秋の季語<動物> 〜目次のページ〜

飛蝗(ばった)
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        デジカメ写真

飛蝗(ばった)は秋の季語。子供のころは、トノサマバッタとかクルマバッタなどの大きな飛蝗を捕まえると嬉しくなり、近所の友達に見せびらかしたりもした。今は、バッタを見ても、それが何バッタなのか、多分わからないだろう。大人になる過程で、捨ててきた知識も多い。


掲載季語(50音順)

<あ行の季語>
赤とんぼ

<か行の季語>
蟷螂(かまきり・とうろう)

<さ行の季語>
秋刀魚(さんま)
鹿

<は行の季語>
ばった
蜩(ひぐらし)

<ま行の季語>
蓑虫(みのむし)




≪おすすめ・俳句の本≫

俳句の入口 〜作句の基本と楽しみ方 藤田湘子著
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■ 俳句はリズムである… 大切なことを教えてくれた一冊です。


 左の本に出会うまでは、伝えたいこと、表現したいことを無理やり五七五の定型に詰め込むような俳句作りをしていました。

 つまり以前の私にとって、定型は約束事だから仕方なしに守る制約にすぎなかったのです。

 しかし、この本を読んで、俳句は韻文であり、大切なのはリズムであることを知ると、定型、切れ字等の大切さが少しずつわかるようになっていきました。

 「意味」から「音」へ!
 私の俳句に対する意識を大きく変えてくれた一冊です。



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posted by 凡茶 at 15:02 | Comment(0) | 秋の季語(動物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


鹿 (秋の季語:動物)

     牡鹿(おじか) 牝鹿(めじか) 鹿の妻 妻恋ふ鹿
     鹿鳴く(鹿啼く) 鹿の声 鹿の音(しかのね) 鹿笛

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        パソコン絵画


季語の意味・季語の解説
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 鹿は日本列島の山中に広く分布する野生の草食動物である。
 優しい性格で人に懐きやすいため、奈良公園、宮島、金華山などでは餌を持つ観光客を慕って群がってくる。

 鹿が秋の季語とされるのは、牡鹿(おじか)が牝鹿(めじか)を恋うてもの悲しい声をあげる交尾の時期が秋だからである。

 なお、交尾の後、妊娠した鹿は孕鹿(はらみじか)と呼ばれ、こちらは春の季語となる。
 また、その後生まれた鹿の子(かのこ・しかのこ)は夏の季語となる。
 秋の季語のつもりで子鹿という語を用いると、季節感のちぐはぐな俳句になるので気をつけたい。


季語随想
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 鹿ほど「かなし」という形容詞がぴったりとはまる動物はいない。

 与えた鹿せんべいを夢中になって食べる姿は「愛し」である。
 何頭かが集まって、気持ちよさそうに日向ぼっこをしている様子も「愛し」である。

 かつて、重要なタンパク源として、狩猟の対象とされてきた境遇は「哀し」である。
 山里では、作物を食い荒らす害獣として駆除せざるを得ない現実も「哀し」である。

 ところで、百人一種に次のような歌が採られている。

  奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋はかなしき (猿丸大夫)

 この歌の「かなしき」は「愛しき」だろうか「哀しき」だろうか?

 また、少し離れたところから、こちらをじっと見つめる黒く澄んだ鹿の瞳は、「愛し」だろうか「哀し」だろうか?

 どちらとも言えるし、どちらとも言えない。
 それが答えであろう。

 なんとも美しい曖昧さではないか。

 経済や政治の世界では、日本語のこの曖昧さがしばしば嫌われる。
 しばし、文学や日常生活の中では、この美しき曖昧さを大切に残していきたい。


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 季語随想の内容と重なりますが、日本語には「かなし(愛し・哀し・悲し)」という言葉があります。

 かわいい、心にしみていとしい、心がいたむ、せつない、かわいそうである、気の毒である等の意味を含む言葉です。
 今風にいえば、「胸がキュンとなる感じ」でしょうか…

 秋の妻恋う鹿の鳴き声は、まさに「かなし」を感じさせ、古くから日本人の心を捉えてきました。
 俳句にも、鹿の声を詠んだものがたくさんあります。

  びいと啼く尻声悲し夜の鹿 (松尾芭蕉)

  明星や尾上に消ゆる鹿の声 (菅沼曲翠)

  庵室のはやく古びて鹿の声 (早野巴人)

  鹿聞いて行燈急にかすかなり (溝口素丸)
      行燈=あんどん。

  温泉の山や肌骨に徹る鹿の声 (佐藤晩得)
      温泉=「ゆ」と読む。 肌骨=きこつ。

  鹿老いて妻なしと啼く夜もあらん (井上士朗)

  鹿啼くや沼の底より泡一つ (凡茶)

 また、温和な性格の鹿は、見る者の心を優しくします。
 鹿を季語に俳句を読むときは、優しさに満ちた作品に仕上げたいものです。

  蜻蛉に片角かして寝鹿かな (小林一茶)

  傘のまま鹿撫でゐたり雨後の寺 (凡茶)



≪おすすめ・俳句の本≫

カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版
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■ 写真・絵の豊富な大歳時記です!


 『カラー版 新日本大歳時記』は、かつて春・夏・秋・冬・新年の全5巻に分けて発売され、大ベストセラーとなった歳時記です。

 “愛蔵版”は、その内容が一冊にまとめられたもので、購入しやすい値段となりました。

 この歳時記は、季語の詳しい解説や古今の名句に加え、写真や絵も豊富に掲載されていて、俳句の勉強になるのはもちろんのこと、鑑賞していて飽きない芸術性の高い一冊でもあります。

 私は、愛蔵版が出る前の全5巻を持っているのですが、この歳時記のおかげで俳人としてスキルアップし、かつ、日本の風土と文化の素晴らしさを再確認することができました。
 この歳時記は、私の俳句生活におけるかけがえのないパートナーであり、大切な財産でもあります。



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posted by 凡茶 at 03:21 | Comment(0) | 秋の季語(動物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


蓑虫(みのむし) (秋の季語:動物)

     鬼の子 鬼の捨子 蓑虫鳴く ミノムシ

蓑虫
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        デジカメ写真


季語の意味・季語の解説
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 ミノガ(蓑蛾)類の幼虫。
 オオミノガ、チャミノガなどの種類がいる。

 食べ余した枯れ葉、小枝、樹皮などをねっとりとした糸で絡め、袋状の巣を作って木の枝や民家の軒先にぶら下がる。
 その巣が蓑(みの)に似ているため、蓑虫(みのむし)の名がついた。

 春、オスは羽化して蛾(ガ)となり、蓑を離れるが、メスは一生を蓑の中で過ごす。

 江戸時代から多くの俳人が用いた秋の季語であり、「蓑虫鳴く」という副題もある。
 ただし、実際の蓑虫は鳴いたりはしない。
 どこからともなく聞こえてきた物悲しい音が、淋しそうに風に揺られる蓑虫の声のように感じられたのであろう。

 あるいは、低木や民家の垣根に暮らす鉦叩(カネタタキ:コオロギ科の昆虫)の声を、蓑虫のものと誤認したという説もある。

 蓑虫には「鬼の子」「鬼の捨子(すてご)」という異名がある。
 清少納言も『枕草子』の中に、「蓑虫いとあはれなり。鬼の生みたりければ、親に似てこれもおそろしき心あらむとて、親のあやしき衣ひき着せて…」などと書いている。

 代表的な蓑虫である「オオミノガ」は植木などを食い荒らすため、長らく害虫として駆除の対象とされてきた。
 しかし、近年は絶滅危惧種に指定される昆虫となっている。

 1990年代の半ばに日本で生息するようになった「オオミノガヤドリバエ」という外来の昆虫に寄生されたことが原因らしい。
 このハエは、もともと中国あたりで蓑虫退治のために大量に使われたものらしいのだが、どのように日本にやってきたかは不明とのこと。

 蓑虫を見かけない秋を想像すると、なんだか気味が悪くなる。


季語随想
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 世の中が冷静さを失った時、私は蓑虫になるようにしている。
 身の丈に合った粗末な家に籠り、ときおり顔を出しては外の様子を窺う蓑虫になる。

 世の中が冷静さを取り戻すまで、決して、狂気の流れに飲み込まれないよう、濁流の上の木の枝にぶら下がる蓑虫になるのだ。

 人間は、国、民族、身分などと、枠にはめて人間を捉え始めたとき、一人一人の人間を思い浮かべる想像力を失う。

 一人一人の人間の笑顔、涙、夢、希望、悲しみに思いを馳せることができなくなってしまう。
 一人一人の人間に、精一杯の愛を注いできた人たちがいることをイメージする、人間ならではの理性と知性を放棄してしまうのだ。

 人間たちが自分たちを枠と枠とに振り分け、己が属さぬ枠を憎悪するおぞましい連鎖に陥ったとき…
 
 決して濁流に落ちて流されることのない、木の枝の蓑虫になるのだ。


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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 蓑虫が実際に鳴くことはありません。
 しかし、昔から俳人は、秋の静けさの中に、蓑虫の声を聞き取ってきました。

 きっと、どの鳴き声も、淋しく、心にしみるものだったに違いありません。

 私たちも、蓑虫の鳴く声を積極的に俳句に詠んでいきましょう。
 江戸時代の句を三つ紹介します。 

  蓑虫の音を聞きに来よ草の庵 (松尾芭蕉)
      庵=いお。粗末な家のこと。

  みのむしはちちと啼く夜を母の夢 (志太野坡)
      啼く=なく。

  みの虫や啼かねばさみし鳴くもまた (酒井抱一)

 また、蓑虫の姿を見ると、深まる秋のかなしさに、胸がしめつけられるような気になります。
 このしみじみとした趣を俳句に表現したいものです。

  みのむしや笠置の寺の麁朶の中 (与謝蕪村)
      笠置の寺=かさぎのてら。京都にある真言宗智山派の寺。  麁朶=そだ。たきぎ等に用いる切り取った木の枝。 

  蓑虫や納屋の灯落つる水たまり (凡茶)

 ところで、蓑虫は葉や枝に替わる適当な大きさのものがあれば、なんでも蓑として着こんでしまいます。
 ですから、昔の子供は、蓑を剥ぎ取った蓑虫を色とりどりの紙くずや糸の中に置き、カラフルな蓑を作らせて遊んだようです。
 何か変わったものを蓑に用いている蓑虫を詠むと、面白い句になるかもしれません。

  蓑虫や恋占ひの紙縒り着て (凡茶)
      紙縒り=こより。

 最後に、蓑虫に愛おしさを感じて詠んだ私の句を一つ紹介します。

  蓑虫や風上で蒸す饅頭屋 (凡茶)



≪おすすめの本≫

にんげんだもの 相田みつを
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■ 厳選された言葉の力に触れ、たちまち目頭が熱くなりました。


 20年以上前になると思いますが、書店でなにげなくこの本を手に取り、最初の数ページを読んでみた時の感動を今も忘れていません。
 たちまち心が震え、目頭が熱くなり、その場で感涙をこぼしそうになったので、あわててレジに向かったことを覚えています。

 この本は俳句の本ではなく、書の本ですが、掲載されている数々の作品は無駄のない厳選された言葉で読み手の心を打つ短詩であり、俳句を創る上で大いに参考になります。
 まだ、読んだことのない俳句作者には、ぜひとも読んでいただきたいと思います。

 近頃のインターネットには憎悪や侮蔑の感情から生み出された言葉が氾濫しており、それが若者たちの心にどのような影響を与えているのか、今後が心配でなりません。
 私は、憎しみや蔑みの言葉ばかりに触れ心の荒んでしまった若者たちに、命のこもった本物の言葉に接してもらいたいという思いからも、相田みつをさんの本を紹介することにしました。

 以下に、『にんげんだもの』以外の本、および、『にんげんだもの』も含んだ相田みつをさんの作品集も紹介しておきます。


一生感動 一生青春

雨の日には…

しあわせはいつも

じぶんの花を

相田みつを作品集







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posted by 凡茶 at 04:54 | Comment(0) | 秋の季語(動物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


赤とんぼ (秋の季語:動物)

     赤蜻蛉 赤トンボ 秋茜(あきあかね)

赤とんぼ
36秋の季語・動物=赤とんぼ.jpg
        パソコン絵画


● 季語の意味・季語の解説

 赤とんぼとは、赤い色をしたトンボの総称である。
 秋茜(アキアカネ)、深山茜(ミヤマアカネ)など、様々な種類がある。

  赤蜻蛉飛ぶや平家のちりぢりに (正岡子規)
      ※ 源平合戦において、源氏は白、平家は赤の旗を掲げた。

 オスの方がより鮮やかな赤色をしており、メスは黄色っぽい。
 蕪村の次の俳句は、赤に染まりきっていないメスの赤とんぼに愛しさを覚えて詠んだ句かもしれない。

  染めあへぬ尾のゆかしさよ赤蜻蛉 (与謝蕪村)

 夕日や紅葉と同じ色をしている赤とんぼは、秋の訪れを切々と感じさせてくれる。
 江戸時代の俳人たちも、赤とんぼを見かけると、胸にせまってくるものがあったようだ。

  盆つれて来たか野道の赤蜻蛉 (沢露川)

  秋の季の赤とんぼうに定まりぬ (加舎白雄)


● 季語の詩

 人間は、みんなと一緒に大きな入れ物に入りたがる。
 みんなと一緒に大きな入れ物に入っていると思えれば安心する。

 人間は、入れ物に収まれないでいる人を見ると侮蔑する。
 入れ物の外にいる人間を蔑んで、自分は入れ物の中にいるのだと確認し、安心する。

 人間は、自分の入っていない、別の入れ物を見ると敵視し、憎悪する。
 その入れ物の中に入っている人の、一人ひとりの顔など思い浮かべはしない。
 とにかく自分たちとは別の入れ物を丸ごと敵視し、憎悪し、自分たちの入れ物を皆で愛した気分になる。

 人間なんてつまらねえ…

 そんなこと考えながらベンチに座っていたら、目の前のコスモスに赤とんぼが止まった。

 静かに俺を見ている赤とんぼ。

 俺は人間には聞かせたくない愚痴を赤とんぼに聞いてもらおうと思った。
 そんな気配を察してか、口を開こうとすると、赤とんぼは音も無く飛び立ち、夕日の方へ去って行ってしまった。

 俺はベンチでしばらく夕日を眺め、心の波が穏やかになったのを確認してから立ちあがった。
 
 家へ向かう道。

 そのうち、また人間が恋しくなるさ…

 そう呟いてふと上を見ると、今度はいっぱいの赤とんぼが、気持ちよさそうに空を泳いでいた。 


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 秋という季節は、木々や野の草が赤く色づいていく季節です。
 ですから、赤とんぼは、夏の青さを、秋らしい赤に変えていくための色素を運んできた、秋の遣いのようにも思えます。

  秋風をあやなす物か赤とんぼ (松岡青蘿)
      あやなす=美しく彩る。

 赤とんぼは、その赤い色とともに、音の無い静かな飛翔によっても秋の訪れを切々と感じさせ、心の中をしみじみとした情感で満たします。

 心の中に生じたその情を直接的な表現は用いず、目に映る景を上手に詠むことで、間接的に表現できたら成功です。

  夕汐や艸葉の末の赤蜻蛉 (小林一茶)
      夕汐=ゆうしお。 艸=くさ(草)。

  生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉 (夏目漱石)

  赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり (正岡子規)

  赤とんぼみな母探すごとくゆく (細谷源二)

  赤とんぼ離れて杭のいろの失せ (上野泰)

  会津なり顔にぶつかる赤とんぼ (藤田湘子)    

  さすりけり赤蜻蛉ゐし農馬の背 (凡茶)

  シーソーの持ち上げてゐる赤とんぼ (凡茶)



≪おすすめ商品≫

歳時記の収録されている電子辞書
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CASIO エクスワード XD-D6500RD



 以前は、句会・吟行といえば、辞書や歳時記などを持参しなければならず、これが結構重いものでした。

 しかし、今は歳時記入りの電子辞書が登場したおかげで、ずいぶん持ち物が軽くなりました。

 例えば、左の電子辞書には、次の歳時記が納められています。

合本俳句歳時記 四訂版
現代俳句歳時記
(春・夏・秋・冬・無季)
ホトトギス俳句季題便覧


 また、次のような収録コンテンツも、きっと俳句の実作、吟行に役立つでしょう。

広辞苑 第六版
全訳古語辞典 第三版
漢語林


 読めない漢字も手書きで検索できますし、俳人にとっては実にありがたいですね!

 この電子辞書には、他にも、百科事典や、日本と世界の文学作品(各1000作品)等、さまざまなコンテンツが収められていて、とにかく飽きません。
 世の中便利になったものです。




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posted by 凡茶 at 05:50 | Comment(0) | 秋の季語(動物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


虫 (秋の季語:動物)

     虫の声 虫の音(むしのね) 虫集く(むしすだく) 虫鳴く
     虫時雨(むししぐれ) 虫の夜 虫の闇 虫の秋 昼の虫

虫の夜
36秋の季語・動物・虫の夜.jpg
                デジカメ写真

● 季語の意味・季語の解説

 俳句において「虫」と言えば、秋に草むらで鳴く虫たちの総称である。

 リリリリと鳴く蟋蟀(こおろぎ)、リーンリ−ンと鳴く鈴虫、チンチロリンと鳴く松虫、チョンギースと鳴く螽蟖(きりぎりす)、スイッチョンと鳴く馬追(うまおい)などは、全て単独で秋の季語であるが、「虫」という季語はこれらの虫を全て含んでいる。

  其中に金鈴をふる虫一つ (高浜虚子)
      其中=そのなか。

 虫の声は、オスたちが求愛のために翅(はね)を摺り合わして鳴らすもので、「虫時雨(むししぐれ)」とは、そうした虫の声が幾種類も重なりあって、とても賑やかになっている様子をさす。
 また、「虫集く(むしすだく)」も同様の意味である。

  虫時雨銀河いよいよ撓んだり (松本たかし)
      撓んだり=たわんだり。

  虫しぐれ吾子亡き家にめざめたり (谷野予志)
      吾子=「あこ」と読む。わが子。  


● 季語随想

 虫たちが心地よい音を奏でている。
 静かな夜だ。

 ところで、世界のほとんどの文化では、虫の出す音に風情や趣を感じたりなどしないという。
 それどころか、虫が鳴いていても、それを虫の出している音だと認識できていないこともあるらしい。

 「虫の出す音」を「虫の声」と捉え、「ああ、秋も深まったなあ」などとしみじみ聞き入る日本人は、稀有な文化の中を生きているようだ。

 政治家やマスコミ、ジャーナリストによって日本の危機が叫ばれ、国民も漠然とした不安を常に抱えているが、真の日本の危機とは、日本人が虫の声を心地よい音ではなく雑音と感じるようになり、さらには騒音と感じるようになる、そんな時なのではないか。

 私たちが、書斎やふとんの中で気持ちよく虫の声を楽しめているうちは、まだまだ日本文化、いや「日本」は、たくましくここに存在している。
 
 ともあれ、今夜はたっぷりと虫時雨を浴びながら、読書とウイスキーでも楽しもうと思う。

  ニュースから離れたき夜や虫と酒 (凡茶)


● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 「虫」を季語に俳句を詠む場合、私は、虫の声の背後にある「閑かさ」を味わい深く表現するように努めます。
 先人の句を鑑賞する時も、その作品に描かれた「閑かさ」を楽しみます。

