雪間草 (春の季語:植物)

     ゆきまぐさ

雪間草
17春の季語・植物・雪間草【イラスト】.jpg
        パソコン絵画


季語の意味・季語の解説
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 雪国でも仲春ともなると地面を覆っていた雪が融け始め、黒々とした土がのぞくようになる。
 これが「雪間」で、地理の類に属する春の季語である。
 この雪間に萌え出でた草を「雪間草」と言い、雪間の副題として扱う歳時記も多いが、私は植物の類に属する独立した季語として取り上げたいと思う。
 冷たい雪のすぐそばで、みずみずしい青さをたたえながら日の光を浴びている草を見つけると、ありきたりな表現ではあるが、生命の力強さを感じないではいられない。


季語随想
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 幸せな恋愛をするためには、人目を引く「あでやかな花」になることが必要でしょうか?
 幸せな恋愛ができないのは、その人が「あでやかな花」ではないからでしょうか?

 このおじさんは、全くそうは思いません。

 幸せな恋愛をしたければ、「雪間草」の美しさを見出すことのできる人の存在に、あなたが気付くことです。
 そして、あなたが、雪の傍らで瑞々しく成長しようとする「雪間草」になることです。
 
 教員時代… こんなメッセージを生徒たちに伝えることができていただろうか?
 時折、そんなことを考えます。


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 雪間草を春の訪れを告げる存在と捉え、喜びに満ち溢れた俳句を詠んでみましょう。

  郵便の自転車のベル雪間草 (凡茶)

 次に、雪間草という季語を使って、やがて来る本格的な春への憧れを表現してみましょう。

  鳶の笛聞く老鶏や雪間草 (凡茶)

 それから、雪間草の俳句を詠むことを通じて、生命を力強さ、美しさ、尊さを再確認しましょう。

  尾を立てて駆け来る仔犬雪間草 (凡茶)

  老い猫の息づかひ抱く雪間草 (凡茶)


≪おすすめ・俳句の本≫

新版20週俳句入門 藤田湘子著
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■ どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになる本です

 昭和63年に出された旧版『20週俳句入門』があまりにも優れた俳句の指導書であったため、平成22年に改めて出版されたのが、この『新版20週俳句入門』です。

 この本は、
   〔型・その1〕 季語(名詞)や/中七/名詞
   〔型・その2〕 上五/〜や/季語(名詞)
   〔型・その3〕 上五/中七/季語(名詞)かな
   〔型・その4〕 季語/中七/動詞+けり

 の4つの型を、俳句を上達させる基本の型として、徹底的に読者に指導してくれます。

 これらをしっかり身につけると、どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになるでしょう。

 王道の俳句を目指す人も、型にとらわれない斬新な俳句を目指す人も、一度は読んでおきたい名著です。





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猫柳 (春の季語:植物)

     ねこやなぎ えのころやなぎ

猫柳
17春の季語・植物・猫柳【俳句とイラスト】.jpg
        パソコン絵画


季語の意味・季語の解説
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 小川などの水辺に自生し、高さ2メートルほどにしかならない低木。
 春の初め、猫の毛のように艶のある銀白色の花穂(かすい)をつける。
 触れると絹のように心地よい。
 春も半ばを過ぎると、ふわふわとした柳絮(りゅうじょ)を風に放つ。


季語随想
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 子供の頃、川辺に自生している猫柳や、室内に活けてある猫柳の花穂を見ると、指で感触を確かめたいという衝動を抑えることができなかった。
 大人になった今でも、この衝動にだけは必ずかられる。
 それほどまでに猫柳の花穂は、触り心地がよさそうだ。

 大人になるということには、「〜したい!」という衝動を、理性によって抑制する術を身につけるという側面がある。
 それは社会生活を送る上では、欠かすことのできない大切な術である。
 しかし、人は、その術を身に付ける過程で、子供の頃のみずみずしい好奇心もまた大量に捨てていく。

 私は、猫柳を見て「指で触れたい」という欲求が湧きあがってくると、子供の頃のみずみずしい好奇心が少し息を吹き返したように思える時がある。
 そんな感覚を大切にしながら、今後の創作生活を送っていきたいものなのだが…


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 猫柳は、まだまだ寒さの厳しい早春に、あのやわらかそうな花穂をつけます。
 ですから、猫柳を季語に用いる場合は、早春のキリッと引き締まった空気を意識しながら俳句を作ります。
 ぽかぽかとした春の陽気ではなく、鋭さの残る早春の空気を意識するのです。

  尼寺裏に響く瀬音や猫柳 (凡茶)
      尼寺=にじ。 瀬音=川の浅瀬を流れる水の音。

 上の句は外に自生する猫柳を詠んだものですが、次の、室内に生けられた猫柳を詠んだ句の場合も同じです。
 そこには、早春の清冽な気が満ちています。

  猫柳生け文豪の生家守る (凡茶)
      守る=もる。

 俳句の中で、猫柳が早春の息吹として生かされれば、その句は成功です。



≪おすすめ・俳句の本≫

俳句の入口 〜作句の基本と楽しみ方 藤田湘子著
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■ 俳句はリズムである… 大切なことを教えてくれた一冊です。


 左の本に出会うまでは、伝えたいこと、表現したいことを無理やり五七五の定型に詰め込むような俳句作りをしていました。

 つまり以前の私にとって、定型は約束事だから仕方なしに守る制約にすぎなかったのです。

 しかし、この本を読んで、俳句は韻文であり、大切なのはリズムであることを知ると、定型、切れ字等の大切さが少しずつわかるようになっていきました。

 「意味」から「音」へ!
 私の俳句に対する意識を大きく変えてくれた一冊です。



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蕗の薹(ふきのとう) (春の季語:植物)

     ふきのたう 蕗の芽 蕗の花
     蕗の姑 蕗のじい

蕗の薹(ふきのとう)
17春の季語・植物・蕗の薹(ふきのとう)【イラスト】.jpg
        パソコン絵画


季語の意味・季語の解説
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 早春、野山や人里など、至る所に顔を出す蕗(ふき)の花茎。

 雪間(雪が融けて、土がのぞいたところ)にちょこんと生えているのを見つけると、嬉しくて胸がきゅんとなる。

 小さな愛らしい花を咲かせるが、美味しく味わえるのは花が開く前。
 蕗味噌にしたり、てんぷらにしたり、焼いたりして食べる。
 春を告げるほろ苦い味がする。

 暖かくなるころには茎が伸び、30〜50センチ程度になるが、そうなったものを、蕗の姑とか、蕗のじいなどと呼ぶ。


季語随想
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 子供の頃、ふきのとうを摘むことは、春の楽しみの一つでした。
 弟と一緒にいっぱい摘んで家に帰ると、母さんはじめ、家族の皆が喜んでくれました。

 父さんも爺さんも蕗味噌やふきのとうのてんぷらがあると酒が進むらしく、上機嫌になっていたのをよく覚えています。
 どちらかというと偏食だった婆さんも、蕗味噌は喜んで食べたという記憶があります。

 で、私はというと、摘むのは楽しかったのですが、ふきのとうを口に入れるのは、あまり得意ではありませんでした。
 あの大人が良い良いと誉める苦味が、子供の舌には難解だったのです。
 私は大人たちがふきのとうを味わっているのを見ながら、自分は卵かけご飯を食べていました。

 中学生、高校生ともなると、学業や部活動で忙しくなり、春になってもふきのとうのことなど忘れていましたが、大学に進んで心にゆとりができると、私は、友人らとふきのとうを摘みに出かけるようになりました。
 
 摘み取ったふきのとうをてんぷらにし、何年かぶりに味わってみると、実におつな味でした。
 昔は苦手だったあの苦さを、春を告げる鮮烈な香りとして舌が理解できるようになっていたのです。

 子供の頃その味を理解し得なかったふきのとうが、大人となった今では、春の訪れとともに垂涎の品となるのです。
 大人になって人生の愉しみを受け入れるキャパシティーが結構広がったということでしょう。

 大人になって思うことは、子供の頃想像した以上に、大人の世界というものは素晴らしいものだということです。

 大人は子供におもねることなく、堂々と大人が楽しいと思える世界を子供にも体験させるべきなのではないでしょうか。

 はじめは難解で理解できない子供たちですが、より高度な世界の楽しみ方を、少しずつでも、ちゃんと学んでいくことでしょう。 


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 まだまだ寒さの厳しい雪解けの頃、けなげに土から顔を出している蕗の薹(ふきのとう)は、強い生命力を感じさせるとともに、慈しむ思いを見る者に抱かせます。

 下の六句にも、蕗の薹を慈しむ心がしっかりと込められています。
 鑑賞し、参考にしてみてください。

 はじめの二句は江戸時代のもの、後の四句は私の俳句です。

  古井戸や蕗の花散る水の隈 (仙化)

  莟とは汝も知らずよ蕗の薹 (蕪村)
      莟=つぼみ。 汝=なれ。

  ふきのたう洋鐘の鳴る丘に摘む (凡茶)
      洋鐘=ようしょう。西洋式の鐘。

  笹舟を放す母子やふきのたう (凡茶)

  蕗の薹隠田村の柴で焼く (凡茶)

  蕗の薹土偶出で来し村に摘む (凡茶) 


≪おすすめ・俳句の本≫

・語りかける季語 ゆるやかな日本
・ゆたかなる季語 こまやかな日本 宮坂静生著
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■ 日本列島を隅々まで旅すると、たくさんの知らなかった季語に出会えます!

  
 日本各地には、一般的な歳時記にはあまり載っていない、その土地の貌を映し出す季節のことばがあります。
 筆者の宮坂さんは、そうした言葉を「地貌季語」と称し、その発掘に努めてきました。

 『語りかける季語 ゆるやかな日本』では、沖縄の「立ち雲」、雪国の「木の根明く」ほか、178の地貌季語が紹介されています。

 また、『ゆたかなる季語 こまやかな日本』では、千葉県安房地方の「逆さ寒」、沖縄県の「風車祝」、長野県諏訪地方の「明けの海」ほか、172の地貌季語が紹介されています。 

 この2冊を読めば、日本列島という空間と、季節と言う時間を一度に旅することができそうですね。季語の四次元ワールドを巡ってみましょう。



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posted by 凡茶 at 06:19 | Comment(0) | 春の季語(植物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


梅 (春の季語:植物)

17春の季語・植物・梅(凛とした梅の枝).jpg
梅の花
むめ   花の兄
白梅   紅梅(こうばい)
野梅   老梅
梅が香
梅林(ばいりん・うめばやし)
梅園   梅月夜
盆梅   梅ふふむ


関連季語; 梅見(春季)  早梅・冬の梅(冬季)

● 季語の意味・季語の解説

 俳句で梅と言えば、梅の実ではなく、梅の花をさす。
 古くは「むめ」と表記した。

 梅は早春にほかの花にさきがけて咲くため、「花の兄」とも呼ばれる。
 まだまだ寒い中、先日まで蕾のままだった梅が、ぽつぽつと咲きはじめているのに気がつくと、なんだかいじらしくなる。

  梅一輪一輪ほどの暖かさ (服部嵐雪)

 梅には、白梅紅梅、薄紅色など、様々な色のものがある。

 梅林梅園を歩くと、そんな色とりどりの梅が満開だったり、五分咲きだったりして心が弾む。

  児をつれて小さい橋ある梅林 (尾崎放哉)

 なお、紅梅については、独立した季語として扱っている歳時記が多い。

  紅梅や児の文書く縁の先 (三宅嘯山)
      児=ちご。

 梅は可憐な見た目もさることながら、古くからその馥郁たる香りも好んで読まれてきた。

  むめが香にのつと日の出る山路かな (松尾芭蕉)

  痩骨に梅が香うつる朝かな (高桑闌更) 

 梅月夜という副題も、気品のある梅の香りを俳句に漂わせる。

  初めての日本髪解く梅月夜 (凡茶)

 そのほか、副題としては、盆梅梅ふふむあたりを使いこなせるようになりたい。
 盆梅は盆栽に仕立てた梅、梅ふふむは、梅の花が蕾(つぼみ)のままの状態であることを指す。

 なお、関連する季語である梅見(春季)、早梅・冬の梅(冬季)については、別のページで紹介しているので、よろしかったら、そちらも訪れていただきたい。

     「梅見」のページ
     「早梅・冬の梅」のページ

● 季語随想  

いじらしさと凛

17春の季語・植物・梅(幹に咲く梅).jpg
 「季語めぐり」(当サイト)を書きはじめ、改めて梅という花の人気の高さを実感しました。
 毎日、この「梅」のページに訪れてくださる読者の数が、群を抜いて多いのです。

 万葉の昔から日本人に愛されて止まない梅の魅力とは一体何なのでしょう。
 梅の魅力を端的に表現するとすれば、どのような言葉がふさわしいのでしょう。

 私は「いじらしさ」という言葉が、梅の魅力を表現するのにふさわしいと考えています。

 まだ冷たい早春の風に香りを漂わせ、控えめに、しかし、気高く咲いている梅の花を表現するのに、「かわいらしい」という言葉では、軽すぎるような気がします。

 しかし、「憐憫」というと、またそれも違うような気がします。

 やはり、「いじらしさ」という言葉が、梅の花にはよくあてはまるようです。

 また、梅には「凛」という言葉もよく似合うと思います。

 凛…
 攻撃的な強さではなく、荒々しい強さでもない、芯をピンと張って己を律する強さ…

 そんな強さを、早春の梅の花には感じるのです。

 中村草田男に次のような俳句があります。

  勇気こそ地の塩なれや梅真白 (中村草田男)

 「地の塩」は新約聖書のマタイ伝に出てくる言葉で、「人間の社会(=地)を腐敗から守るもの(=塩)」という意味に私は解釈しています。

 この俳句を、昭和19年に、学徒出陣する教え子に贈った餞(はなむけ)の句であると知って鑑賞すると、草田男もまた、梅のもつ「いじらしさ」と「凛」に、様々な思いを託してこの俳句を生み出したのではないかと、そう思えてならないのです。


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 上の季語随想にも書いたのですが、私は、梅という季語には、「いじらしさ」と「凛」を感じます。
 なお、ここでは「凛」を、“芯をピンと張って己を律する強さ・気高さ”のいう風に捉えてください。

 以下に、いじらしさを感じる俳句、凛を感じる俳句を、それぞれいくつか挙げてみたいと思います。
 名句の味わい方は人によりまちまちなので、私の紹介の仕方に異論を持つ方もおられるでしょうが、ご容赦ください。

< 梅の花にいじらしさを感じる俳句 >

  梅一輪一輪ほどの暖かさ (服部嵐雪)

  灰捨てて白梅うるむ垣根かな (野沢凡兆)

  野の梅や折らんとすれば牛の声 (内藤鳴雪)

< 梅の姿・香りに凛を感じる俳句 >

  梅が香や針穴すかす明り先 (小林一茶)

  梅かをり女ひとりの鏡冴ゆ (桂信子)

  梅咲いて庭中に青鮫が来ている (金子兜太)

< 夜の梅の艶 >

 ところで、夜の梅の俳句を詠むと、ほんのりといい艶がでることがあります。
 チャレンジしてみましょう。

 ただし、あくまで「ほんのり」であることが肝心です。
 俳句は塩梅が大切ですから。

  うすずみを含みしごとく夜の梅 (橋本鶏二)

  初めての日本髪解く梅月夜 (凡茶)

17春の季語・植物・梅月夜【イラスト】.jpg
        パソコン絵画



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歳時記の収録されている電子辞書
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 以前は、句会・吟行といえば、辞書や歳時記などを持参しなければならず、これが結構重いものでした。

 しかし、今は歳時記入りの電子辞書が登場したおかげで、ずいぶん持ち物が軽くなりました。

 例えば、左の電子辞書には、次の歳時記が納められています。

合本俳句歳時記 四訂版
現代俳句歳時記
(春・夏・秋・冬・無季)
ホトトギス俳句季題便覧


 また、次のような収録コンテンツも、きっと俳句の実作、吟行に役立つでしょう。

広辞苑 第六版
全訳古語辞典 第三版
漢語林


 読めない漢字も手書きで検索できますし、俳人にとっては実にありがたいですね!

 この電子辞書には、他にも、百科事典や、日本と世界の文学作品(各1000作品)等、さまざまなコンテンツが収められていて、とにかく飽きません。
 世の中便利になったものです。




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posted by 凡茶 at 04:03 | Comment(0) | 春の季語(植物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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