鶯(うぐいす) (春の季語:動物)

     うぐひす 春告鳥(はるつげどり) 
     経読鳥(きょうよみどり) 初音(はつね)

梅に鶯
16春の季語・動物・鶯(うぐいす)【俳句・イラスト】.jpg
        パソコン絵画


季語の意味・季語の解説
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 鶯(うぐいす)は雀(すずめ)ほどの小さな鳥で、緑褐色(いわゆる鶯色)をしている。
 「ホーホケキョ」と美しい声で鳴き、その声を聞くと誰もが春の訪れを実感するため、春告鳥とも呼ばれる。
 特にその年初めて聞いた鳴き声は有難がられ、初音(はつね)と言う。

 なお、経読鳥(きょうよみどり)の異名は、鳴き声が「法・法華経」と聞き取れることに由来する。

 比較的人里に近いところにもやってくるため、都市も郊外ならば鶯の声を聞くことがある。
 運よく聞けた日には、嬉しすぎて仕事にゆくのが嫌になってしまうかも?


季語随想
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 「梅に鶯」という言葉をよく耳にするが、実際に、鶯(うぐいす)を描いた絵画や、鶯を撮影した写真の多くが、梅の木の枝にとまる鶯の姿をとらえている。
 古くから梅の花と鶯は相性の良いものと考えられ、もはや梅に鶯は「つきもの」となった。

 日本には、このように、あるものが、あるものの「つきもの」になっているような例が実に多い。
 紅葉に鹿、柳に幽霊、秋刀魚に大根おろし、ビールに枝豆等々。

 俳句の世界では、このような「つきもの」を取り合わせた俳句を作ってもあまり評価されないことが多い。
 つまり、梅と鶯がどんなに相性が良くとも、梅と鶯を取り合わせたような句は「つき過ぎ」といって駄句にされてしまう場合がほとんどであるということだ。
 だから俳人は、「つきもの」になっていない言葉と言葉とを取り合わせて、従来になかった新しい美の組合せを生み出そうとする。
 俳人には、季語に対し、まだ「つきもの」になっていない新しいパートナーを探し出して結びつけてやる仲人のような側面があるのだ。

  鶯や少し薄めの中国茶 (凡茶)
 
 上の句は、私が仲人になって、「鶯」という季語に、「中国茶」という新しいパートナーをあてがってやったものである。
 それなりに良い相棒が見つかったと自惚れている。

 さて、俳人が、ある季語に対し、それまで「つきもの」とされてきたものにとってかわる新しい「つきもの」を見つけ出して俳句にしてしまったらどうなるだろう?
 おそらく、それこそが永遠の名句の誕生の瞬間と言えるだろう。

 かつて「蛙」は「山吹」と相性が良いとされてきたが、次の一句の誕生で事情は一変した。

  古池や蛙飛こむ水のおと (芭蕉)

 今や、「古池」と聞けばだれもが「蛙」を思い浮かべるだろうが、「山吹」と聞いて「蛙」を思い浮かべる人はもはやほとんどいないであろう。

 もし誰かが、「梅に鶯」という言葉が忘れ去られてしまうほど鶯と相性のいいものを見つけてきて、取り合わせの俳句を生み出したなら、その人はきっと歴史に名を残す大俳人になるに違いない。
 ライフワークとして取り組んでみてはいかがか。


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 鶯(うぐいす)という季語と他の言葉とを取り合わせて俳句を作る場合は、その美しい鳴き声の邪魔にならぬような、さりげない事物を取り合わせてやるのが一番ではないでしょうか。
 次は江戸時代の炭太祇と、私の句です。

  うぐひすや君こぬ宿の経机 (太祇)
      経机=きょうづくえ。

  鶯や形見分けせし堆朱箸 (凡茶)
      堆朱=ついしゅ。漆器に使われる技法の一種。

  鶯や少し薄めの中国茶 (凡茶)



≪おすすめ・俳句の本≫

俳句の宇宙 長谷川櫂著
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■ 俳句は深くて、面白いなあ… 心からそう思えた本でした!


 最も私の心をとらえたのは第四章「間について」
 この章を読み、俳句の「切れ」を「間」と捉え、その「間」をじっくり味わおうとするようになってから、既に目にしていた名句が、それまでとは違って見えてくるようになりました。

 また、第七章「宇宙について」も、面白くてあっという間に読んでしまいました。
 この章で、「造化」というものに関する著者の考え方を読んでから、芭蕉の時代の句に接する際は、その句が生み出される場としての「造化」というものを読み取ってみようと意識するようになりました。
 もちろん、私ごときが読み取ろうと思って読み取れるような浅いものではないのですが…

 とにかくこの本は、
 「自分が足を踏み入れた俳句の世界は、どこまでも深いんだなあ。そして、深みに潜れば潜るほど、新しい面白みに接することができるんだなあ… 」
 そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。



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posted by 凡茶 at 06:03 | Comment(2) | 春の季語(動物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


寄居虫(やどかり) (春の季語:動物)

     ごうな

やどかり(寄居虫)
16春の季語・動物・寄居虫(やどかり)【イラスト】.jpg
        パソコン絵画


季語の意味・季語の解説
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 寄居虫(やどかり)は、巻貝の殻に棲みつく、エビ目ヤドカリ下目の小動物。
 古くは「ごうな」と呼んだ。

 チビのくせに貝殻からでっかい一対のハサミを出している姿は、なんともひょうきんである。

 春の季語になっているが、実際、春に潮干狩りや磯遊びを楽しんでいるときによく見かける。


季語随想
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 得意でないことまで、全部自分でやろうとして、うまくいかずにイライラする…

 振り回される周りもイライラする…

 そんな、俺達人間は、やどかりを見習うべきだ。

 やどかりは、自分の住み家を自分じゃ造らない。
 全部、巻貝に作ってもらう。
 だって、大工仕事は苦手だもん!

 苦手なことは他人に委ねる。
 そのかわり、得意なことは、他人の分だって、心をこめてやってやる。

 心に無理をためず、そして自尊心を傷つけない生き方を。

 無理せず生きているやどかりは、春の浜辺の人気者だ。


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 巻貝に棲みつく寄居虫(やどかり)は、その特異な恰好から、季語として俳句に詠まれると、ユーモラスな句ができやすい。

 ただ、自分で家を造らず貝殻を利用する、その生き様(?)に対して、ささやかな羨望、そして、ささやかな侮蔑をにじませて俳句を詠んでやると、味わい深いものになるかもしれない。

 また、春の広々とした海辺で、その存在はとてもちっぽけであるから、やどかりは「あはれ」の対象にもなり得る。


  やどかりや怪雲壊れただの雲 (凡茶)



≪おすすめ・俳句の本≫

俳句の入口 〜作句の基本と楽しみ方 藤田湘子著
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■ 俳句はリズムである… 大切なことを教えてくれた一冊です。


 左の本に出会うまでは、伝えたいこと、表現したいことを無理やり五七五の定型に詰め込むような俳句作りをしていました。

 つまり以前の私にとって、定型は約束事だから仕方なしに守る制約にすぎなかったのです。

 しかし、この本を読んで、俳句は韻文であり、大切なのはリズムであることを知ると、定型、切れ字等の大切さが少しずつわかるようになっていきました。

 「意味」から「音」へ!
 私の俳句に対する意識を大きく変えてくれた一冊です。



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posted by 凡茶 at 00:57 | Comment(0) | 春の季語(動物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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