 次の二句に描かれている閑かさは、ほんのり淋しさを帯びています。

  虫なくや我れと湯を呑む影法師 (前田普羅)

  虫鳴くや離れにて剪る明日の供花 (凡茶)
      離れ=はなれ。母屋から離れている家。 供花=くげ。仏さまや亡くなった人に備える花。

 次の三句は、閑かさが美しく表現されていると思います。

  虫啼くや草葉にかかる繊月夜 (三宅嘯山)
      啼く=なく。 繊月夜=ほそ月夜。

  窓の燈の草にうつるや虫の声 (正岡子規)

  虫鳴き満ち灯影々々にま団欒あり (福田蓼汀)
      団欒=「まどゐ(まどい)」と読む。

 次の二句の閑かさには、畏れのようなものを感じます。

  啼かぬもの浅間ばかりよ虫の秋 (吉川英治)

  水注いで甕の深さや虫時雨 (永井龍男)

 次の三句には、虫の声の中で閑かさを感じている人物の、心の落着きのようなものが表現されています。

  本読めば本の中より虫の声 (富安風生)

  虫時雨寡黙で通す友寝たり (凡茶)

  書きかけの譜面を虫の夜の書架へ (凡茶)
      書架=しょか。本棚のこと。



≪おすすめ歳時記(初心者向け)≫

今はじめる人のための俳句歳時記 新版 
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■ 初心者のことを本当にわかっている歳時記です!


 これから俳句を始めてみようと思っている人、今後俳句を続けるかまだ決めかねているけど、とりあえず始めてみた人などのための歳時記です。

 @まず最初に使いこなせるようになりたい重要季語に的を絞っている、
 A覚えておきたい名句が例句として採用されている、
 B俳句Q&A・句会の方法など、初心者の知りたい情報を巻末にまとめてある、
 Cコンパクトで持ち運びに便利、
 D値段がお手頃


 …等、初心者がはじめに手元に置くには、最適の特徴を備えた歳時記です。

 「私が初学の頃にも、こんな歳時記があったらよかったのに…」と思える一冊です。



≪おすすめ歳時記(初心者&上級者向け)≫

合本俳句歳時記 第四版
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■ 春夏秋冬・新年… コンパクトな一冊に日本の四季が詰まっています!


 合本俳句歳時記は、持ち運びに便利なサイズで、値段も手頃なのに、春夏秋冬・新年、全ての季節の季語が掲載されています。

 大学の俳句会に参加するようになった私が、初めて買った歳時記も合本俳句歳時記でした。

 踏青(春の季語)、薄暑(夏の季語)などそれまで知らなかった言葉や、髪洗ふ(夏の季語)、木の葉髪(冬の季語)など意外な季語と出会うことができ、毎晩、夢中になってページをめくったことを覚えています。

 当時の私が買ったのは第二版でしたが、左の『合本俳句歳時記・第四版』は、季語の解説や掲載されている類語がさらに充実し、初心者にも上級者にもお薦めです。
 これから俳句に誘ってみようと思っているお友達へのプレゼントにも最適です。



≪おすすめ歳時記(上級者向け)≫

カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版
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■ 写真・絵の豊富な大歳時記です!


 『カラー版 新日本大歳時記』は、かつて春・夏・秋・冬・新年の全5巻に分けて発売され、大ベストセラーとなった歳時記です。

 “愛蔵版”は、その内容が一冊にまとめられたもので、購入しやすい値段となりました。

 この歳時記は、季語の詳しい解説や古今の名句に加え、写真や絵も豊富に掲載されていて、俳句の勉強になるのはもちろんのこと、鑑賞していて飽きない芸術性の高い一冊でもあります。

 私は、愛蔵版が出る前の全5巻を持っているのですが、この歳時記のおかげで俳人としてスキルアップし、かつ、日本の風土と文化の素晴らしさを再確認することができました。
 この歳時記は、私の俳句生活におけるかけがえのないパートナーであり、大切な財産でもあります。




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posted by 凡茶 at 03:22 | Comment(0) | 秋の季語(動物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする