蝸牛(かたつむり) (夏の季語:動物)

     カタツムリ かたつぶり まいまい
     でんでんむし ででむし

26夏の季語・動物-蝸牛(かたつむり).jpg     
        パソコン絵画


季語の意味・季語の解説
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 蝸牛(カタツムリ)は陸上で暮らすようになった巻貝の仲間である。

 祖先が暮らしていた海を懐かしんでいるのか、万物が水に濡れる梅雨の季節になると、草や葉の上でゆったりと過ごしている。
 殻を背負ったヌルッとした体から、ニ対の触角を出したりひっこめたりする様子は、なんともユーモラスである。

 蝸牛には数百に及ぶ異称があるというが、俳句の季語としては、かたつぶり、まいまい、でんでんむし、ででむし等が好んで用いられる。

26夏の季語・動物・蝸牛(カタツムリ).jpg
蝸牛(カタツムリ)

季語随想
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■ のんびり生きる勇気 ■

 のんびりとマイペースで生きるということは、これでなかなか勇気のいることだ。

 われわれ小心者は、「世間様の目」という本来取るに足らないものを、心の中で飼いならす能力に長けている。
 だから、己に負担のかからない、のんびりした生き方をしようとすると、なんだか罪悪感を抱いてしまう。

 われわれ小心者は偉大なる「でんでん虫」の勇気を見習おう!

 かつて巻貝だった「でんでん虫」は、果敢にも長らく過ごした海を飛びだして、陸上という未知なる世界で暮らし始めた。
 そして、あじさいの葉の上で、しっとり雨を浴び、ゆっくり穏やかに今を生きている。

 われわれ小心者は、偉大なる「でんでん虫」の…
 
 のんびり生きる人生へと果敢にも踏み出した、そんな勇気を見習おう!


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 江戸時代から、蝸牛(かたつむり)を季語に詠んだ俳句には、ユーモアたっぷりの句が多かったようです。

  かたつぶり角ふりわけよ須磨明石 (松尾芭蕉)
      角=つの。触角のこと。 須磨明石=すま・あかし。ともに兵庫県の地名で須磨が東、明石が西にある。

  ころころと笹こけ落ちし蝸牛 (杉山杉風)

  古壁やともに崩るるかたつぶり (岩田凉菟)

 杉風(さんぷう)も凉菟(りょうと)も蕉門(芭蕉のお弟子さん)ですが、これらの句には、侮蔑とも、愛情ともとれるような感情が込められているように思います。
 参考にしてください。

 私も、蝸牛という季語が好きで、いくつかお気に入りの俳句があります。

  ででむしや飛行機の腹近き町 (凡茶)

  音かろき印刷工場蝸牛 (凡茶)

  捨て壜の内を這ひたり蝸牛 (凡茶)
      壜=ビン。 這ふ=はう。

  べそかきへ歩み寄る傘かたつむり (凡茶)



≪おすすめ・俳句の本≫

俳句の宇宙 長谷川櫂著
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■ 俳句は深くて、面白いなあ… 心からそう思えた本でした!


 最も私の心をとらえたのは第四章「間について」
 この章を読み、俳句の「切れ」を「間」と捉え、その「間」をじっくり味わおうとするようになってから、既に目にしていた名句が、それまでとは違って見えてくるようになりました。

 また、第七章「宇宙について」も、面白くてあっという間に読んでしまいました。
 この章で、「造化」というものに関する著者の考え方を読んでから、芭蕉の時代の句に接する際は、その句が生み出される場としての「造化」というものを読み取ってみようと意識するようになりました。
 もちろん、私ごときが読み取ろうと思って読み取れるような浅いものではないのですが…

 とにかくこの本は、
 「自分が足を踏み入れた俳句の世界は、どこまでも深いんだなあ。そして、深みに潜れば潜るほど、新しい面白みに接することができるんだなあ… 」
 そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。



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初鰹(はつがつお) (夏の季語:動物)

     初松魚(はつがつお)

初鰹(はつがつお)
26夏の季語・動物・初鰹.jpg
        パソコン絵画


季語の意味・季語の解説
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 回遊魚である鰹(かつお)は、初夏の頃、黒潮に乗って南方から日本近海にやってくる。
 この頃獲れる走りの鰹を初鰹(はつがつお)と呼ぶ。

 初鰹は江戸時代の人々に珍重され、当時は極めて高価であったらしいが、粋を重んじる江戸っ子の間では「初鰹は女房子供を質に置いてでも食え」と言われるほど愛された。
 その江戸の初鰹は鎌倉あたりの漁場から供給されたため、松尾芭蕉は次のような一句を残している。
 
  鎌倉を生きて出けむ初鰹 (芭蕉)
      出けむ=いでけむ

 なお、初鰹は初夏の季語であるが、単に鰹と言えば夏の季語である。
 また九〜十月頃に、三陸沖から南下してくる鰹は戻り鰹(もどりがつお)と呼ばれ、秋の季語である。


季語随想
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 初夏の青葉のころ、黒潮に乗って南の海からやってくる鰹を「初鰹」と呼ぶ。
 これに対し、親潮が強まって水温の低下する秋に、三陸あたりの海から、関東以南へ南下してくる鰹を「戻り鰹」と呼ぶ。

 近年、本当の旬の鰹は、初夏の初鰹ではなく、秋の戻り鰹であるという主張をよく目にするようになった。
 血の香りの強い初鰹より、餌をたっぷり食べて脂ののった戻り鰹の方が、味としては上であるとする説が、食通の間ではパラダイムとなりつつあるようだ。
 彼らによると、初夏の初鰹を有難がる風潮は、初物を好む江戸っ子気質の産物であり、先入観を除いて舌だけで鰹を味わうと、戻り鰹の方が、食材として優れているということになるらしい。
 
 はたして、そう言い切れるだろうか?

 たしかに腹のあたりにたっぷりと脂をためた戻り鰹は旨い。
 鮪のトロを凌ぐ味と言ってもいいかもしれない。
 私も目が無い。

 しかし、初夏の初鰹には、秋の戻り鰹にはない、さわやかさがある。
 そのさわやかさは、清冽な香りを持つ薬味と実に相性がよい。
 ゆえに、初夏の薄暑に、薬味をたっぷりかけた初鰹を食べると、全身が清涼感に包まれる。

  朝採りの島の薬味で初鰹 (凡茶)

 その清涼感のあるうちに、冷酒を舌に転がすと、少し汗ばんだ体がシャキッとする。
 この醍醐味は秋の戻り鰹では楽しめない。

 要するに、鰹には旬が二度訪れると考えるのが、最も妥当ではないだろうか。
 鰹は、初夏には初夏にふさわしいすっきりとした身で日本にやってきて、秋には秋にふさわしい脂のたっぷりのった身で、北から南に戻ってくるのだ。

初鰹の刺身
26夏の季語・動物・初鰹の刺身.jpg
        デジカメ写真



季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 初鰹という季語を用いた句には、俳句に興味のない人でも知っている、たいへん有名な作品があります。
 江戸時代に詠まれた次の作品です。

  目には青葉山ほととぎすはつ松魚 (山口素堂)
      はつ松魚=はつがつお。

 初夏の季語が三つも入った珍しい作品ですが、たしかにすごい句です。
 最初に「青葉」で視覚に訴えかけ、次に「ほととぎす」で聴覚に訴えかけ、次に、初鰹の身の鮮やかなルビー色でもう一度視覚に訴えかけた上で、最後に味覚を刺激します。
 
 初夏にこの句を読むと、誰しもが初鰹を味わいたくなります。
 また、実際に初鰹を味わう時は、誰しもがこの句を口に出してしまいます。
 日本人が最も多く口に出した俳句は、おそらく、芭蕉の「古池や〜」か、素堂の「目には青葉〜」のどちらかだと思います。

 この句は、日本人が愛する初鰹を詠んだというより、日本人に初鰹を愛させた傑作と言っても過言ではないでしょう。

 これほどの名句があると、今さら「初鰹」でどんな俳句を作っても見劣りしてしまいそうで、創作意欲がなかなか湧いてこないというのが実情です。
 そこで私は、初鰹を季語に用いる場合は、はめをはずして、思い切り遊んでみることにしています。
 大胆に遊んで、素堂の句とは一味違う鮮烈な一句をこれからも目指していきたいと思ってます。

 まずは、日本よりずっと南で、誰よりも早く初鰹を味わってみました。
 
  椰子酒と南十字と初鰹 (凡茶)
      椰子酒=ヤシ酒。ヤシの樹液から造るお酒。

 なぜでしょうか? 一抹の寂しさのある句になった気がします。

 次は、文語ではなく、しゃべり言葉で一句を作ってみました。
 わたしは、めったにこういう句は作りませんが、遊ぶと決めたらとことん遊んでみたいと思います。

  この俺が職場じゃ龍馬初鰹 (凡茶)



≪おすすめ・俳句の本≫

俳句の宇宙 長谷川櫂著
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■ 俳句は深くて、面白いなあ… 心からそう思えた本でした!


 最も私の心をとらえたのは第四章「間について」
 この章を読み、俳句の「切れ」を「間」と捉え、その「間」をじっくり味わおうとするようになってから、既に目にしていた名句が、それまでとは違って見えてくるようになりました。

 また、第七章「宇宙について」も、面白くてあっという間に読んでしまいました。
 この章で、「造化」というものに関する著者の考え方を読んでから、芭蕉の時代の句に接する際は、その句が生み出される場としての「造化」というものを読み取ってみようと意識するようになりました。
 もちろん、私ごときが読み取ろうと思って読み取れるような浅いものではないのですが…

 とにかくこの本は、
 「自分が足を踏み入れた俳句の世界は、どこまでも深いんだなあ。そして、深みに潜れば潜るほど、新しい面白みに接することができるんだなあ… 」
 そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。



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posted by 凡茶 at 12:58 | Comment(0) | 夏の季語(動物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


蛍(ほたる) (夏の季語:動物)

     ほたる ほうたる 蛍狩り 蛍籠

蛍(ほたる)
26夏の季語・動物・蛍(ほたる)【イラスト】 (2).jpg
        パソコン絵画


季語の意味・季語の解説
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 梅雨の前後、緑色を帯びた光を放って夜闇を彩る虫。

 蛍がなぜ光るのは定かではないが、求愛のためとも、外敵を脅かすためとも、外敵に自分をまずそうに見せるためとも言われる。

 個人的には求愛のためであってほしいと思っている。

 なお、蛍狩りは、蛍を追うことのほかに、蛍の名所を訪れて光をめでることも指す。

 また、蛍籠は、捕えた蛍を入れて光の明滅を楽しむためのもの。


季語随想
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 子供の頃のこと。

 夏祭りの帰り道、道端に人だかりができていた。

 何かと思って近寄ってみると、蛍であった。

 私の育ったのは、製造業の町。
 だから、蛍を見かけることなど、めったにない。

 実際、私もそれが初めて目にした蛍であったように思う。

 図鑑などで知識はあったが、小さな虫が実際に緑がかった光を出しているのを見て、胸が躍った。

 そして、知りたくなった。
 なぜ、こんな小さな虫が、こんな不思議な色の光を灯すことができるのだろう?

 あれから月日が流れ、私もすっかりおじさんになった。

 子供の頃、蛍の光を見たときのように、「知りたい!」という欲求に駆られることが、めっきり減ってしまった。

 いや、正確には、「知りたい!」という欲求の取捨選択を、瞬時にするようになってしまったのかもしれない。

 つまり、収入や名声、社会的地位の向上や、他人の賞賛、そういうものにつながると思える知識ならば、「知りたい!」という欲求をそのまま心の中に残す。

 しかし、そうは思えない知識については、「知りたい!」という欲求が心の中に芽生えても、すぐにその芽を摘んでしまうようになってしまったのだ。

 私は、今からでも、「知りたい!」という心の中の芽を、損得勘定で摘んでしまわないようにしていきたいと思う。

 そうすることが、私にとって、これ以上ないアンチエイジングになるような気がする。


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 次の俳句は江戸時代の俳人、小林一茶が詠んだ俳句です。

 蛍の光から受ける印象を、そのままずばりと詠んだ、見事な一物仕立ての俳句ですね。

  大蛍ゆらりゆらりと通りけり(一茶)

 しかし、このような一物仕立ての俳句は、慣れてこないとなかなか上手に詠めません。

 ですから、私は、蛍を季語に用いる場合は、とりあわせの俳句を詠むことが多いです。

 小さな蛍の光と、その背後にある闇を取り合わせるのです。
 その闇をいかに表現するかが勝負です。

  ダム底に隠田眠る蛍かな(凡茶)

  湯上りの香も加はりし蛍狩(凡茶)



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 以前は、句会・吟行といえば、辞書や歳時記などを持参しなければならず、これが結構重いものでした。

 しかし、今は歳時記入りの電子辞書が登場したおかげで、ずいぶん持ち物が軽くなりました。

 例えば、左の電子辞書には、次の歳時記が納められています。

   
現代俳句歳時記
   ホトトギス俳句季題便覧
   合本俳句歳時記第三版

 俳人にとっては実にありがたいですね!

 また、この電子辞書には、歳時記の他にも、各種の辞典文学作品等、さまざまなコンテンツが収められていて、とにかく飽きません。
 世の中便利になったものです。



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posted by 凡茶 at 02:33 | Comment(0) | 夏の季語(動物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする