪
朧(おぼろ),朧月

<か行の季語>
東風(こち)

<は行の季語>
春の虹

<や行の季語>
雪の果,涅槃雪



≪おすすめ・俳句の本≫

俳句の宇宙 長谷川櫂著
==============================
■ 俳句は深くて、面白いなあ… 心からそう思えた本でした!


 最も私の心をとらえたのは第四章「間について」
 この章を読み、俳句の「切れ」を「間」と捉え、その「間」をじっくり味わおうとするようになってから、既に目にしていた名句が、それまでとは違って見えてくるようになりました。

 また、第七章「宇宙について」も、面白くてあっという間に読んでしまいました。
 この章で、「造化」というものに関する著者の考え方を読んでから、芭蕉の時代の句に接する際は、その句が生み出される場としての「造化」というものを読み取ってみようと意識するようになりました。
 もちろん、私ごときが読み取ろうと思って読み取れるような浅いものではないのですが…

 とにかくこの本は、
 「自分が足を踏み入れた俳句の世界は、どこまでも深いんだなあ。そして、深みに潜れば潜るほど、新しい面白みに接することができるんだなあ… 」
 そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。



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春の虹 (春の季語:天文)

     はるのにじ 初虹

ヴェネツィアで描いた春の虹
12春の季語・天文・春の虹.jpg
        絵画をスキャナーにて取り込み


● 季語の意味・季語の解説

 春の空に架かる虹を春の虹と言う。
 単に虹と言えば夏の季語であるが、春の虹は夏の虹よりも淡く、儚く消える。

  うすかりし春の虹なり消えにけり (五十嵐播水)

 春の虹のうち、その年に初めて見た虹を、特に初虹と言う。

  初虹や雨にぬれたる畑のもの (浅岡秋甫)


● 季語随想

 私は希望という言葉が好きですが、春の虹は希望の象徴であるように思えてなりません。

 ときに人は、希望を抱かなくなることで、日々の暮らしを楽にすることができます。

 しかし、やはり希望こそが、死ぬまで人が成長し続けていくための原動力になると私は考えます。

 思いがけず春の虹を見つけ、自分の体の中で涸れはじめていた希望を、少しずつ取り戻しているところです。

 春の虹を詠んだ拙句を二つ。

  物売りの子らの指差す春の虹 (凡茶)

  船頭のはにかみて指す春の虹 (凡茶)


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 春の思いがけない時期に虹を見つけると、重く沈んだ心は軽やかになり、せわしく落ち着かなかった心は安らかになります。
 春の虹を見つけた喜びを俳句に込めてみましょう。

  武蔵野の森より森へ春の虹 (鈴木花蓑)

  野の虹と春田の虹と空に合ふ (水原秋櫻子)

  春の虹牛はしめりし鼻をあぐ (上野燎)

 また、淡く滲んだ春の虹には、夏の虹にはないあでやかさがあるため、俳人は優艶な趣のある俳句を読みたくなります。
 私たちも積極的に作ってみましょう。

  春の虹うつれりくらき水の上 (柴田白葉女)

  吐息とどく近さに春の虹立てり (岸本マチ子)

  春の虹人悼むにも身を飾り (林十九楼)
      悼む=いたむ。

  倭の血引くヴェニスの売り子春の虹 (凡茶)

 ただ、やはり春の虹は儚く消えてしまうため、淋しい趣のある俳句も多いようです。

  ことばもて子に距てらる春の虹 (柴田白葉女)

  遺跡みな滅びの証し春の虹 (權守勝一)


≪おすすめ・俳句の本≫

新版20週俳句入門 藤田湘子著
==============================
■ どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになる本です

 昭和63年に出された旧版『20週俳句入門』があまりにも優れた俳句の指導書であったため、平成22年に改めて出版されたのが、この『新版20週俳句入門』です。

 この本は、
   〔型・その1〕 季語(名詞)や/中七/名詞
   〔型・その2〕 上五/〜や/季語(名詞)
   〔型・その3〕 上五/中七/季語(名詞)かな
   〔型・その4〕 季語/中七/動詞+けり

 の4つの型を、俳句を上達させる基本の型として、徹底的に読者に指導してくれます。

 これらをしっかり身につけると、どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになるでしょう。

 王道の俳句を目指す人も、型にとらわれない斬新な俳句を目指す人も、一度は読んでおきたい名著です。





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東風(こち) (春の季語:天文)


12春の季語・天文・東風.jpg
朝東風(あさごち)
夕東風(ゆうごち)
強東風(つよごち)
荒東風(あらごち)
梅東風(うめごち)
桜東風(さくらごち)
雲雀東風(ひばりごち)
鰆東風(さわらごち)
いなだ東風(いなだごち)



● 季語の意味・季語の解説

 冬の間、日本へ寒風を送り続けたシベリアの寒気団が衰えると、太平洋側から東よりの風が吹くようになる。
 これが東風(こち)である。

 暖かさとやわらかさを感じさせる「春風」と異なり、「東風」という季語には、きりりとした冷たさの残る感じがある。

  岩つかむ鳶もよろめき東風強し (富安風生)
      鳶=とび。

 しかしながら、東風は春を告げる風であり、東風の光を感じると冬の塞いだ気分が晴れて明るくなる。

  嘶きてはからだひからせ東風の馬 (大野林火)
      嘶き=いななき。

 東風は色々な語と結び付けやすく、朝東風、夕東風、強東風、荒東風などの形で用いられる。

  夕東風のともしゆく灯のひとつづつ (木下夕爾)

 梅をほころばせる東風なら梅東風、桜なら桜東風、雲雀(ひばり)が揚がる頃なら雲雀東風などと表現する。

  船の名の釣宿ばかり雲雀東風 (古賀まり子)

 また、鰆(さわら)の漁期を告げる東風には鰆東風、イナダ(ブリの幼魚)ならいなだ東風などという呼び方も与えられている。

  トンボロをゆく自転車や鰆東風 (凡茶)


● 季語随想

 俳句をやっていると、昔の人々は、自然と対話しがら生きていたのだなあと、しばしば思わされます。

 かつて人々は、北風が東風に変わってくると、それを敏感に感じ取り、春の生活の準備を始めました。

 例えば、瀬戸内の漁師は、東よりの風を察知すると鰆東風と呼び、鰆の漁期を知りました。

 昔の人々にとって、現代の俳句歳時記に述べられているような内容は、自然とともに生きるための知識であったのだと思われます。

 一方、現代社会の市民は、自然と対話しながら行動を決めていくというわけにはなかなかいきません。

 現代社会は様々な約束の上に成り立っていますから、春が来ようと、冬が居座ろうと、決められた日には決められた行動をとることを要求されます。

 雨が降ろうと、雪が降ろうと、いつまでも聞き入っていたい美声で鶯が鳴こうと、決められた時間には、出勤、通学など、決められた行動をとることを要求されます。

 現代社会は、時間、場所、行動を結びつける様々な約束で成り立っているため、自然の変化より、時計の針の動きの方が、人々の生活に大きな拘束力を持つのです。

 私は、教員という立場で、社会生活のルールを子供たちに教えることをしてきましたので、時計の針の動きを重視する現代社会のルールを否定したり、嘆いたりする気は毛頭ありません。

 現代社会に生きる以上は、現代社会で要求される生活リズムを守るのは当然のことです。

 ただ、時計の針に動かされ続けているうちに、人間は自分の身の回りの変化を感じ取る能力を退化させてしまうのではないかという不安が少しあります。

 私も俳句を始める前は、東風、北風、南風(はえ)などと、風向きを意識することなどほとんどありませんでした。


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 東風(こち)に吹かれると、「肌」は冷たさを感じます。
 しかし、「気持ち」は春の訪れという喜びで満たされます。

 ゆえに、東風という季語を俳句に用いると、強さ・荒さの中に、明るさ・光を感じとることのできる一句が出来上がります。

  のうれんに東風吹いせの出店哉 (与謝蕪村)
      (暖簾に東風吹く伊勢の出店かな)

  川の香のほのかの東風の渡りけり (炭太祇)

  東風吹くや耳現はるゝうなゐ髪 (杉田久女)
      うなゐ髪=うなじのあたりで結び、垂らした髪。

 なお、東風は太平洋が産む強い風ですから、東風を用いた俳句に登場する海は、特に断らなくても、波の荒い海ということになります。
 俳句を作る側も、鑑賞する側も、穏やかな海ではなく、猛々しい海をイメージする必要があります。

  夕東風や海の船ゐる隅田川 (水原秋櫻子)

  トンボロをゆく自転車や鰆東風 (凡茶)


≪おすすめ・俳句の本≫

俳句の宇宙 長谷川櫂著
==============================
■ 俳句は深くて、面白いなあ… 心からそう思えた本でした!


 最も私の心をとらえたのは第四章「間について」
 この章を読み、俳句の「切れ」を「間」と捉え、その「間」をじっくり味わおうとするようになってから、既に目にしていた名句が、それまでとは違って見えてくるようになりました。

 また、第七章「宇宙について」も、面白くてあっという間に読んでしまいました。
 この章で、「造化」というものに関する著者の考え方を読んでから、芭蕉の時代の句に接する際は、その句が生み出される場としての「造化」というものを読み取ってみようと意識するようになりました。
 もちろん、私ごときが読み取ろうと思って読み取れるような浅いものではないのですが…

 とにかくこの本は、
 「自分が足を踏み入れた俳句の世界は、どこまでも深いんだなあ。そして、深みに潜れば潜るほど、新しい面白みに接することができるんだなあ… 」
 そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。



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朧・朧月(おぼろ・おぼろづき) (春の季語:天文)

     星朧 谷朧 海朧 庭朧 草朧 鐘朧 灯朧
     朧夜(おぼろよ)朧の夜 朧月夜 月朧 

朧月(おぼろづき)
12春の季語・天文・朧月(おぼろづき)【イラストー俳句入り】.jpg
        パソコン絵画 or 書道


● 季語の意味・季語の解説

 春の夜の、水分の多いしっとりした空気の中では、様々なものがぼんやりとにじんだように見える。
 そのような状態を朧(おぼろ)という。

 星朧、谷朧、海朧、庭朧、草朧、鐘朧、灯朧などと、色々な語とくっつけて用いることも多い。

  美しき学校あらば草朧 (摂津幸彦)

 特に、ぼんやりとやわらかい光を放つ月は、朧月(おぼろづき)として俳句によく詠まれる。

  くもりたる古鏡の如し朧月 (高浜虚子)

 なお、多くの歳時記は、朧月を独立した季語として扱っている。

 朧月の出ている夜は朧夜(おぼろよ)と表現される。
 朧月夜を略したものと考えればよい。

  朧夜の手に消えさうな泪壺 (加藤知世子)

 ところで、朧のほかにも、水分の多い春の大気の状態を指す語に霞(かすみ)があるが、霞は昼、朧は夜を詠むのに用いる。


● 季語随想

 にじむような月の光りが湖面に落ちているある春の夜、私は、自然と次のような俳句を詠んだ。

  助手席に香り残れる朧かな

 しかし、この句を私は作品として残すことができなかった。
 なぜなら、この句を詠むずっと前に、次のような句を詠んで既に発表してあったからだ。

  助手席に香りの残る初夏の朝 (凡茶)

 この「初夏の朝」の句は俳句を始めて間もない頃の作品で、今読み返すと若さゆえの生意気さを感じる。

 しかし、この句、ようやく俳句がわかり始めてきた頃に、句会で皆さんから高い評価をいただいた思い出の句だけに、今もなお愛着がある。

 だから、なおさら「初夏の朝」を「朧かな」に替えただけのような句を作品として残すわけにはいかない。

 でも、実を言うと、「朧かな」の句も、描いた情景は悪くないものに思えている。

 そこで私は、「朧かな」の句を、俳句から短歌へと変身させて、己の胸の中にこっそり残すことに決めた。

 俳人が短歌を詠むなど、これまた生意気な話であるが、朧夜の艶めかしい空気の中では、こんなささやかな浮気を楽しんでみたくもなる。

  助手席に香り残れる朧夜の遠回りして帰る湖沿ひ (凡茶)
      湖沿ひ=うみぞい。

 恥ずかしいので歌人の目には触れないことを祈る。


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 私の暮らす町の高台には、市民のための小さな野球場があります。

 ある朧の夜、その野球場の夜間照明が、にじむような光りの帯を夜空に立たせていました。

 次の俳句はその時の感動を詠んだものです。

  高台に球場の灯の朧なり (凡茶)

 その夜、私は野球場の灯に、やさしさと艶めかしさのようなものを感じました。

 実際、多くの俳人たちが、朧・朧月を詠むことで、やさしさ、もしくは、やんわりとした艶を、作品ににじませています。

  辛崎の松は花より朧にて (松尾芭蕉)
      歌枕にもなっている辛崎(唐崎)は琵琶湖畔にある。
      その湖畔の松は、花よりも朧の中で趣が増すという句意。

  味噌豆の熟ゆる匂ひやおぼろ月 (中村史邦)
      熟ゆる=にゆる。

  指貫を足で脱ぐ夜や朧月 (与謝蕪村)
      指貫=さしぬき。はかまの一種。

  白魚のどつと生まるるおぼろかな (小林一茶)

  浮世絵の絹地ぬけくる朧月 (泉鏡花)

  朧三日月吾子の夜髪ぞ潤へる (中村草田男)
      吾子=あこ。わが子のこと。

  汝もまた獨りか仔猫月おぼろ (瀬戸内寂聴)
      汝=なれ。 獨り=ひとり。

 これらの句と比べると、次の俳句は少々生々しく感じられます。

  くちづけの動かぬ男女朧月 (池内友次郎)

 ただ、この句を、昭和の初期に、作者が留学先のパリで詠んだものであると知った上で鑑賞すると、その味わいがよくわかります。

 最後に私の俳句をもう一句紹介しておきます。
 自信作です。

   僧の首湯船に並ぶ朧かな (凡茶) 


≪おすすめ・俳句の本≫

新版20週俳句入門 藤田湘子著
==============================
■ どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになる本です

 昭和63年に出された旧版『20週俳句入門』があまりにも優れた俳句の指導書であったため、平成22年に改めて出版されたのが、この『新版20週俳句入門』です。

 この本は、
   〔型・その1〕 季語(名詞)や/中七/名詞
   〔型・その2〕 上五/〜や/季語(名詞)
   〔型・その3〕 上五/中七/季語(名詞)かな
   〔型・その4〕 季語/中七/動詞+けり

 の4つの型を、俳句を上達させる基本の型として、徹底的に読者に指導してくれます。

 これらをしっかり身につけると、どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになるでしょう。

 王道の俳句を目指す人も、型にとらわれない斬新な俳句を目指す人も、一度は読んでおきたい名著です。



俳句の宇宙 長谷川櫂著
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■ 俳句は深くて、面白いなあ… 心からそう思えた本でした!


 最も私の心をとらえたのは第四章「間について」
 この章を読み、俳句の「切れ」を「間」と捉え、その「間」をじっくり味わおうとするようになってから、既に目にしていた名句が、それまでとは違って見えてくるようになりました。

 また、第七章「宇宙について」も、面白くてあっという間に読んでしまいました。
 この章で、「造化」というものに関する著者の考え方を読んでから、芭蕉の時代の句に接する際は、その句が生み出される場としての「造化」というものを読み取ってみようと意識するようになりました。
 もちろん、私ごときが読み取ろうと思って読み取れるような浅いものではないのですが…

 とにかくこの本は、
 「自分が足を踏み入れた俳句の世界は、どこまでも深いんだなあ。そして、深みに潜れば潜るほど、新しい面白みに接することができるんだなあ… 」
 そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。



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posted by 凡茶 at 08:03 | Comment(0) | 春の季語(天文) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


淡雪(あわゆき) (春の季語:天文)

     牡丹雪(ぼたんゆき) 綿雪

12春の季語・天文・淡雪【イラスト】.jpg
        デジカメ写真

● 季語の意味・季語の解説

 降ってもすぐに消えてしまう春の雪を淡雪と言う。

  あはゆきのつもるつもりや砂の上 (久保田万太郎)

 ふんわりと柔らかそうな形をして降るので、「綿雪」とも言う。

 また、空中で少し融け、結晶どうしが結びついて落ちてくるさまを、花弁の大きな牡丹にたとえ、「牡丹雪」と言う。

  夜の町は紺しぼりつつ牡丹雪 (桂信子)  


● 季語随想

 ふうわりと降る淡雪のようなやわらかい言葉で、
 こわばった私の心をほぐしてくれる人。

 手のひらに降りてすっと消えゆく淡雪のような、
 さりげない手助けで私の自尊心を守ってくれる人。

 人は自分に無いものをたくさん持った人に憧れると言いますが、
 私は淡雪のようなやさしさを持った人に強くひかれるようです。


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 降ってもすぐに融けてしまう淡雪には儚さを感じますが、この季語は同時に春らしい明るさも帯びています。

  淡雪や側から青き春日山 (大島蓼太)

  淡雪の降るも茶の湯の花香かな (川上不白)

  淡雪や葭簀がこひの小料理屋 (成田蒼虬)

 また、雪は雪ですから、実際に肌に触れるとひんやりと冷たいのですが、淡雪は何か心に暖かさを運んでくれるような、そんな印象も持っています。
 このようなイメージを大切に詠んだのが次の俳句です。

  しるこ屋へ淡雪の中待ち合はせ (凡茶)

 淡雪・牡丹雪を見ていると、人はしっとりとした心で、物思いに耽りたくなるものです。
 淡雪・牡丹雪には、涙のように心を静め、涙のように心に潤いを与える力があるようです。

  しづかにこころ満ちくるを待つ牡丹雪 (大野林火)

  淡雪や船を見送る宿の傘 (凡茶)

 また、淡雪・牡丹雪という季語の持つしっとりとしたイメージは、俳句にほどよい艶を与えてくれるようです。

  淡雪やかりそめにさす女傘 (日野草城)

  牡丹雪その夜の妻のにほふかな (石田波郷)

  牡丹雪ひととき鏡はなやぎぬ (桂信子)

  淡雪や窓の外見るレオタード (凡茶)

 せつなさ、しづかさ、おそれ… 淡雪・牡丹雪という季語は、他にいろいろな趣を俳句に与えてくれます。

  淡雪嘗めて貨車の仔牛の旅つづく (加藤楸邨)

  死ぬ人の歩いてゆくや牡丹雪 (藤田湘子)


≪おすすめ・俳句の本≫

新版20週俳句入門 藤田湘子著
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■ どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになる本です

 昭和63年に出された旧版『20週俳句入門』があまりにも優れた俳句の指導書であったため、平成22年に改めて出版されたのが、この『新版20週俳句入門』です。

 この本は、
   〔型・その1〕 季語(名詞)や/中七/名詞
   〔型・その2〕 上五/〜や/季語(名詞)
   〔型・その3〕 上五/中七/季語(名詞)かな
   〔型・その4〕 季語/中七/動詞+けり

 の4つの型を、俳句を上達させる基本の型として、徹底的に読者に指導してくれます。

 これらをしっかり身につけると、どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになるでしょう。

 王道の俳句を目指す人も、型にとらわれない斬新な俳句を目指す人も、一度は読んでおきたい名著です。





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